エスチュアリ/Estuary〜いしかり砂丘の風資料館だより〜

No.031 2008年4月5日


■展示資料のひみつ リターンズ

ココヤシ
Cocos nucifera
採集地小樽市十線浜、石狩市知津狩浜
採集日2006.11.13、2007.01.03
大きさ16.9cm、14.8cm


名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子(やし)の実ひとつ…。島崎藤村も詠んだように、浜辺の漂着物の代表は、やはりヤシの実でしょう。漂着物学会のトレードマークにもなっています。

「ヤシ」の正式な和名は「ココヤシ」です。世界中の熱帯地方の海岸で見られます。海流散布植物のひとつで、海流によって実や種が遠くに運ばれることによって、分布を拡げていくのです。

日本でのココヤシの漂着は、西日本の太平洋側・日本海側で、ときどき見られます。黒潮や対馬暖流に乗って熱帯から流れてくるのです。北海道ではこれまでほとんど見られなかったのですが、近年、道北の日本海側や、襟裳岬〜十勝の太平洋側など、漂着例が増えてきました。石狩の砂浜でも2006年の秋以降、4つ発見されています。◆

(志賀健司 しがけんじ)


■2008年の講座・展示

おもな対象
種類講座・展示小高中学高校大人日程場所
連続講座石狩大学博物学部××秋(全4回)
石狩市民図書館
体験講座地層をしらべる/フィールド編6月15日(日)厚田区の海岸
体験講座地層をしらべる/ラボ編6月29日(日)砂丘の風資料館
体験講座勾玉づくり
(主催:砂丘の風の会)
7月砂丘の風資料館
体験講座土器づくり(2回連続)7/26(土)→成形
8/9(土)→野焼き
若葉小カルチャーセンター
紅葉山49号遺跡
体験講座化石のレプリカをつくる8月16日(土)砂丘の風資料館
オトナの
体験講座
(内容検討中)××11月砂丘の風資料館
野外講座石狩ビーチコーマーズ/春4月20日(日)石狩浜・砂丘の風資料館
野外講座石狩ビーチコーマーズ/秋10月19日(日)石狩浜・砂丘の風資料館
野外講座石狩ビーチコーマーズ/冬'09年2月下旬(日)石狩浜・砂丘の風資料館
テーマ展石狩の化石と鉱物4月27日(日)〜7月2日(水)砂丘の風資料館
特別展厚田と海の道7月1日(火)〜9月28日(日)厚田資料室
テーマ展(内容検討中)7月下旬〜9月砂丘の風資料館
テーマ展資料館のお宝展12月〜'09年3月砂丘の風資料館
★日程・内容などは変更になることがあります。
 詳細は、期日が近づいたら資料館ホームページ、エスチュアリ、石狩市広報などでお知らせします。

※「おもな対象」について:
  ◎:主対象です。
  ○:対象ですが、解説等がちょっと難しかったり、簡単すぎたりすることがあります。
  ×:原則として対象ではありません。

「小高」:小学校高学年(4〜6年生)
小学生は保護者同伴が必要な講座もあります。


■懐かしい匂いは…

昨年、上映された「ALWAYS三丁目の夕日」という邦画は、昭和30年代の東京・下町で暮らす人々の情と営みが巧みに描かれ、使われている小道具の懐かしさと共に話題を呼んでいました。映画を観た人の中には、あの時代の匂いまで思い出されると話す人もいました。ふとしたことで、匂いの記憶は呼び覚まされるようです。自分の幼い頃から思い出してみても、様々な匂いが出てきます。

資料館の受付に座っていると、「縄文時代〜現代まで。それぞれの時代の匂いに囲まれて」と言いたいところですが、修行が足りないのか感じるには至っておりません。私が資料館を思い浮かべるときは、バス停から資料館まで歩くときの海の匂いと、同じ建物内にある(壁で隔たっている)地ビール工場でビールを仕込んでいるときに漂ってくる匂いを感じているような気がします。

でも、年に3回、事務室から展示室のほうへおいしい匂いがしてくることがあります。春・秋・冬に行われている、浜辺の漂着物を探す野外講座「石狩ビーチコーマーズ」に参加する皆さんのために、ボランティア「いしかり砂丘の風の会」の方たちが厚意で用意してくださる、おしるこや豚汁などの温かい食べ物の匂いです。歩いて冷えた体が癒され、ほっと一息つく時間。参加される皆さんの楽しみにもなっているのではないでしょうか。そして、これが懐かしい思い出の匂いとなってくれたらいいなぁと、私は思います。

皆さんにとっての懐かしい匂いは何ですか。◆

(倉雅子 くらまさこ)


■春の講座・展示

■野外講座「石狩ビーチコーマーズ/春の漂着物」

漂着物は海からの手紙。浜辺の漂着物を観察・採集して、海の世界を覗いてみよう!
春は、雪に埋もれていた冬の間の漂着物がたくさん顔を出しています。石狩川が山から運んできたクルミ、石炭なども見られます。

・日時  2008年4月20日(日)9:00〜13:00
・場所  砂丘の風資料館〜石狩浜(※砂浜を約3km歩きます)
・対象  小学4年生〜大人(小学生は保護者同伴で)
・定員  20人(先着順)
・持ち物 長靴、手袋、帽子等、防寒着、ビニール袋
・費用  無料
・申込  4/5(土)〜4/18(金)の間に電話で資料館(0133-62-3711)へ

■テーマ展「石狩の化石と鉱物」

厚田の海岸で見られる数百万年前の貝化石や、国内外の貝殻など大公開! 市内の化石コレクター、桐澤秀人さんが各地で採集した標本です。

・期間 2007年4月27日(日)〜2008年7月2日(水)
・場所 砂丘の風資料館 市民交流ひろば
※資料館の入館料(大人300円、中学生以下無料)が必要です。

■体験講座「地層をしらべる/フィールド編」

海岸で地層を観察し、貝化石などを探します。

・日時  2008年6月15日(日)
・場所  石狩市厚田区の海岸
・対象  小学4年生〜大人(小学生は保護者同伴で)

※詳しくは5月以降の資料館ホームページ、市広報6月号などでお知らせします。

■体験講座「地層をしらべる/ラボ編」

厚田の地層や化石は何でできているか、室内実験で調べます。
フィールド編と合わせての参加がオススメ!

・日時  2008年6月29日(日)
・場所  いしかり砂丘の風資料館
・対象  小学4年生〜大人

※詳しくは5月以降の資料館ホームページ、市広報6月号などでお知らせします。


■佐々木トメさんの足跡

このほど北生振(おやふる)町内会発行の「産婆佐々木トメ物語」という本がでました。全部で70ページ足らずの小冊子ですが、佐々木トメさんのこと、北生振の開拓の歴史、トメさんがきっかけを作ったらしい安産、子育てを祈る観音講の歴史と参加者の文も加わった冊子です。
佐々木トメさんという人は岩手県の人で、明治の初め札幌市月寒に入植した一家の主婦ですが、岩手の実家の母親が産婆さんをしており、その手伝いをしていて若くして産婆ができた人です。その後、夫が33歳という若さで亡くなったことから、幌内炭鉱開業でにぎわう市来知(いちきしり・現三笠市)などで出稼ぎ(おそらく産婆さんとして)し、苦労を重ねた人です。この人は40歳になったとき正式の産婆さんになるため北海道に願いを出して試験を受けます。彼女の習得した産婆技術は経験に基づくもので、試験は最新のドイツ医学の産科術の試験だったため、一問も答えられずに落ちてしまいます。しかし、それでも彼女は地域的に通用する限定の産婆免許を取って、石狩の北生振で産婆を開業します。明治34(1901)年のことです。
彼女は産婆さんとして多くの母子の命を守りました。その人々がお金を出し合って、明治44(1911)年、顕彰碑を建てています。この碑は今も生北神社境内に残っていて、毎年3月17日前後にこの地区の女性が集まって安産子育て、そしてトメさんの遺徳を偲ぶお祭りをしています。このお祭りはもう百年近い歴史があり、地区の大事な春の行事となっています。「産婆佐々木トメさん」に興味のある方は、実費頒布価格1000円でお分けします。石橋(資料館内)まで連絡下さい。◆

(石橋孝夫 いしばしたかお)


■最近の「いしかり博物誌」(市広報に連載中)

第93回:銀貨と瑠璃、北海道初上陸(08年3月号)
第94回:セピア色の写真(08年5月号)


■編集後記

テーマ展とテーマ展の間の空白期間、展示台がもったいないので「ちっちゃなこれくしょんぎゃらりー」と題し、まさに小さな展示を出してみました。昔の二眼レフカメラやポケットカメラ、ヒグマの胃から出てきた食物などなど。倉さんと、4月から加わった山本さんの作です。4月末ごろまで出してます。ぜひ見に来てください!(「K」あらため「け」)


エスチュアリ No.31
2008年4月5日 発行

いしかり砂丘の風資料館
〒061-3372 北海道石狩市弁天町30-4
TEL/FAX: 0133-62-3711
bunkazaih@city.ishikari.hokkaido.jp