いしかり砂丘の風資料館の

展示物を“勝手に”紹介



第10回 横槌(これで「よこづち」と読みます)


この写真は、出土した時のものです
資料館には保存加工されてきれいな姿で皆さんをお待ちしています
今回も学芸員Tさん解説必見です(まがたまちゃん)

長さ(mm)頭の部分の太さ(mm)樹種
440850〜890トネリコ(ヤチダモ)

【勝手なつぶやき】

木編の「槌」ですから、木製品です。たたく道具というと現代人のイメージではたたく頭の部分と柄が直角になった槌、金鎚を思い描きます。しかし、紅葉山49号遺跡で出土した縄文時代の槌は、たたく頭の部分が柄と直線的になった一本の木から作られた「横槌」と呼ばれるタイプのものです。全長44cm。頭の部分の太さ8.5cmから8.9cmでトネリコ(ヤチダモ)の木で作られたものです。このほかに小型の破損品が一例(長20cm)あり、総数は2点です。大型のものは掛矢(かけや)と呼ばれます。49号遺跡の横槌のうち大型の方は、川の中の魚とりの仕掛けに使う杭列を打込むのに使われた可能性があります。また小さな方は、動物や木の皮、あるいは植物などをたたいて繊維を取り出すなどに使用されたのかも知れません。いずれにしても横槌は頭の部分で何かをたたくための道具です。

縄文時代の横槌と考えられる木製品は、道内では紅葉山49号遺跡より新しい縄文時代後期の小樽市忍路土場遺跡で2例ありますが例は多くありません。このほか横槌に似た道具が千歳市キウス4・5遺跡や余市町などで出ていますが、これは頭部が丸木ではなく板状に加工されたものでサケなど魚の皮をたたいて魚皮衣(ぎょひい)を作るためのものと考えられています。

ところで横槌はつい最近まで(昭和)、藁などをたたいて加工するためなどに使われていて割と身近な木の道具でした。また伝説の珍獣ツチノコは、小型の木槌を「槌の子」と呼ぶところから生まれた名前だそうです。ちなみに金鎚のように柄と頭が直角になるタイプの槌は「縦槌(たてづち)」と呼ぶ事もできるでしょう。

(学芸員T 2011年11月)






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