いしかり博物誌/第67回
印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新
第67回 石狩の海の色
石狩浜から海を見たとき、海水の色が2色に分かれているのに気付いたことはありませんか? 手前の海水は青いのに、沖のほうはなんだか灰色っぽい――晴れた、風が穏やかな日は、そんな現象がはっきりと見られます。かと思えば、はるか沖まで青い水が広がったり、浜辺まで一面、濁ったような灰色になってしまうこともあります。いったい何が起きているのでしょうか。石狩浜から見た海(平成17(2005)年5月22日)。
手前が青色、沖は灰色をしています。
その原因を究明するため、石狩浜で海の観測を開始しました。まだ2ケ月ですが、早くもちょっと変わった結果が出てきました。塩分濃度、つまり海水の塩辛さが、うすまったり濃くなったり、を繰り返していることがわかったのです。
ふつう海水の塩分濃度はどこでも3.5%くらいです。しかし、石狩浜では急にうすくなって、1日で0.5%まで下がってしまったり、また元に戻ったり、ということが何度もあったのです。その原因は? 海の色の変化と、何か関係が?
答えは、ほかの観測データの中に隠れていました。塩分の変化と、風の変化とを、重ねて見てみましょう(※グラフ)。なんと、よく似ています! 海からの風が強いときに、浜辺での塩分がうすくなる――こんな関係です。海水の塩分がうすくなる、ということは、どこかから真水が混ざり込んでいる、ということ。「どこか」とは、石狩浜の場合、明らかです。すぐ近くに河口のある石狩川です。
2005年春の浜辺での塩分と風の変化。海からの風が強いときに塩分が薄くなっています。
石狩川の土砂で濁った真水が、石狩湾に流れ込む → 沖の海水が灰色に濁り、塩分もうすくなる → 海からの強い風が吹くとその水が浜辺に吹き寄せられる――。海水の色、塩分濃度、風の3つから、こんな川と海と空のつながりが見えてきました。
実は、この観測で使っているのは、普通の温度計と料理用の塩分計、それにポリボトルだけ。根気さえあれば誰でもできます。見なれた自然もきちんと観測し続け、記録を残していけば、地球のしくみを理解して将来を予測するための大切な基礎データとなっていくのです。
(志賀健司 広報いしかり2005年7月号掲載)
宇宙から見ると、たくさんの土砂が石狩川から海に流れ込んでいることがよくわかります。
(NASAホームページより)