特別公開 紅葉山33号遺跡出土の飾り弓 


紅葉山33号遺跡出土の飾り弓

この弓は、1982年発掘中の紅葉山33号遺跡の第46号墓から出土しました。

弓の木質部は、腐食してなくなっていますが、木質部外面にかけられた赤漆が残り、元の形が推定できます。 北海道内の弓は、ハイイヌガヤやイチイなどを使って作られますが、実用的な弓には漆をかけません。漆をかけた弓は、実用品でなく飾り弓と呼ばれる弓で狩ではなく、儀式や持ち主の権威を表す特別な弓です。

この弓の特徴は、11ケ所に文様がつけられていることです。文様は裏面にもあり、対称形となっています。文様は棘のある渦巻き紋を基本としたもので、アイヌ文化のアイウシ・モレウという渦巻き紋に酷似していて、アイヌ文様の発生当初の形の可能性があります。

文様は向かって右から黒漆で描かれ、右から6個目の文様が黒漆と茶漆(生漆か?)の2色で描かれ、7個目からは茶色一色で描かれています。樹脂でかためたものは出土した面を上にしており、複製品は裏面の文様を見せています。飾り弓で文様のある弓は、本州でもありますが、部分的にしか残っておらず、ほぼ全体の文様が残っているものは日本国内でこの弓だけで、大変貴重な資料です。

これまで保存処理を自前で行っていたため、完成まで長期間を要しました。

(石橋孝夫)




■飾り弓のデータ

現物
  • 長さ約1.1メートル 幅4センチ(アクリルケースに樹脂封入、両面観察可能)
  • アクリルケースの大きさ 122×21×4センチ
  • 弓のとりあげ、保存処理技術開発、保存処理: 清水雅男(札幌市)
復元弓
  • 長さ1.3メートル 直径2センチ
  • ヒノキに本漆がけ
  • 製作: (株)吉田生物研究所(京都市)
■公開場所
  • いしかり砂丘の風資料館1階
      入館料200円 中学生以下無料
      北海道石狩市弁天町30-4
      TEL/FAX:0133-62-3711
      e-mail:i-museum@bz01.plala.or.jp
■公開期間
  • 平成17年8月1日から8月31日まで




第46号墓

紅葉山33号遺跡では、1982年の調査で32基の墓が出土しています。

お墓は、今から2000年前ごろの続縄文時代恵山文化のものです。この時期、本州では弥生文化がはじまっていました。恵山文化は道南部から石狩低地帯までの分布圏で、米つくりはなかったものの、鉄器、管玉などの弥生文化の道具を取り入れていました。

第46号墓は、墓上面で164cm×154cm、深さ75cmの大きさがあり、恵山文化特有の「魚形石器(ぎょけいせっき)」をはじめ、飾り弓、土器、ヤジリ、石斧、剥片など212点の副葬品が出土しました。今回展示したのは、飾り弓、彩色された土器、砥石、魚形石器、管玉、石ナイフ、石ヤジリ、石斧、飾り弓複製品です。このうち管玉は第26号墓出土のものですが、これは本州の弥生文化に特徴的な装飾品で、本州からの輸入品と考えられるものです。

なお、魚形石器はオヒョウなど大型の魚を一本釣りする際の錘だと考えられています。

この魚形石器は、出土例の北限と考えられます。


■参考文献 紅葉山33号遺跡 石狩町教育委員会(1984)

(石橋孝夫)