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石狩ファイル0035-01(2005年2月5日)

石狩浜のイソスミレ

いしかりはまのいそすみれ


イソスミレ、別名セナミスミレは、日本海の冷たい風や厳冬に耐えながらも春早々に花をたくさんつけ、目覚めたばかりの昆虫を呼び寄せます。風になびく花びらは、より一層の自然を感じさせ、見る人の心を和ませてくれます。葉は分厚く光沢があり、高さ5〜10cm、多年草、花びらは20〜30mm、距(きょ:花冠やがくの一部が管状に突き出した部分)の長さは3〜5mmでドーム型です。春、わずかな時期に点々とした株ごとに美しい紫色の花を咲かせるイソスミレは、やがて花がしおれて実を結びますが、再び特別な花(閉鎖花)もつくり、また実を結びます。そして周りの昆虫、特にアリたちの助けを受け、子孫を増やしていくのです。

札幌市近郊の植物のうち、スミレ科スミレ属の仲間は18種以上確認されています。特に日本を代表するオオタチツボスミレやミヤマスミレなどは、全国の野山に分布し、早春に多く見られる花ですが、石狩浜で春一番に花を咲かせるイソスミレは、今では希少な植物として注目され、また観察できる場所も限られる大変貴重な植物とされています。

セナミスミレという別名は、新潟県北部の村上市瀬波海岸に多くみられた所から、つけられました。群生地は、現在日本海沿岸に限られています。遠方より、鳥取県東部の砂丘、石川県、新潟県北部、小樽市や石狩市まで確認され、北限は石狩浜となっていますが、最近では、厚田村聚富海岸にも生育しているとの情報があります。また、以前は太平洋岸にも生育していたと言われています。離れた位置にある海岸に生育するイソスミレは、どのようにして群生地を広げてきたのかわかりませんが、それを想像しながら花を見るのも楽しいものです。

石狩浜海浜植物保護センターでは、温室で海浜植物の苗を育て、海浜植物園を設けるとともに生育繁殖に関する研究を行っています。イソスミレも研究対象であり、関係者の粘り強い努力によって繁殖が図られることが期待されます。

(若松 隆)


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