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いしかり博物誌/第38回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第38回石狩紅葉山49号遺跡から発見された世界最古の魚たたき棒立方メートル

石狩紅葉山49号遺跡出土の「魚たたき棒」の写真

 今年9月、石狩紅葉山49号遺跡で「魚たたき棒」と推定される長さ51センチメートルの木製品が出土しました。「魚たたき棒」というのは、上げた魚の頭部をたたき、息の根を止めるためのものです。実は、昨年あたりからこの道具が出土するのではと密かな期待がありました。

 というのは、紅葉山の川から出土した魚をとる仕掛け「エリ」がアイヌ民族の伝統的サケ・マス漁の仕掛けとあまりに良く似ていて、またスネニのようにアイヌ文化と共通する道具が見られたからです。
 「魚たたき棒」という棒もアイヌ文化にみられ、使い方はサケ・マスを獲った際にその頭をたたく「イサパキクニ」と呼ばれるものです。この棒はたんにサケ・マスを殺すという目的だけでなく、サケ・マスの霊を彼らの世界に送り、再びこの世に再生し豊漁をもたらすことを願う儀礼的な意味をもっているものです。この棒はアイヌ民族だけでなく、同様にサケ・マスを利用するシベリアや北米の諸民族にもあります。
江戸時代に記録されたアイヌ民族の「魚たたき棒」の画像

 先史時代では、江別市の江別太遺跡(えべつぶといせき)で出土した約2000年前の「魚たたき棒」がこれまで最も古いものと考えられていました。しかし、紅葉山ではこれを一気に2000年もさかのぼらせることになりました。おそらく、世界的にみても「魚たたき棒」の最古の例ではないかと思われます。

 サケ・マスは、北国の人々にとっては、ごく最近まで越冬用の食料として乾燥や薫製で保存する大切なものでした。アイヌ民族はサケのことを「シイペ・真の食べ物」と呼んで大切にしています。

 今回の「魚たたき棒」の発見は、縄文時代の人々がサケ・マスの重要性を認識していただけでなく、再生や豊漁を願うといった信仰をすでにもっていた可能性も示しています。   (石橋孝夫)
2002年9月に見つかった新しいエリの一部の写真