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いしかり博物誌/第27回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第27回 縄文時代の灯りの木

縄文時代初の照明具の写真

 9月上旬、紅葉山49号遺跡で大きな発見がありました。その発見とは、『灯(あか)りの木』の出土です。
『灯りの木』とは変な名前ですが、縄文時代初の出土でまだ正式な名前が決まっておりません。
 実は『灯りの木』とは、かつてアイヌ民族が使用していた生活用具の一つで、アイヌ語では『スネニ』といい、日本語にすると『あかり・木』となるわけです。

スネニの図の画像     スネニを使用している画像

 この道具は、図のように割れ目を入れた細い杭状の木製品で、割れ目に白樺などの樹皮を筒状にしたものを挟んで火をつけ、夜間の灯火に使うものです。
 これまで縄文時代の照明具についてはまったく知られておらず、焚き火が唯一のものと考えられてきましたが、今回、スネニとそっくりな木製品が、舟形容器やサケの捕獲遺構が発見された場所のすぐ近くから見つかりました。

 出土当初、長さ36センチ、太さ3センチで非常に短い杭だな、というのが第一印象でした。通常、杭など木製品が出土すると位置を測量して、次に出土状態の実測・記載、記録写真の撮影を行ってはじめて現場から取りあげとなります。
 恥ずかしいことに、私は一連の記録が済んで上げる寸前まで、何の変哲もない杭と気にもとめていませんでした。言い訳をすると、遺跡では昨年から通算すると杭は400点近く出ていますので、少し注意力散漫になっていたのでしょう。

 手にとってみると、半ばまで割れ目があり、何よりもその内側が使用によって焦げていて、明らかにこの部分に何かをはさみ燃やしており、スネニと同じものとわかりました。縄文時代中期末(4000年前)に、すでにこのような道具が生み出されていたとは、驚きです。

 また、出土した場所やアイヌの人々の使用例からみて、紅葉山49号遺跡では、この照明が夜間のサケ漁に使われていたものと推定され、当時のサケ漁が夜間も行われていたものと考えられます。   (石橋孝夫)