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いしかり博物誌/第35回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第35回 パイナップル草って知っていますか?

パイナップル草(長田武正1997 原色日本帰化植物図鑑より)の画像

 今年、石狩紅葉山49号遺跡の発掘は、発寒川に近い防風林のそばで行われています。防風林の緑と林床の美しい野草、小鳥のさえずりなどが発掘作業の疲れを癒やしてくれます。今回は発掘現場で教えてもらった野草の話をしてみましょう。

 先日、発掘調査で写真を担当しているMさんからパイナップルの香りがする野草があるという話を聞きました。そんなおいしそうな草があるとは半信半疑でしたが、探すと確かにその野草はありました。しかも発掘事務所のすぐ裏にあったのです。草丈は4から5センチメートルで、花は茎の先にある半球形の帽子のような部分で色は黄緑色をしていました。花の部分に鼻を近づけてみると、彼女のいうとおりフルーツ系のいい香りがしました。

 野草の本を見てゆくと、この草はキク科の一年草で和名は「コシカギク(子鹿菊)」という帰化植物らしいことがわかりました。さらに、帰化植物図鑑をひいてみると、「パイナップルに似た香気がある」と記載されていました。

 また、この野草は「オロシャギク」(ロシアの菊の意味)ともいいます。原産はアジア東北部といわれ、サハリンから北欧諸国に分布するそうです。国内では北海道および東北地方の海岸付近でみられ、サハリン経由で分布が広がったように思われます。ご承知のように帰化植物は本来、日本国内に産しない植物が人を媒介にして根付いたものです。
事務所裏のパイナップル草の写真   
発掘風景(右上の林が防風林)の写真   Mさんの写真
 これがいつごろ北海道に入ったか不明ですが、「オロシャギク」の名から連想すると幕末期に石狩は北蝦夷地(現在のサハリン)場所の経営拠点だったことなどから、あるいはこのころ帰化したのかも知れません。


 開花期間は6月から10月ごろということです。小さいですが注意深く探すと割に良くある植物ですので、皆さんも一度探してみたらいかがでしょうか。すてきな香りとともに石狩の歴史もイメージできるかもしれません。
 ちなみに英語でも、この草をPineapple-Weed(パイナップル草)というそうです。   (石橋孝夫)