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いしかり博物誌/第31回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第31回 春を待つ木々の花<冬芽の中から探してみよう>

つぼみと冬芽を写した写真

 北国の春の足音がかすかに聞こえ始める季節になりました。木々の枝先に点々と付く「冬芽」をよく見てみましょう。木の種類によって、とがっているもの、丸いもの、黒いもの、赤いものなど形や色はさまざまです。この冬芽を割ってみると、まだ小さいけれどちゃんと葉の形をした「葉っぱの赤ちゃん」を見ることができます。
 さて、この冬芽のすべてに葉っぱの赤ちゃんが入っているわけではありません。同じ木の中にも、少し違った形(丸みを帯びている、ほかのものより大ぶり、など)の冬芽が混じっている木があります。この形の違う冬芽の中には、花のつぼみが入っているのです。
 また、細長い棒のようなものがぶら下がるように付いている木を見ることがあります。これは、つぼみがむきだしの状態になっているもので、シラカバやハンノキなど、カバノキ科の仲間で見られます。
 花と言うと、花びらがあって色鮮やかなものを想像しますが、シラカバなどの花は、逆に地味なものです。花粉を風に運んでもらうため、虫を引きつける華やかさは必要ありません。その代わり、花粉が風に乗って遠くに飛ぶように、木々の葉で邪魔されない、葉が開く前の早春に花開くのだと言われています。
 このように葉より先に花を咲かせるタイプには、他にヤナギ科の仲間があります。一見、つぼみを含む冬芽の形は他と同じですが、春が近くなると、大ぶりになってくるので区別できます。早いものはまだ雪のあるうちから、芽の中から綿毛をのぞかせていることもあります。

 ネコヤナギと呼ばれるヤナギの「ネコ」は、まさにヤナギの花なのです。ヤナギの仲間には、綿毛の表面を花粉で黄色く染め、虫たちに花粉を運んでもらうものもあります。
「春一番に咲くこと」には、冬の眠りから目覚めたばかりの虫たちを独り占めにできる、という大きなメリット(有利さ)があると言われています。木々たちも作戦を練っているようですね。
 皆さんも、身近に早春の木の花を探してみてはいかがでしょうか。   (石狩浜海浜植物保護センター/前野華子)
ナナカマド(バラ科)のイラスト   シラカバ(カバノキ科)のイラスト   バッコヤナギ(ヤナギ科)のイラスト

★イラスト(1から3):北海道樹木図譜(北海道大学図書刊行会)より引用