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いしかり博物誌/第59回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第59回見捨てられた川

三日月形の沼。もとは発寒川の一部でした。
石狩市の南部を東西に流れている発寒川(はっさむがわ)は、札幌市との境界になっています。しかし地図をよく見ると、境界線はぐにゃぐにゃと曲がりくねって、川の流れとぴったり一致していません。なぜでしょうか。
三日月形の沼。
三日月形の沼。もとは発寒川の一部でした。

実はこれは、昔の発寒川の流れを示しているのです。もともと発寒川は、平地を流れる川本来の性質で、ぐにゃぐにゃ蛇行していました。しかし洪水対策のための河川改修工事が行なわれ、まっすぐな流れに変わってしまったのです。地図の境界線は、蛇行していた時代に発寒川に沿って決められたものだったのです。今では昔の面影はまったくない発寒川ですが、改修以前はどんな姿だったのでしょうか。それを見せてくれる場所が、市内にありました。

緑苑台(りょくえんだい)地区で川沿いに歩いていくと、石狩市側に木が生い茂っている一帯があります。近づいてみると、その木々に囲まれて沼があるのがわかります。よく見ると沼は川のように細長く三日月のような形で、両端は発寒川とぶつかるあたりで終わっています。この沼こそ、かつて発寒川の一部だったところなのです。河川改修で本流から切り離されてできた沼で、いわば「見捨てられた川」です。しかしそのおかげで、かつての自然環境が今でも残されています。

イバラトミヨを発見!
イバラトミヨを発見!

そこにはどんな動植物が見られるのか、平成16(2004)年の春、石狩自然誌研究会のみなさんと、簡単な調査をしてみました。まず、沼のまわりを縁どるように、ヤナギやヤチダモなどが見られます。これらはいずれも湿地や水辺に生える木で、川沿いの林「河畔林(かはんりん)」だったことがわかります。また、岸からタモ網を使って水生生物をさぐってみたところ、イバラトミヨを発見しました。体長5センチくらいの魚で、発寒川本流でも棲息が確認されています。このほか、季節によってはカモのような水鳥もやってくるようです。続けて調査してみれば、いろいろな発見がありそうです。

石狩市と札幌市の境界線は、川と一致していません。
石狩市と札幌市の境界線は、川と一致していません。

市内にはこのような小さな水辺はまだたくさんあります。いずれも、昔の姿を残していたり、いろいろな動植物の棲息場所となっている、貴重な自然環境です。 (志賀健司 広報いしかり2004年10月号掲載)

※水辺は足場が悪く、周辺には深い排水溝がたくさんあります。危険ですので、一般の方は近寄らないでください。