市長所信表明(平成23年6月13日)
印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新
市長所信表明
平成23年6月13日(月曜日)平成23年第2回石狩市議会定例会
平成23年第2回石狩市議会定例会の開会に当たり、4期目の市政運営に関する所信の一端を申し述べさせていただきます。
はじめに
平成23年第2回石狩市議会定例会の開会に当たり、4期目の市政運営に関する所信の一端を申し述べさせていただきます。
人知を超える未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から早くも3ヶ月が過ぎました。
しかし、未だ福島原子力発電所の事故は、終息の目処すら立っておらず、瓦礫が散乱し、行方不明者も8千人以上に及ぶ悲惨な状況下にあります。
被災者の方々はもとより、日本全体に及ぼす不安感・不透明感は次第に増幅の傾向にあります。改めてここに震災によりお亡くなりになられた方々への鎮魂と、ご遺族の皆様に対し、謹んで哀悼の意を捧げます。また、被災された皆様及び関係各位に対し、心よりお見舞いを申し上げます。
本市においても、議会、市民、団体、企業等多くの皆さんのご支援ご協力をいただきながら、被災地への対応を行なうことができました。また、避難して来られた数十名の被災者の方々に対しても、生活等の支援を始め、今後、孤立化対策にも取り組んで参らねばならないと考えており、一日も早く平穏な生活を取り戻されることを願わずにはいられません。改めてご支援いただいた市議会を始め、市民、団体、企業の皆さんに感謝を申し上げます。
私達は今、歴史的岐路に立ち至ったことを現実問題として受け止めねばなりません。国政の混乱もしかり、経済のグローバル化は市民生活に著しく影響を及ぼし、情報は瞬時に世界をかけめぐる時代の到来であります。
さらに、本市における少子高齢化の進展が顕在化するとともに、先の国勢調査速報値からも、人口減少の加速化を否定できない状況となっております。
このように社会、経済基盤が変化する中、基礎自治体の役割も大きく体質改善を求められ、従前の手法、価値感を創造的にシフト、変質させ、自主性、自立性を高めていかなければならず、広範な取り組みを講じることが必要であることは、改めて申し上げるまでもないと認識しております。
本市における喫緊の課題としては、地域経済の回復があげられます。自粛意識や日本人の国民性も重なり、消費の低迷、風評被害等は消費や行動パターンを停滞させ、商店街への影響は深刻なものとなっております。さらに、サプライチェーンの混乱により物流・建設業等、本市経済にも著しい影響を及ぼしております。
これら諸情勢に対応するため、国、道の施策はもとより、独自の緊急対策を講ずるとともに、石狩湾新港地域での戦略的企業誘致を推し進め、その効果を市内全域に及ぼす施策を積極的に講じて参りたいと存じます。
特に製造業は、安い労働力を求め、円高リスク回避のため生産拠点を海外に移し始めており、サプライチェーンの脆さも浮き彫りになるなど、産業の空洞化はより一層助長される事態となっております。このような状況下、本道産業牽引の一翼を担う本市が元気でなければなりません。
次にお示しする施策大綱を柱に、市民が安全で安心して生活できる自立したまちづくりを目指して参ります。
施策の大綱(7つの戦略目標)
それでは、市民の皆さんにお約束をさせていただいた、主要施策としての7つのテーマに基づき、所信を申し上げます。
第1は「協働社会への新しいステージづくり」についてであります。
本市がこれまで推し進めてきた協働社会は、市民一人ひとりが、それぞれの能力を活かし、自らが考え、行動し、自らのまちは自らで創り上げるという意識の醸成と、気概が尊重される地域社会を形成していくことであり、「自治基本条例」に基づき取り組みを進めてきましたが、明らかに市民力、地域力の高まりは顕著となり、より具体性を増しております。
この取り組みを確固たるものにするため、さらに連携することが大切であると考えております。最近、これらの活動は、極めて重要な要素として認識され、新しい協働社会のステージへ向けた、重層な取り組みが始まっております。
「協働事業提案制度」、「異業種交流」、「地区連携」をさらに熟成させるための支援を進めて参りたいと存じます。
自治基本条例の趣旨にのっとり、市民力を集結し、市民力の輝きを集め、地域らしさや魅力ある地域の創造のために人を育て、繋がりを持ち、環境を創ることにより、協働社会の次なる可能性へと高めて参りたいと考えております。
第2は「健全な財政にむけた再チャレンジ」であります。
財政再建計画は、この4年間で一定の成果を見ることができましたが、今後においては、国家財政や税と社会保障等の国家の根幹となる議論が進められることとなっており、これらの不透明性から、歳入環境を厳しく見つめる必要があると考えております。その一方、本市の公共施設の老朽化に伴う修繕や長寿命化対策、社会保障費の増嵩、土地開発公社、当別ダムの供用開始や水需要構造の変化による水道事業経営等、一刻の猶予もない課題が山積しております。
今、これらの事柄に対し、痛みを嫌って先送りすることはできません。
また、今回の震災を尊い教訓として、防災対策に対応するために、只今準備を進めている総合計画の見直しや、財源配分の軌道修正も行わなければなりません。これら様々な要素を点検し、ミックスバランスを図りながら財政再建の流れを確実なものとすることが、私に与えられた使命と責務であると、意を新たにしているところであります。
財政再建計画に引き続く財政運営のフレームを作成し、実施して参りたいと存じます。議会、市民の皆様の特段のご理解を願いたいと存じます。
第3は「子育てと教育環境の充実について」であります。
子育ては、社会の強さ、地域の発展、高齢者福祉の安定的持続にとっても、極めて大切なことであり、若い方々が、石狩で仕事をし、石狩で子育てをしたいと思う環境づくりを、なお一層目指して参ります。
これまで、広範な施策の展開にあたり、市民・NPO等の協力を受けながら、取り進めて参りましたが、社会の需要は目まぐるしいほど、新しいものを求めております。おそらくライフスタイルや価値観の変化に起因するものだと考えておりますが、例えば新たに取り組む「イクメンプロジェクト」に象徴されるように、時代の求めを敏感に感じながら、社会性を加味した先駆的な施策でありたいと考えております。
教育はまさに未来への投資であるとともに、子どもたちが将来において社会性を有し、尊厳を持った生き方へと導くための糧であらねばならないと考えており、キャリアにつながる教育の必要性を痛感しております。そのために、ALTの生きた英語教育により語学力の向上を図るとともに、ICT活用によるグローバル化社会に対応できる人材育成に取り組みます。
このことは、将来に責任を持つ立場にある私たちに課せられた責務と考えており、子どもたちに生き抜く力を蓄えてあげねばならないと考えております。
さらに、発達障がいなど支援が必要な子どもたちの自立教育は、支援センターの開設や養護学校の立地等、新たな環境を整備して参りましたが、まだまだ課題山積であります。
現場からの声、親たちの求めに対し、応えていかねばならないと強く感じております。
第4は「石狩湾新港の新しい地域価値の創造をめざして」であります。
石狩湾新港地域は、開発計画を立て、インフラ整備や企業誘致を進めてはや30年余りを費やして今日に至っております。
現在、操業企業数609社、従業員数約13,000人、工業出荷卸売販売額と商品販売額の合計は、約2,800億円と、道内有数の工業流通基地が形成されました。
石狩湾新港も計画の縮小はあったものの、取扱貨物量328万トン、貿易額656億円に達し、道内に指定された重点港湾三港の一つとなるなど、今後も飛躍的発展が期待されるまでになりました。
私は、計画当初より、当プロジェクトに係わった者として、あるいは最初を知る最後の現役として、現状に甘んじることなく、次の時代に継承すべき発展資源の誘導を、より一層進めて参りたいと考えております。
中でも、対ロシア経済交流については、サハリンプロジェクトで培ったノウハウや先人が築いた姉妹都市との交流を糧に、日本の資源基地としての役割を担うべく、新たなテーマとして取り組んで参ります。
また、北海道電力がこの度計画を発表した、LNG火力発電所の誘致にも取り組んで参ります。エネルギー、情報、環境、物流、資源等、発展要素を無限に含む石狩湾新港は、市の発展、市民の雇用や福祉等の生活基盤を守るためにも、何としても活性化、発展させねばならないと考えております。
市財政への寄与度を高めるとともに、地域価値をより高め、ひいては企業の資産価値をも高めて参りたいと存じます。
第5は「市民の笑顔があふれる健康なまち、そして災害に強い安心・安全なまちづくり」であります。
健康への思考は高まりつつあるも、残念ながら必ずしも行動として表れておりません。「健康づくり計画」に基づき、生活習慣病等の各種予防対策の取り組みを積極的に進めるとともに、今や国民の2人に1人の罹患率となっている「がん」に対し、私たちはあまりにも楽観的ではないでしょうか。
死亡者数の1位から3位を占めている、肺がん、胃がん、大腸がんの本市における検診受診率は、13%にも満たないという受診率の低さが象徴的に表しております。この事態を漫然と見過ごす訳にはいきません。健康推進に向けた広範な市民活動の組織づくりについて協議を始めて参ります。
早期発見対策の基本とも言える検査の充実と、検査の受診率向上を、市の重点的取り組みとして、市民と協働して展開して参ります。
また、ICTの導入を図り、高齢者の医療・生活をより安心できる環境づくりを目指します。
また、芽生え始めた市民皆スポーツの取り込みを、さらに、財団法人石狩市体育協会やスポーツ団体等の市民力と連携して、日常化を図り、より一層広範なものとするなど、市民が健やかで心豊かに生活できる環境づくりを目指して参ります。
また、防災対策につきましては、地域防災計画の抜本的な見直しを実施します。この策定にあたり、中央防災会議やハザードマップに係る北海道との連携を踏まえながら、早急に見直し作業に入ることとし、そのために既に新しい課体制を総務部に設置しております。
さらに新たな取り組みとして、この度の津波被害から得られた知見を参考に、地区の特性に配慮した地区ごとの防災計画の策定を優先し、どこに住んでいても市民の皆様にわかりやすく、きめ細かな防災対策を推し進めて参ります。
同時に、先駆的に取り組んで参りました地域の防災活動を担う、自主防災組織の連携をさらに強化し、助け合う中で、安心、安全な市民生活の確保に努めます。
第6は「農林水産業の活性化と6次産業化への挑戦」であります。
恵まれた自然に囲まれた本市は、新鮮で安全な農水産品の宝庫であり、石狩ならではの「食」に力を注ぎたいと考えています。
これまで都市近郊型農業への転換を進めてきましたが、農業総合支援センターとも連携して、消費者に「いしかり産」を強くアピールできるような、新たな特産品の開発を図って参ります。
新港地域が有する流通加工と、地元食材を活かした新商品の開発や、加工、販売方法を開拓し、第1次産業と第2次、3次産業が連携することで、地域の活性化と同時に経済の伸展を図って参ります。
本市においては、既に事業者同士の意見交換や情報交換が進められており、この取り組みを進展させ、全道で取り組んでいる食クラスターの観点もあわせ、石狩ブランドの確立に挑戦していきたいと考えています。
第7は「個性を生かした厚田・浜益の地域づくり」であります。
地域に住む方々の満足度を高め、地域特性を作り上げるためには、市民自らの手で地域らしさ、魅力ある地域の創造に取り組んでいくことの大切さを、多くの地区住民の方々にご理解願っているものと考えております。そのための地域協議会の役割は、極めて大切なものであり、既に地域振興に向けた課題を抽出し、その対策への議論や具体的行動が始まっておりますので、市としてもこれらの取り組みを積極的に支援して参ります。特に、第1次産業従事者の住環境の整備に取り組みます。
また、複合産業であります観光は、自然環境や人々の営みにより成り立っており、既に、地元はもとより、民間、NPOの皆さんのご協力をいただくなど、グリーンツーリズムや体験観光などの展開が始まっております。この流れをより一層確かなものとし、地区の振興を進める基軸として推し進めて参ります。
むすびに
以上、政策の大綱を申し上げさせていただきました。私たちの石狩市は質的変化に柔軟に対応しながら、子どもたちを愛しみ、安心安全な生活を営むことができ、かつ未来へ向けた発展力なる産財を有する誇りを持った都市であります。
新たな挑戦の始まりをともに手を携え、強い決意を持って市政を担う所存でございます。「石狩の遙かなる発展」をつかむために、議員各位を始め市民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げまして所信表明といたします。