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いしかり博物誌/第28回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第28回 冬の防風林~ドラミングが語る多様な生きものの世界~

コジュワカラの写真

 葉を落とした防風林が雪化粧する季節になりました。よく晴れた日の朝、防風林の中に耳を澄ましてみましょう。小鳥たちがさえずり、枝をつつく音がかすかに聞こえてきます。時にタタタタタターという、強く木をドラミングする音―ドラムを細かくたたくような音―を耳にするでしょう。
 これは、キツツキの仲間アカゲラがなわばりを誇示するためにくちばしで木をたたく音です。アカゲラは、白と黒のまだら模様の翼をもち、下腹部の赤い羽が目立つキツツキの仲間です。オスは、頭にも赤い部分があります。この白、黒、赤の3色の羽は、雪に覆われた防風林ではよく目立つので、みなさんも見かけたことがあるのではないでしょうか。キョッキョッと声を出して枝から枝へ跳ね回り、木をつついて樹皮を剥がしたり、穴をあけたりして、中にいる虫を舌でなめとります。

アカゲラの写真
 さて、アカゲラは春になるとオスとメスはつがいになり、巣を作り、子育てに励みます。巣は、自らのくちばしで木に穴をあけてつくります。この巣穴は、どの木にもあけることができるわけではありません。まず、胸の高さで30cmほどの太さがなければ、幹の中に6羽ほどのヒナが育つの広さの穴をあけることはできません。そして、穴があけやすいのは、立ち枯れている木や、幹の中に菌などが進入して腐っている部分がある木です。これらの木は一見不要のように思われますが、アカゲラにとっては大切な営巣木なのです。アカゲラは、毎年新しい巣をつくります。従って、翌年には別の小鳥―シジュウカラやゴジュウカラなど―自分で穴を掘ることのできない小鳥や時にヘビなどが、アカゲラが掘った穴を巣やねぐらに利用します。
 防風林のアカゲラは、そこにエサとなる昆虫類がたくさんいることを示していると同時に、その他の小鳥たちが暮らしていけることの証で、そこに生きものの多様な森林生態系が広がっていることの象徴なのです。

 日々寒さが続く季節ですが、冬の木立から聞こえる小鳥たちの声に耳を傾け、森の中の命の営みを感じてみませんか?

   (石狩浜海浜植物保護センター/前野華子)