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いしかり博物誌/第42回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第42回石狩紅葉山49号遺跡を世界遺産に! ~初めてわかった縄文の技術「柵」~

新年早々、「北の縄文回廊づくり構想」のなかで、青森県三内丸山遺跡などとともに「石狩紅葉山49号遺跡も世界遺産にしたらどうか!」というニュースが飛び込んできました。
世界遺産は人類共通の財産として自然、文化を保全する制度ですから、実現すれば文字どおり世界の宝となります。ちなみに49号遺跡は、サケ・マスを主とする漁労遺跡として世界最古級と考えられます。
今回は、昨年出土した「柵」についてお話してみましょう。

49号遺跡で発見されたもう木製品(棚)の写真

49号遺跡では、見たことのない木製品が次々と出土して考古学者を驚かせていますが、「柵」もその一つで縄文時代で初めて発見されたものです。
この木製品は直径2センチ前後で長さ1メートルから3メートルのヤチダモの若木を割ったものを10本から50本縦に並べ、これにブドウツルとヤチダモの割木で交互に固定したものです。石斧(せきふ)やクサビで割ったのでしょうが、これだけ長い木をよくきれいに割ったものだと感心させられます。
縦木と横木は正確に直角になるように組まれています。固定にはブドウツルの表皮が使われており、またそれと別にブドウツルも使って縦木を編んで固定されています。ブドウツルは、すべて柔軟な若いツルを使っています。ツルは秋に採取されたものとみられます。
柵の大きさは、高さ約1メートルから3メートルで幅約0.9メートルから1.5メートル、長方形になっています。また縦木と縦木の間隔は3センチから10センチと、ばらつきがあります。そして縦木の根元が斜めにカットし尖らせてあります。
また横木は少し突き出ていて、その両端を同じように尖らせています。この加工は、川底への固定と柵の連結のための工夫と考えられます。このように、柵を分析するとこれまで知られていない縄文人の技術がみえてきます。
棚の結び目の部分の写真


柵は破損したものを含めると33枚も出土し、大量に使用されていたことが分かります。当初は、使用法が不明でしたが、杭と組合せで出土したことから、エリ(漁労施設)の部品でサケ・マスの遡上を止めるものであることが確認されました。4000年前の晩秋、遺跡ではCG(図)で示すような光景が見られたはずです。
(石橋孝夫 いしばしたかお)

棚のある風景(CG製作 鈴木信司)