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平成22年度市政執行方針

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


平成22年度市政執行方針

平成22年3月2日(火曜日)
平成22年第1回石狩市議会定例会

平成22年第1回石狩市議会定例会にあたり、新年度の市政に臨む基本方針を申し上げます。

はじめに

 今任期の総仕上げとなる平成22年度は、これまで取り組んできた市民協働社会の構築を目指した各般の施策をさらに進化させることを基本に、少子高齢化・人口減少社会の到来による人口ボーナスの終焉を現実として受け止め、ここから派生する多くの課題に対し長期的視点にも立ちながら、市民のみなさまとともに問題の共有化を図り解決への歩みを進めて参ります。
 現下の経済不況は、今春就職を希望する若年就業者の内定率が70パーセントにとどまり、10人に3人は就職できないといった極めて深刻な状況にあります。その要因としては、我が国の社会経済構造が大きな変化への潮流にある中で明確な方向性を探り当てていないことが、世界経済不況を機に一層顕在化したことによるものと考えられます。この閉塞感や将来にわたる不安感を払拭する方策については国や地方、産業界においても今なお模索の域を脱し切れておりません。
 政府はその解決手法の一つとして地域主権を前面に打ち出しました。今後、財政・社会保障・社会資本整備など広範にわたる抜本的制度改正を推し進めようとしております。地方自治体の運営においてもこれらの影響がどのようなものとなるか、あるいは地方自治体として何を発信すべきかを自ら予測・検証しつつ、改革の取組みを進展させることが何よりも重要なことと認識しております。
 このように時代が大きく変革する潮目に直面している現在(いま)、地方自治体は、変化の先を読み、的確な政策を創造する能力を高めなければならないと考えております。
 本市が取り組むべき重点方針としてまず、「環境」をキーワードとして掲げさせていただきます。
 京都議定書の約束期間の中間年となる本年、地球温暖化防止について、我が国は世界に先駆けて大胆なCO2の削減目標を掲げており、地域に対しても責任ある行動を求めてくることは必至であります。国においては「緑の分権改革」を進めており、地域性の高い事業展開を奨励しております。本市においてはいち早くこれに呼応しており、今後、地方自治体における環境政策の差が、地域の発展に大きな影響を与えることになるものと認識しております。
 市ではこれまで、「環境基本計画」「地球温暖化防止計画」などを基本に各種の取組みを市民・企業・団体等のみなさまとともに進めており、一定の成果を上げておりますが、さらなる時代的要請に対応するため、自然保護、廃棄物の処理、エコ対策など直接環境に結びつく施策の展開はもとより、ほかの施策についても必要に応じて環境の視点から評価・検証を行うなど、低炭素社会の構築を目指した新しい組織を設置することといたしました。
 また、CO2排出量を商品に表示する「カーボンフットプリント(炭素の足跡)」が、消費者に理解され始めているなど、市民意識は環境コストにも一定の評価を示し始めております。市の事業推進にあたっても、これからの政策選別に環境から検証を加える必要があるとの基本認識に立っております。もとより、ハード系に対する環境アセスメントを除き、確たる手法が成立していないこの段階において取り組むべき明確なシステムや、評価対象事業等を明示するには至っておりませんが、まずその必要性を強く認識し、走りながら検証を重ねることにより、その蓄積から一つひとつ手法を見出して参りたいと考えておりますので、このことについてぜひご理解を賜りたいと存じます。
 次に「地域資源活用型の経済戦略の推進」であります。地域の資源を活用して自ら経済価値を生み出し、その成果を地域へ還元させていくことで、成長を循環させる持続可能な産業構造を構築することであります。
 具体的な取組みとしては、本市の地域資源である雪氷やLNG冷熱を活用して自然エネルギーや代替エネルギーとしての価値を見出し、これを新時代の情報基盤であるデータセンターや流通施設と融合を図ろうとするものであります。
 市においては、環境イノベーションに官民一体で取り組み、これらの活用を図るべく、既に複数の研究会が行動を開始しており、新年度は国の制度を活用した実証研究の段階を迎えるものと考えております。雪氷冷熱を経済発展戦略の柱の一つに位置づけ、石狩湾新港地域から全国に発信し得るよう積極的な展開を行って参ります。
 また、本市の多彩な一次産品の地域内流通の拡大や加工等による付加価値を付けることであります。近年、本市では、地産地消や新商品開発などを目指す動きが地域で着実に広がっております。こうした取組みは、一次産業の維持強化のみならず、農山漁村地域の振興、本市の知名度向上を通した企業誘致を進める上で大きな意義があることに加え、市民レベルで取り組める環境対策としての側面もあります。この動きをさらに広範で力強いうねりとするため、石狩産の新鮮な農水産物を市民に低価格で届ける流通事業モデルの構築に取り組むほか、一次産品の付加価値向上や新商品開発を目指す異業種交流・地域資源活用・新分野進出などの挑戦を支援して参ります。
 新年度は、これらの重点方針に具体の成果を上げるとともに、これまでの各種改革の総仕上げの年度(とき)であることを強く意識をし、将来の石狩市の発展の礎として引き継ぐ「実」(みのり)を大きく膨らませるべく各種の施策と課題解決に取り組んで参ります。
 次に、その主要な取組みの概略を順次申し述べます。

安全・安心による質の高い生活環境づくり

 厳しい経済状況を受け、雇用環境の改善が喫緊の課題となっております。市としても国や北海道の制度を最大限活用しながら、地域活力の向上や懸案の公共施設等の改修などスピーディーな取組みを推し進めて、雇用の場を創出するとともに、「求職者のスキルアップ」の支援や「雇用サポートセンターの相談日拡充」などに取り組んで参ります。
 多世代が安心して住み続けられる地域づくりには、多様な主体が助け合う地域社会を築いていくことが必要です。そのような観点から、新地域福祉計画(りんくるプラン)に基づき、社会福祉協議会と連携しながら「地域福祉協力店舗制度」などを実施し、地域福祉の増進に取り組んで参ります。
 また、新年度から始まる次世代育成支援行動計画の後期計画(こども・あいプラン)に沿って、「子ども参加プロジェクト事業」を実施するなど「子ども支援」をより重視し、子どもたちの自立心を地域全体で育む施策に取り組みます。また、計画の中核を担う施設として「(仮称)こども未来館」を新設し、平成23年度の開設に向けて、安全・安心な居場所づくりや知的興味に応える事業の展開と、子どもが主体的に活動できる運営体制の準備を進めて参ります。さらに、子どもの発達に応じた、きめ細かな相談・支援体制を充実させるため、必要性が求められていた「5歳児健康相談事業」を新たにモデル事業として試行して参ります。
 昨今の経済不況の影響などにより共働き世帯が増え、保育に対するニーズが一層高まっております。待機児童問題の解消対策として、花川南地区に本市初の「認定こども園」を開設します。また、本町・右岸地区の保育サービスの拡充と施設の老朽化解消を図るため八幡地区の保育園を建て替え、平成23年度の開設を目指します。
 高齢者が生きがいを持って暮らすために、医療・福祉・介護・保健・スポーツを連携させ、生活実態など高齢者個々の実情に応じた対応を図って参ります。また、国において新たな障がい者福祉制度の議論が始まっておりますが、市においては「障がい者総合相談支援センター」を核に、必要なサービスの提供と、総合的な相談業務を進めるほか、個々の能力を最大限活かせるよう就労支援など社会参加の促進に取り組みます。
 活動的でいきいきとした生活の基礎である健康づくりを全市的な取組みに広げていくため「ウオーキング推進事業」を拡充するとともに、生活習慣病予防の観点から、特定健康診査と併せ脳ドック・人間ドックを拡充し、受診率の向上と保健指導の充実を図って参ります。また、新たにヒブワクチンなど任意の予防接種の助成について、実施に向けた具体的な検討を進めて参ります。
 これらを踏まえ、市民の健康寿命の伸長を図るため、ライフステージに応じた総合的な「健康づくり計画」の策定に初めて取り組みます。
 突然の傷病に対応する救急医療体制は、医師不足と開業医の高齢化などもあって現状を維持することは極めて困難な状況に至っております。市民の生命に係わる地域医療の根幹であることから、これまでの在宅当番医制から新しい仕組みへの転換を目指し、ただ今関係機関との精力的な協議を進めており、早い機会での具体化を図って参ります。
 また、我が国では自ら命を絶つ方が年間3万人を超えております。主たる要因は、経済や健康に起因する心の問題であり、このような状況は本市においても取り組むべき課題となっていることから、相談員の育成や自殺予防の啓発を図る「精神保健福祉事業」を実施して参ります。
 明年7月の地上デジタル放送完全移行に向け、浜益区にある共同受信施設の整備に支援を行うほか、救急時により高度な対応を図るため高規格救急車を新たに配備するなど、生活基盤の整備を進めます。
 子どもたちが1日の大半を過ごす学校は、災害時の避難場所にもなることから、安全を確保するため厚田小学校・浜益小学校2校の屋内体育館について、耐震補強の実施設計を行います。

地域経済の活性化に向けて

 現下の経済情勢を踏まえ、事業本来の目的はもとより、地域経済を下支えする観点から、切れ目のない経済雇用対策として、「公園の改修」や「樽川平和団地のインフラ整備」を引き続き進めるとともに、新港地区への主要なアクセス道となる「花畔本通道路整備事業」など3路線の新規市道整備に着手するほか、中長期的視点に立ち既存インフラの適切な維持・管理に努め、施設等の長寿命化に取り組んで参ります。
 また、その効果を持続的に将来へつなぎ、本市の経済発展を支える分野への投資についても積極的に行って参ります。まず、地場企業の人材育成・商取引拡大の機会を提供する「中小企業ステップアップ支援事業」を拡充するほか、住宅のリフォームや省エネ改修のニーズをとらえ地場建設業の受注機会の拡大を後押しするため「リフォームフェスタ事業」への支援を行います。 また、「青果物の集出荷施設」や厚田区における「サケ二次飼育施設」の整備に対し支援し、農水産業の生産力と販売力の強化を進めて参ります。
 世界的な経済不況下にあって、内需の拡大と世界の工場を自認する旺盛な輸出により成長を続ける中国や、豊富な資源を背景に活力を取り戻しつつあるロシア極東など北東アジアとのアクセスを目指し、石狩湾新港管理組合とともに新たな定期コンテナ航路の開設に向け、戦略的なポートセールスを展開するとともに、情報・流通・食品加工など投資意欲の旺盛な産業誘致を図るため北海道、札幌市などとも手を携えて一層の強化を図って参ります。
 また、石狩湾新港地域における雪氷等自然エネルギーを活用した新たな産業づくりの実現に向けて戦略性をより高めるためにも、引き続き東京分室での集中的なセールスや情報収集に努めて参ります。

環境・快適・持続可能な満足度の高い地域づくりを目指して

 環境施策については、現在見直し中の環境基本計画の改定を行い、今後の経済社会情勢を踏まえた平成32年度までの環境政策の方向性を明らかにするとともに、「住宅向け太陽光発電システム設置費補助」を拡大するほか、「本庁舎の一部に太陽光発電システム」を導入します。さらに厚田区における「ふるさとの森づくり」を市民とともに進めるほか、市有林の間伐・適期伐採と植林の実施、また民有林の間伐、植林等を支援し適正な森林整備を推進するなど、低炭素社会への取組みを進めます。
 また、今秋我が国で「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開催され、自然環境の保全への関心が高まることから、石狩浜に道内外の海浜保全活動グループが集う「ふるさと海辺フォーラム」を開催し、海浜生態系の大切さを発信するとともに、海浜植生の保護区域拡大の検討を進めて参ります。
 さらに、快適で持続可能な地域づくりの観点から、引き続き「木造住宅の耐震診断や省エネ改修補助」を実施するなど、安心して生涯住み続けることのできる住環境の充実強化に取り組んで参ります。また、情報社会の進展に即し「ブロードバンドサービス」の未整備地域への完全導入を進めて参ります。
 自治基本条例の理念を踏まえ、誰もが公共を担える市民満足度が高いまちづくりを実現するため、公共への市民参加のツールとなる「協働事業提案制度」により「厚田公園の環境整備事業」など7つの事業を積極的に進めて参ります。
 また、男女が相互に認め合い、共につくる地域社会を目指して、「第2次男女共同参画プラン」の策定を進め、平成23年度からのスタートを目指します。
 本市が将来にわたり協働に基づいた質の高いまちづくりを進めるためには、次代を担う人材の育成が重要であります。これまでも庁内に「こども室」を設け、横断的に施策を推進して参りましたが、子どもが育つ環境の変化とともに生じている課題を今一度整理し、地域としてどのように子どもを育てていくかについて明確な方針が必要であると認識しております。
 このことから、福祉と教育に横断する共通の課題を総合的に解決するために、「こども・あいプラン」と「新教育プラン」を合同で策定したところであります。計画の共通する4つの重点施策「確かな学力」「たくましい体力」「安心の居場所」「参加の権利」を総合的に取り組んで参ります。
 

地域自治区の振興

 合併後4年が経過した昨年9月で区長の設置期間も満了し、地域自治区においてはいよいよ本格的に市民主導による地域づくりの具体策が問われております。
 こうした状況も踏まえ、地域づくり基金の使途を拡充するとともに、市民が主体となって取り組む事業に対する補助率を高めるなど、両区の創意と行動を、さらに強力にサポートして参ります。
 厚田区においては、市民により地域が生んだ4人の偉人を中心とした歴史資料を貴重な財産として伝承するため資料室のリニューアルのほか、森林保全に取り組む団体の活動初期経費に支援して参ります。また、支所機能や施設の老朽化など課題のありました支所について、福祉事業との連携を一層進め、災害にも適切に対応するなど市民サービスの向上を図るため、厚田総合センターの改修工事を行い、移転をいたします。
 また浜益区においては、農産物の増収と観光客の一層の誘致を図るため、継続事業である「さくらんぼ」の雨よけハウスに加え、新たに水稲と施設野菜の兼用ハウスの整備に対し支援するとともに、市民が主体となって未利用の施設を活用し、地域の特性をアピールする新たな事業に対しても支援をして参ります。

時代の要請を先取りした行財政運営の確立を目指して

 政府は地域主権を最重要課題とし、新たな制度設計に向け、今夏にも中期的な課題を総括する大綱を策定し、地方との協議の場を通じ地方の視点にも立った新たな分権議論を進めるとしております。
 こうした新時代への対応を図るためにも、財政の自立は基本的かつ最も大切な基盤であります。
 4年次目を迎える財政再建計画においては、変化の激しい社会経済動向に機を逸することなく、安全・安心や景気・雇用対策に迅速な対応をしつつ、財政規律を堅持する基本姿勢は新年度においても何ら変わることはありません。
 今後、国においては、国と地方との関係に踏み込んだ地方交付税の抜本的見直しや、政策誘導型の補助金から一括交付金への流れなど新たな仕組みを提案するとしておりますが、個々の地方自治体にどのような影響が及ぶのか未だ判断し得えない状況にある一方で、高齢化が進みながら人口減少することによる財政規模の縮小が予測されます。
 このような状況において地域活性化、地域の社会インフラを維持する財源の確保には、政策の「選択と集中」を徹底し、歳出の効率化、地方債の抑制、基金への積み立てなどの取組みは必要不可欠でありますが、同時にサービスに応じた負担のあり方の議論なくして持続可能な財政運営は困難であると認識しております。
 とりわけ、社会インフラは今後「新設」から「維持」に比重が増して参ります。こうした予測可能な状況に今から対策を講じなければなりません。
 今後の大きな課題となります上下水道事業については、少子高齢化の進展や生活様式の変化など、経営環境が大きく変わっています。将来にわたり安全で安定的な上下水道サービスの供給を持続させるため、財政スキームや、経営手法を含めた事業運営のあり方そのものについて情報の共有化に努めながら、市民のみなさまとともに議論を進めて参ります。また、簡易水道事業については上水道事業と統合し、厚田・浜益両区の浄配水場等の運転管理を民間委託するなど経営の基盤強化を図って参ります。さらに、北石狩衛生センターにおいても管理運営体制が課題となり、抜本的な見直しを迫られていることから、民間活力による安全で効率的な包括的管理委託の導入について検討を進めて参ります。
 目まぐるしく変化する情勢の中、行政においては的確な政策選択を行うための高い運営能力が求められる一方で、ここ数年職員が大量に退職する状況にあることから、限られた人員で効率的な市政の運営を図るためには、機動的な組織の見直しと人材の育成が不可欠であります。このような観点から、これまでも北海道や札幌市、さらに札幌広域圏組合など他の行政機関に職員を派遣して参りました。新年度においては新たに総務省に職員を派遣するほか、専門性が一層求められる税務部門に北海道からの派遣を継続要請するなど、激変する行政環境に対応できる職員の育成と組織づくりを図って参ります。

おわりに

 私たちは今、ひとつの時代が終焉し、困難な時代を迎えていることを自覚しなければなりません。しかし、その事態を必ずしも否定的に捉える必要はないのです。先人が次なる時代へ挑み、歴史的転換を成してきたように、私たちもこの困難を乗り越える可能性を十分有していると確信しております。改めて自然に対する謙虚な心を持ち、畏敬の念を抱き健康的な真の豊かさを追求し、その答えを見出していかなければなりません。もとより成熟社会における基本認識として、自らがまちづくりに参加することを喜びとし満足感を得ることは、与えられた時代から自らが選択と判断、参加し得る時代に立っているからにほかなりません。このテーマは私の市長就任以来取り組んできたことであり、明らかにまちづくりの形態が変化していることを肌で感じているのは私だけではありません。さらなる高まりを目指し、共に全力を傾注して参ろうではありませんか。

 市民並びに市議会議員のみなさまのご理解とご協力を心からお願い申し上げ、平成22年度の市政執行方針といたします。