平成21年度市政執行方針
印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新
平成21年度市政執行方針
平成21年2月26日(木曜日)平成21年第1回石狩市議会定例会
平成21年第1回石狩市議会定例会に当たり、新年度の市政に臨む基本方針を申し上げます。
(はじめに)
米国に端を発する金融不安は世界規模の経済危機へと拡大し、平成21年経済成長率は戦後最低になるものと予測される中で、我が国の企業動向、雇用情勢も日を追うごとに悪化の様相を深めております。
本市においても、先に実施した緊急調査の結果、事業所の業績は総じて悪化、今後はさらに厳しさを増すとの予想が大勢を占めており、こうした企業心理の冷え込みが、この先地域社会に広範な影響を及ぼすことが危惧されるところであります。
このような景気、雇用の先行き不安が社会全体を覆っている、いわば非常事態にある時代(とき)こそ、地域の行政を自主的・総合的に展開し、住民福祉の向上を図る地方自治体の役割が一層重要になると、私は考えます。もとより、現下の世界的な経済危機に一自治体のみで立ち向かうことはできません。しかし、住民や事業者に最も近い政府である地方自治体が、セーフティネットを的確に運用し、不安を抱く市民や事業者が明日への勇気を奮い立たすための支援をするなど、地域の実情を的確に捉え、「地域でできることに全力で取り組むことなしに、我が国をあまねく覆っている社会不安を解消する道はない」と考えるところであります。
こうしたことから本市においては、昨年秋以降3度にわたる補正予算を措置し、市民の暮らしの安心や地域活性化を図るための福祉・雇用対策、公共事業の前倒しを実施するなど、スピード感を持った対応に努めて参りました。
新年度においても、当初予算を積極型とする中で、「市民の安全・安心」と「地域経済の活力」を柱とした施策を、切れ目なく迅速に実施するなど、この難局に立ち向かって参ります。
もう一つ、地方自治体が取り組むべき今日の喫緊の課題は、地域の自立的発展と持続可能なまちづくりへの新たな道筋をつけることであります。
昨年末、我が国の約30年後の市町村別人口推計が公表されました。本市の人口は、平成17年をピークとして平成47年には5万人をわずかに上回るまでに減少すると予想されております。住民登録人口も平成20年は前年を下回って推移しており、ついに本市でも現実の人口減少が始まった可能性が高いと考えざるを得ません。
長い間「人口」が地域の発展を測る指標とされてきたことを考えれば、今後も人口増加を図るための努力はもちろん必要であります。
しかし、それ以上に重要なことは、人口減少下においても持続可能な自治体経営の方策を講ずると同時に、「人口」以外の要素に都市発展のバロメーターを見出し、それを大きく伸ばす取組みを展開することであります。
昨年、石狩湾新港地域へのLNG基地立地が、構想から十数年、さまざまな紆余曲折を経てようやく現実のものとなりました。民間シンクタンクによると、基地建設の期間中における総生産額効果は約890億円、雇用創出効果は7,000人を超えるとの分析がされております。基地が稼働する3年後には、新港が北海道全域へのクリーンエネルギー供給拠点として不動の地位を確立し、新たな住宅環境の創出、企業立地や雇用創出の機会を生み出すことが期待されます。このようにして、これまで北海道にはなかった新しい価値が、本市で創造されるようになることこそが、このプロジェクトの真のインパクトであります。
これは一例でありますが、こうした、真にまちの豊かさへとつながる将来の発展の手かがりをつかみ、持続可能なまちづくりへの道筋をつける必要があります。新年度はこうした視点も十分意識しながら、各種の施策に取り組んで参ります。
次に、その主要な取組みの概略を順次申し述べます。
(安全・安心・健康のまちづくり、暮らしづくりの推進)
安心はまちづくりの基本であり、すべての制度設計の原点であります。
中国四川省や岩手・宮城の大地震がもたらした甚大な被害を教訓とし、子どもたちの安全・安心な教育環境と災害時における避難施設としての安全性を確保するため、小中学校3校の耐震診断調査及び統合小学校の大規模改修工事を実施いたします。
また、民間住宅の耐震診断費に対する補助制度を新たに設けるとともに、災害時の被害防止と全市的な防災意識の向上のため、大規模な災害訓練を行うなど、官民が一体となって災害に強い地域づくりに取り組みます。
子育て支援につきましては、これまで、保育園や放課後児童会の拡大・充実を図る一方で、関係団体との協働のネットワークを構築し、子どもや家庭の環境、特性に応じた多様なサービスの展開を進めて参りました。
本市の総体人口が減少へと転じようかという中でも、出生数の回復と若い世代の転入により、乳幼児人口は増加しております。このうれしい現実を施策の効果と考えるなら、子ども施策は、今年度もタイムリーな事業の展開を図って参らねばなりません。
まず、これまで行ってきた新生児家庭の全戸訪問の結果を踏まえ、新たに「養育支援訪問事業」を開始し、支援を必要とする家庭へのフォローをさらに充実・強化いたします。
また、妊婦健康診査の公費助成を5回から14回に拡充するほか、小学生の入院医療費を原則無料化し、経済的な面からも安心して子どもを産み育てられる環境づくりを推進します。
また、家庭教育支援の新たな試みとして、「ノーバディーズ・パーフェクト事業」を開始し、親同士が知り合い、子育てに必要なスキルを身につける場を提供して参ります。
現下の雇用環境も踏まえ、母子家庭の就労支援を強化すべく、看護師、介護福祉士など就労に有利な国家資格の取得を支援する「高等技能訓練促進事業」を実施いたします。
学校教育の面では、地域と学校、市民図書館との連携により、子どもの健全育成を図る観点から、統合小学校をモデル校とし、学校司書を配置するなど図書環境の整備を図るとともに、地域との協働による図書館運営の体制づくりを進め、平成22年度の開校に向け準備を進めて参ります。
また、新年度から、ウォーキングを主体にした「健康推進事業」に市民とともに取り組み、「スポーツ健康都市宣言」に沿ったまちづくりを進めて参ります。
今年は、健康と福祉の祭典である「ねんりんピック北海道・札幌2009」のソフトボール交流大会が、9月に開催されます。全国から多くの方々が本市を訪れ、爽やかな秋空の下で心地よい汗を流し、たくさんの交流で活気に溢れることを期待しております。大会の成功に万全を期すことはもとより、参加選手や関係者の皆さんに「石狩に来て良かった、温かな大会だった」と言われるよう、市全体がおもてなしの心でお迎えして参りたいと存じますので、多くの市民のご協力をお願いする次第であります。
(地域経済対策の推進)
地域経済の活性化は、まちの活力に直結し、また、雇用機会の創出を通して市民の安心な暮らしの基盤ともなる重要な政策課題であります。
本市発展の原動力である石狩湾新港は、昨年、過去最高の貿易額を記録し、国際貿易港としての発展の道を着実に歩んでおります。
しかし一方では、既に大競争時代に突入した国内の主要港湾に伍して、中国やロシア極東地域のめざましい経済発展を踏まえた新たな戦略を構築し、実行に移すことが急務となっております。
新年度は、「サハリン石油・天然ガス開発プロジェクト石狩湾新港地域利用促進協議会(スピック)」を発展的に改組し、中国やロシア極東地域もターゲットに「創荷」と「集荷」に向けた活動を本格化させて参ります。
また、道内最大の都市機能を有する札幌市との連携を一層強化し、本州企業へのアプローチを図るなど、新たな戦略に基づく企業誘致や企業活動への支援を強力に進めて参ります。
このほか、「中小企業ステップアップ支援事業」を開始し、ビジネスイベントを活用した販路やネットワークの拡大に支援するとともに、中小企業の経営安定化のための資金調達コストを軽減するため、セーフティネット貸付等に係る信用保証協会保証料を引き続き補助して参ります。
また、平成20年度からの繰越事業などと併せ、建設・修繕事業費を前年度より約40パーセント拡大し、地域経済の下支えを図って参ります。その中では、新たな住宅投資を誘発する期待も含めつつ、懸案となっていた「樽川平和地区」のインフラ整備に着手いたします。
第一次産業分野では、本市として初の「漁業振興計画」の策定に着手し、担い手不足と漁獲高減少に直面する本市漁業の発展方策について広範な議論を進めるほか、農業者が行う土壌分析経費への助成を継続し、本市農業の減化学肥料化を促進するとともに、地産地消、農地の保全、耕作放棄地解消などの取組みを支援して参ります。
また、「石狩の宝」発掘を合言葉にこれまで官民一体で展開してきた観光振興の取組みは、マスメディアでの注目を集め、本州からのツアー誘致など具体的な動きが生まれております。新年度は、首都圏へのPR活動や管内市町村と連携した観光圏事業などを展開し、より明確に成果が見える年にして参りたいと存じます。
(環境に配慮した地域づくりの推進)
地球環境問題が大きく取り上げられた「北海道洞爺湖サミット」の開催を契機として、改めて地球環境に対する市民意識が高まっております。また、「環境」は、地域や産業発展のカギとなる大きな可能性を秘めております。
本市としても、森林、風力、雪氷など、多様な自然資源を生かし、既に先行して活動を行っている多くの市民とも協働しながら、地球環境への貢献を進めるとともに、今後推進されるLNGの展開に大いなる期待を抱いているところであります。
環境対策は、地道で息の長い取組みが求められます。合併でまちの姿が大きく変わったことや社会情勢の変化も踏まえつつ、持続可能な地域社会を構築するために「環境基本計画」の見直しに着手いたします。
また、現在市民とともに検討を進めております厚田区の「ふるさとの森」構想をとりまとめ、市民が主体となって実生(みしょう)の苗木を育てる自給育苗(いくびょう)を進め、まちぐるみの一大運動へと発展させるとともに、森林所有者が行う間伐への補助制度を創設し、健全な森林の育成と併せてCO2吸収源の確保を図って参ります。
さらに、雪氷冷熱の活用を始めとして、新港地域で計画されているCO2削減に向けた各種の実証実験に協力するほか、一般家庭の剪定枝葉を再資源化する「みどりのリサイクル事業」を拡充するなど、地域でできる地球環境への取組みを推進して参ります。
(地域自治区の振興)
厚田・浜益との合併後3年が経過し、これまで地域協議会を中心に、多くの地域住民の参加のもとに地域振興について協議が重ねられて参りました。新しい石狩像をつくる上で、両区の振興が欠かせないことは変わらない基本でありますが、本年9月で区長の設置期間が満了し、今後はこれまで以上に市民主導による地域振興を進めていかなければなりません。
そうした中で昨年、厚田区の小中学生5人による「心叫太鼓厚嵐会」が東京国際和太鼓コンテストで最優秀賞に輝いたことは、両区が、自然だけでなく人にも恵まれているということを改めてアピールするものでした。こうした素晴らしい資源を地域の活性化につなげる明確な戦略、戦術とその成果が求められる時期に来ております。
厚田区においては、新年度、「海浜プール」と「夕日の丘観光案内所」がオープンいたします。これらの施設を「恋人の聖地」や「港朝市」と連動させ、その真価を発揮するときであります。地域の創意工夫による魅力ある観光事業の展開や、特産品を活用した商品開発など、地域振興の取組みを推進して参ります。
また、浜益区においては、地域の特産であり観光資源ともなっている「さくらんぼ」の雨よけハウス整備を支援し、収量の向上のみならず、ブランド化や全天候型観光を促進するとともに、近く国の名勝指定が予想される名山「黄金山」の登山口までのアクセス道路を整備し、魅力ある観光地づくりを図ります。
また、札幌浜益間のバス運行を継続する事業者に対し補助するほか、個別排水処理施設の設置や、懸案であった老朽化著しい浜益浄水場を改修し、水道水の安全で安定的な供給を図るなど、地域の課題に対して的確に対処して参ります。
(持続可能な行財政基盤の確立)
将来にわたって安定的なサービスを提供できる財政基盤を構築するために展開してきた財政再建の取組みは3年次目を迎えます。この間基金からの繰入れに頼らない財政運営を行いつつ、地域経済の落ち込みに対処するための機動的な財政出動が可能になったことは、これまで断行してきた改革の成果と受け止めております。改めて市民のみなさまのご理解とご協力に深く感謝を申し上げます。
しかし、現下の経済情勢による税収の落ち込みや、国のめまぐるしい制度改正に伴い、歳入環境の見通しが不透明である状況は続いております。加えて、今なお高水準にある「実質公債費比率」、そして土地開発公社や国民健康保険事業特別会計の「負の遺産」などもあり、今後の財政運営を楽観視することは決してでき得ません。総じて申し上げるなら、本市の財政再建は着々と進んではおりますが、なお、道半ばと判断せざるを得ません。
このような状況下において、引き続き徹底した業務の見直しと職員定数の適正化を実施し、経費削減を図るとともに、国民健康保険事業特別会計の現状打開に向け体制を強化するなど、いわゆる「負の遺産」の膨張抑制と整理についても強い意志を持って取り組んで参ります。
このほか、本年秋から電子入札を導入し、入札の競争性・透明性の向上、さらには事業者の入札コスト低減と事務の効率化を図って参ります。
従来、公共施設は、その時点の人口に見合うサービス総量を確保すると同時に、将来の人口増加を見据えて整備して参りました。しかしながら、公共サービスの水準を低下させることなく今後も経営を維持することは、人口構成の変化、差し迫る人口減少により難しくなってきたものと考えざるを得ません。
このような視点から、将来にわたり持続可能な経営の確立に向け、例えば、簡易水道事業と上水道事業の統合準備を進めるなど、コスト削減や効率化の徹底を図るとともに、必要な公共サービスに見合う利用者負担のあり方についても広範な議論を展開して参ります。
(おわりに)
以上、新年度の主要な施策を申し上げましたが、新年度は視界不良の中でのスタートを余儀なくされております。さまざまな困難が私たちの前に立ちはだかる1年になるかもしれません。このようなときこそ冷静に情勢の変化を見極め、状況判断を誤ることなく、この難局に立ち向かって参らなければならないと決意を新たにしております。
今般の経済危機の震源地となった米国では、オバマ大統領がまさに熱狂的な支持を得て就任いたしました。国民の可能性を信じ、ともに困難な道に立ち向かおうという強いメッセージが多くの国民の共感を呼ぶことになったと思います。
翻って本市は、市民参加・市民協働・行財政改革にいち早く取り組み、進むべき道筋は既に成果として可視化しており、こうした取組みを支えてきたのは、紛れもなく6万1千人の石狩市民一人ひとりであります。まちづくりは、行政の力だけではできない、常に市民を信頼し、市民とともに歩まなければならない…これは私の変わらぬ信念であります。
新年度もこれを基本に、石狩市民の可能性を信じ、現在の厳しい状況を打開するため、市民とともに一歩一歩着実に進んで参ります。
市民並びに市議会議員のみなさまのご理解とご協力を心からお願い申し上げます。