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石狩ファイル0051-01(2005年9月25日)

紅葉山33号遺跡の飾り弓

もみじやまさんじゅうさんごういせきのかざりゆみ


紅葉山33号遺跡は、石狩市花川南6条5丁目の花川南公園内にあります。この遺跡は続縄文時代前半期の墓地で、年代は今から2000年前ごろと推定されています。1982年の発掘では、32基の墓が検出され、多数の副葬品が出土しました。これから述べる飾り弓も副葬品の一つです。

飾り弓とは、弓全体に赤や黒の漆を塗って、美しく飾られた弓のことをいいます。飾り弓が出土した墓は第46号墓で、直径約160cm、深さ75cmの円形をしていました。この墓は、飾り弓のほか土器、石器など200点を越える遺物が出土しました。飾り弓は、墓穴の一番底にあり、遺体の横の台状に砂を掘り残した部分に安置されていました。この種の弓は、実用的な弓でなく、儀礼あるいは権力の象徴など儀礼的な弓といわれています。ですから、台を作って安置したのも、飾り弓の性格が反映していると考えられます。

この飾り弓の製作工程は、白木に木炭粉を塗りその上に赤漆を塗って完成させています。さらにその後、部分的に糸を巻いてその上に2個一対になった紋様をつけています。普通、飾り弓は赤や黒漆を塗るだけで、紋様などさらに装飾を加えたものはごく稀です。しかも11個も紋様があり、弓のほぼ全体の形状がうかがえるものは日本で唯一です。

弓に描かれている紋様は、四角い縁取りの枠の中に渦巻き紋を基調としたものです。渦巻き紋には、1個の渦巻き紋と左右別々に巻く2個組みの渦巻き紋の2種があります。渦巻き紋は、縄文時代晩期(3500年前から2500年前)、東北地方や北海道で発達しますが、この飾り弓の渦巻き紋様は外側にトゲ状の突起がつく珍しいものです。これはアイヌの基本的紋様「アイウシモレウ」(矢をもつ渦巻き紋)に酷似しており、アイヌ紋様の原形ではないかとも考えられています。

(石橋孝夫)


参考文献


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