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いしかり博物誌/第53回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第53回黒く輝く石 ~黒曜石~

黒曜石は、旧石器時代や縄文時代の石器の代表的な石材です。この石材は地下のマグマが急激に冷えてできたものでガラス質です。たたいて割ると縁がカミソリのように鋭く、よく切れます。黒曜石とは「黒く輝く石」の意味で「黒耀石」とも書きます。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」には、黒曜石でできた地図がでてきますが、「夜のようにまっ黒な」と形容されています。賢治がどこで黒曜石を見たのかわかりませんが、全国では180ヶ所近くの原産地があり、東北でも15ヶ所、岩手県にも3ヶ所あります。

黒曜石は黒ばかりとは限りません。黒のほか赤や茶色などがあります。このほか黒曜石によく似た石があります。これはピッチ・ストーンという石で、脂のようなぬめり感のある光沢があり、白や緑色のものがあります。この石の原産地は不明ですが、石狩紅葉山49号遺跡でも出土しています。

黒曜石は火山のある場所でできます。北海道には10ヶ所近くの黒曜石の原産地が知られていますが、網走管内白滝村などでは赤や茶色の黒曜石があります。北海道では黒曜石のことを「十勝石(とかちいし)」と呼びますが、赤や茶色の黒曜石は「花十勝(ルビはなとかち)」あるいは「紅十勝(べにとかち)」と呼ぶことがあります。この色つきの黒曜石は、今のところ白滝村や置戸町の原産地の特産だといわれています。だから遺跡で赤や茶色の黒曜石があれば、これらの原産地から石が運ばれてきた証明になります。石狩市内の遺跡でも「花十勝」が出てきますから、市内の黒曜石の一部は実に160キロメートル以上、離れた場所から来たことになります。また石狩市内での遺跡の黒曜石の大半は、これより近い後志管内赤井川村のからきています。赤井川村は古い火山の火口で、黒曜石があるのです。ここの石は、色は黒ですが灰色がかった細かな気泡が縞状に入る特徴からわかります。

正確に原産地を知るには、黒曜石に含まれる微量元素を測定して特定する方法があります。この分析により、全国の黒曜石の流通経路がわかり始めています。例えば北海道の黒曜石が津軽海峡を越えて三内丸山遺跡に運ばれていたことが明らかになりました。求めに応じて人から人、村から村へ運ばれ、ついに海を越えていったのでしょう。

黒い黒曜石と藤色の黒曜石(石狩市内)の写真
↑黒い黒曜石と藤色の黒曜石(石狩市内)
ピッチストーン(石狩紅葉山49号遺跡)の写真
↑ピッチストーン(石狩紅葉山49号遺跡)

花十勝(石狩紅葉山49号遺跡)の写真
↑花十勝(石狩紅葉山49号遺跡)
紅十勝(白滝村)の写真
↑紅十勝(白滝村)

(石橋孝夫 広報いしかり2004年3月号掲載)