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石狩ファイル0107-01(2009年9月15日)

石狩浜のきのこ(砂地生菌類)(1)

いしかりはまのきのこ(すなじせいきんるい)(1)


石狩浜のような自然条件が厳しく、また栄養に乏しい海岸砂浜に「きのこ」(以下「菌類」と標記)が発生するとは、一般に、考えにくいと思われます。しかし、海岸砂浜にも森林に生きる菌類と同様に、海浜生植物とともに逞しく生活している菌類の一群(砂地生菌類)がいます。海浜生植物は砂浜の安定化に欠かすことのできない存在ですが、砂地生菌類も、この海浜生植物とともに海岸の自然を保全する重要な役割を果たしています。

石狩浜(石狩市弁天町付近の海岸を指す)は、地形的にほぼ典型的な砂丘構造となっています(図1)。この石狩浜で汀線から第一砂丘までの区域で菌類の分布調査を行ったところ、表1[石狩浜のきのこ(2)]に示したような菌類が分布していることが分かりました。分布する砂地生菌類は、森林生菌類と比較すると、いわゆる「きのこ型」のハラタケ類を中心とした担子(たんし)菌類が圧倒的に多く、チワンタケのような子(し)のう菌類はわずかに1種のみでした。これは、多様な植物が繁茂する森林環境と異なり、海岸砂浜に生育する植物は、海浜生植物のみという自然環境によるものと推測されます。

分布する砂地生菌類の中でも、絶滅危惧種であるアカダマスッポンタケが国内で98年ぶりに再発見され、またその後、日本国内で北限の菌類とされるスナヤマチャワンタケやウネミケシボウズタケ、そして日本新産種としてスナジホウライタケが報告されていることは特筆すべきことです。今後調査を進めていけば、もっと多様な菌類相を見ることができる筈です。しかし、砂地生菌類の分布と生態調査は、全国的にも緒に就いたばかりで、そのライフサイクルや生存戦略については今後の研究を待たなければなりません。

(竹橋誠司)

スナジホウライタケ アカダマスッポンタケ スナヤマチャワンタケ
※別海町本別海岸で撮影


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