平成24年度市政執行方針
平成24年度市政執行方針
平成24年2月28日(火曜日)平成24年第1回石狩市議会定例会
平成24年第1回石狩市議会定例会にあたり、新年度の市政に臨む基本方針を申し上げます。
はじめに 課題の整理と未来への投資
私は新年度の予算編成にあたり、先人、諸先輩が現世代に遺していただいた素晴らしい石狩市をかみしめ、改めて、いま成すべきことは何か、未来への投資を戦略的に進めることの大切さを、自らに問いかけてみました。今まで、そのようなことも考えていなかったのかとお叱りを受けることにもなりますが、国家のパラダイムの転換期にあって、また、私自身、特に「時間」というものを強く意識した現時点においての今回の予算編成では、極めて緊張感を持ってあたることとなりました。それ故、次代に引き継いではならない財政的アキレス腱痛の解消と、石狩湾新港地域を基軸とした将来の安定した産業基盤の確立に向けた積極的投資の必要性を強く認識したところであります。
まずは、石狩市土地開発公社についてであります。同公社は、昭和48年に設立し、市と一体となって本市のまちづくりの一翼を担っておりましたが、この間の、土地環境の変化と高金利への対応の遅れなどから、多額な含み損と欠損金が生じました。平成9年度から2次にわたる再建計画を策定し、欠損を穴埋めするために、補助金の投入や負債全額の無利子貸し付けを行うなどの対策を講じてきましたが、自力での解決が困難な状態にありました。このことから、平成20年3月に保有地の処分および欠損金の解消を図り、平成39年度をめどに同公社を解散するスキームの「石狩市土地開発公社経営健全化計画」を策定しております。この計画に沿って平成24・25年度において、最大の懸念要因となっている志美地区の土地を購入することとしました。
次に、花川東土地区画整理事業についてでありますが、市の東側玄関口となる同地区の市街地整備を図るべく進められてきた当事業も、長引く経済不況、少子化による都心回帰の影響で保留地の売却が進みませんでした。事業終了予定時期を目前に控え、小宅地の完売へは道が開かれつつあるものの、大宅地が大きな重荷となっており、組合事業の完遂に多大な影響を及ぼしております。不安の芽は、成木へと拡大し、既に組合自体による事業費の圧縮および事業期間の延長もできない状況に至っております。現在の環境を考えるとき、自力での解決は極めて困難な状況にあると判断し、後年次における市営住宅の移転先として購入することにより、この事業に決着をつけて参りたいと存じます。
次に水道事業会計の健全化についてであります。近年における単年度収支は、少子高齢化の進展などにより料金収入が減少傾向に転じるなど水道事業経営は厳しい状況にあり、明らかに高く掲げられたイエローカードの警告を受けている状況にあります。
加えて、間近に迫った当別ダムの供用開始による恒久水源への切り替えや、老朽化が進む施設の計画的な更新を実施していくためには、もはや料金の改定は避けては通れないものと考えております。
当初予算への直接的計上とはなっておりませんが、現在、料金改定について「石狩市水道事業運営委員会」に諮問し、答申後において、所要の手続きを経て議会に提案したいと考えております。市民生活に欠くことのできない水道を今後も維持し、健全な形で次の世代に引き継ぐためには、問題の先送りはあり得ず、一刻の猶予もない状況にあります。この大きな命題に明確な道筋をつけたいと考えております。
また、厚田区の特定環境保全公共下水道事業についてでありますが、事業形態から収支のバランスが取れないなど赤字体質にならざるを得ない構造的な問題を有している状況にあります。公共下水道事業との使用料格差解消については、地域からの要請もあり、個別排水処理施設整備事業とともに公共下水道使用料体系への統一を検討して、問題の解決を図っていかなくてはならないと考えます。
次に、国民健康保険事業特別会計についてであります。国民健康保険は、近年の急速な高齢化の進行や医療技術の進歩等により医療費が増大する一方、医療費の多くを占める高齢者や低所得者が加入するなど構造的な問題を抱えており、加えて現下の厳しい雇用・経済情勢を背景に保険税収入の確保が一段と厳しさを増しております。多くの自治体では、厳しい経営を強いられているのが実態であります。市では国保会計の健全化を図るため、平成21年度に「第1次石狩市国民健康保険事業経営健全化計画」を策定し、一般会計からの法定外繰り入れを行い、累積赤字額を7.5億円まで改善して参りましたが、引き続き累積赤字の解消に向けた取り組みが必要と考えております。また、市における現状の特定健診受診率の低さには、平成25年度導入予定の国からの多額のペナルティーによるさらなる経営悪化が懸念されます。国民健康保険加入者の方々には、早急な受診行動が必須であるという、差し迫った状況をご理解いただき、市の取り組みも併せて、健康管理のため、また保険税を抑えるためにも特定健診の受診を強く求めて参りたいと考えております。
以上申し上げた長年にわたって懸案となっているこれらの問題への対応が遅れると、市財政のマイナス要因をさらに拡大することとなり、ひいては市民生活に不安をもたらし、市民サービスの低下を招くことになります。
幸い石狩市は、これらの課題を克服し発展する力を有しております。将来への投資を怠ることなく取り進めるならば、道内有数の都市力を持ったまちへと発展するものと確信いたしております。そのためリーダーシップを発揮し、メリハリの利いた市政の運営を具体的アクションプランをもって実行して参ります。
その牽引役となるのが、全国からの注目を集めている石狩湾新港地域であります。
現在、新港地域の持つポテンシャルは急激に高まっております。既に始動した大規模郊外型データセンターは、環境と情報の新分野を結びつけ、北海道の地域価値も高めております。グローバルな投資をも可能とする世界標準モデルとしての石狩バレー構想は歩み始めたところであります。また、LNG(液化天然ガス)は新たな時代を支える基幹エネルギーとして、環境負荷の低減に貢献するとともに、気化の過程で生じる冷熱は、イノベーションの進展に伴い、地産地消型のエネルギーとして期待されています。洋上風力発電は、既に国内でも適地として評価され、実現への道が開かれつつあると認識しております。さらに北海道が作成する「強靱な国づくりと北海道の貢献-北海道バックアップ拠点構想-」における食料備蓄基地や、港湾物流機能等が重要な役割を担うこととして期待されるほか、データセンターへの利活用と可能性が膨らんでいる雪氷、冷熱エネルギーや地域のバイオマス資源を活用したエネルギー開発等、多様なエネルギーソースが賦存しています。
石狩湾新港地域を、これらエネルギーのベストミックスによるスマートエネルギーエリアとして展望し、本道の先導的プロジェクトを育てて参りたいと存じます。
港湾においては、姉妹都市ワニノに隣接するソヴィエツカヤガワニ港が極東初の港湾経済特区に指定され、既に国内大手のシンクタンクの開発提案が採択されています。背後のシベリアの潜在的資源は、日本にとっても高い価値を有するものであり、将来の日本海貿易の核となりうるものであります。培った姉妹都市交流を糧に長期的かつ戦略的に挑戦して参ります。そのことが昨年指定された日本海側拠点港・重点港湾としての役割を担うことにもなります。
自分の安全は、自分で守るというのが、防災対策の基本です。そして自助、共助、公助それぞれが、災害対応力を高め、連携することが大切だと言われております。また、東日本大震災を教訓に、子どもたちが1日の大半を過ごす学校の耐震化を一層急がなくてはなりません。さらに、持続可能な地域づくりの観点から、市民が安心・安全に暮らせるまちづくりを進めて参ります。石狩市の防災に関する基本的な計画である「石狩市地域防災計画」と、「石狩市水防計画」を改訂するとともに、各地区の特性に沿った「地区防災計画」の策定や高齢者・障がい者などの災害時要援護者への対策を市民の皆様と議論して参りたいと存じます。
次に、健康は特に長寿命社会において希求してやまないものであり、各世代においても人が人として生きるため最も大切なものであるとの認識を市民と共有しているところであります。新たにスタートした「石狩市健康づくり計画」に基づき各種事業に取り組むなど、明確な方向性と意識を持って進めて参りました。いまだその成果を論じる段階に至っておりませんが、多くの市民、団体、町内会、高齢者クラブ等の理解と協働の中で拡大をしていることは、市民力の高まりとしても評価すべきことだと考えます。また、「スポーツ・健康都市宣言のまち」としてスポーツを通した健康づくりに努め、これと併せWHO(世界保健機構)の憲章を尊重した健康都市を目指して参ります。
子どもは、私たち市民の未来そのものであり、社会の希望です。
子どもは、やがて大人になり、その大人は子どもを産み育てる親となります。さらなる世代を担う親として、社会の一員として、この大人になる過程をどういった環境の中で過ごしていくのかが重要であります。
そのため、子どもの育ちを支え、安心して成長できる環境を社会全体で支える仕組みづくりが極めて大切であります。少子化に歯止めがかからず、本市においてもここ数年、出生数は減少している現状にはありますが、これまで保育所整備や放課後児童クラブの拡充など就労家庭への支援をはじめ、子育て環境のネットワークづくりなど市民とともにさまざまな施策に取り組んで参りました。
また、幼保一体化の取り組みにつきましては、本市では幼稚園の預かり保育の拡充とともに、認定こども園の導入などいち早く取り組みを進めておりますが、今後とも国の動向を見定めながら、積極的に取り組んで参ります。
次世代の育成については、英語教育の推進に力を注ぎたいと考えています。小学校への英語指導助手の配置やICTを活用した英語教育の推進は、未来の石狩を支える子どもたちが、幼い頃から英語に慣れ親しみ、英語を使いこなせることにより、将来、就職する際の選択の幅を広めるとともに、自らの進む道を切り開いていく力をぜひ備えてほしいという思いがあり、教育委員会との話し合いにおいても、共通した基本認識を持っているところでございます。
地方自治体で進める環境政策の差が、今後の地域の発展に大きな影響を与えることになるものと認識しており、市の政策推進にあたって、環境の視点から検証を加える必要があります。各種リサイクル法の整備など廃棄物行政に係る環境や枠組みが大きく変化している状況を踏まえ、「第2次石狩市環境基本計画」に掲げる「循環型社会の形成」を実現するために、「一般廃棄物(ごみ)処理基本計画」の策定に合わせ、北石狩衛生センターの長期包括委託の実施などさまざまなごみ処理施策を有機的に連動させながら、本市の一般廃棄物処理政策の実効性を高めて参ります。
さらに、「第2期石狩市役所の事務・事業に関する実行計画」に基づき、従来のオフィス活動に係る取り組みに加え、公共事業に至るまで、新システムのもと、市自らがさらなる温室効果ガス排出量の削減に努めます。また、市民協働のもとに、海浜の保全のため、沿岸の生きものの多様性の把握や利用者モラルの啓発を進めて参りたいと存じます。
大きな時代の潮流の変化、不透明感が否めない時代だからこそ、我々地方自治体は、進むべき目標を掲げ、自らが先を読み将来の基礎となる先進的な政策を創造する能力を高め、市民の皆様に示さなければならないと考えております。
新年度は痛みを恐れずに、事にあたりては真摯に取り組むとともに、石狩市の将来にわたる発展の礎として引き継ぐための「種」を大きく膨らませるべく各種の施策と課題解決に取り組んで参ります。
次に、その主要な取り組みの概略を順次申し述べます。
心も体も健康に暮らせるまちづくり
先行きの不透明感などから、共働き世帯が増え、保育に対するニーズが一層高まっております。今後、特に増加が見込まれる学童保育の待機児童の解消対策として、花川南小学校区に、放課後児童会を増設いたします。また、雇用情勢は完全失業率、有効求人倍率など、改善の兆しが見えつつあるものの、昨春の市内高校生の就職率は7割程度にとどまっております。高校生など新卒者の若者が将来に希望を持てない社会に発展は望めません。高校生向けの就業支援事業として、模擬面接の実施や就職未決定者への個人指導を行い、就職率の向上を目指します。さらに、子どもの発達に応じた、きめ細かな相談・支援体制を充実させるため、発達支援センター相談支援専門員の増員を図って参ります。また、近年、若者のひきこもりやニートが社会問題化しています。これらの解決のため、北海道、政令市を除く都市では全道初の取り組みとして、専門相談員を配置した相談窓口を設けて参りたいと存じます。
また、「石狩市地域福祉りんくるプラン」の基本理念である、「地域力の向上による、共に支え合うまちづくり」に向け、これまで醸成されてきたボランティア活動への機運をさらに広げるため、やりがいや、達成感を得ることにより、さらなる励みとなるよう、活動に対するポイント付与制度を導入し、3年程度をめどに実証事業を行います。
ワクチン接種事業では、生後2カ月から5歳未満の乳幼児を対象にヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンを、13歳から16歳の女性を対象に子宮頸がん予防ワクチンの接種費用の全額助成を引き続き行います。
新たに活動的で生き生きとした生活の基礎である健康づくりのために、40歳をがんの重点周知年齢として、死亡率の高い胃がんと肺がんの検診無料クーポンを対象者に配布いたします。また、高齢者の肺炎球菌に起因する肺炎の重症化を予防するとともに、費用負担を軽減し、予防接種を受けやすい環境整備を図るために高齢者用肺炎球菌ワクチンの接種費用の一部助成を行います。
長期・安定的な地域経済の活性化に向けて
本市の公共施設の老朽化に伴う修繕や、道路、橋梁、公園施設などの適切な措置を講ずる長寿命化対策などを図りながら、社会資本・財政の持続可能性を確保するために必要な取り組みを推進して参ります。
市民が毎日利用する道路に関し、より安全で快適な状態を保ちながら、長期的、安定的に管理ができるよう、除雪と道路維持を一体的に実施する複数年委託を新たに行います。
花川地区と緑苑台地区を結ぶ枢要な拠点間道路となる「花川北11線通」の整備に向け実施設計を行うほか、新港地区への主要なアクセス道となる「花畔本通道路整備事業」の早期完成を図るとともに、歩行者ならびに子どもの安全確保のため通学路となっている「花川南6条通」などの準幹線道路を整備して参ります。
また、安全で快適な公園環境を整えるため、「花川北三角公園」の拡張や「樽川平和公園」の整備に向け実施設計を行うほか、厚田区・浜益区の橋梁の補修を行うなど、既存インフラの適切な維持・管理に努めて参ります。
本町・右岸地区の安全確保ならびに新港地区の大型火災等に迅速に対応するため、老朽化している石狩消防署親船支署を志美地区に移転し、防災の拠点としての整備を視野に設計を行います。
地域資源を活用した経済振興に関しては、豊かな自然に育まれた本市の一次産品を素材に、新港地域の企業などが商品加工し、付加価値を向上させて流通させる6次産業化が、近年、芽を出してきております。その動きをさらに後押しするよう、市場競争力を持った石狩らしい加工品の開発などに支援して参ります。
また、引き続き市民の住生活をより安心・エコ・安全なものとしつつ地元企業の受注機会拡大を図るため「リフォームフェスタ事業」への支援を行います。
活気ある石狩湾新港地域については、企業誘致の勝機と捉え、グリーンエナジーデータセンターを設置した事業者に対する助成金交付に加え、道央圏が持つ立地優位性を活かし、首都圏で開催されるビジネスフェアへの札幌市との合同出展やトップセールスを行うほか、東京事務所の人員を1名増員し、企業誘致室と連携しながらより集中的な石狩市のセールスや国、中央省庁の関係機関の情報収集に努めて参ります。
地域自治区の振興について
合併後6年が経過した地域自治区においては、地域の持つ特性を活かし、さらに地域に住む皆様が、地域のあるべき姿を思い描き、自ら地域づくりに乗り出すことが重要と考えております。市民が主体となり、区の創意と行動を起こす「あつた水彩画展芸術文化振興事業」等を本格的に支援して参ります。
2年続いた大雨被害を教訓に、厚田区においては、地元と連携を図りながら、農業被害が出ている箇所を中心に、河川の流れを確保するため、立木伐採を計画的に進めるほか、浜益区の群別小川の排水改修を行うなど、頻発している大雨による災害を未然に防ぐ対策を進めて参ります。
また浜益区においては、ニシン漁の歴史を象徴する建造物である「はまます郷土資料館」の貴重な収蔵物を新たな場所に展示するなど、地域の歴史、文化が再認識されるための取り組みを進めて参ります。
次代を見据えた、行財政基盤の構築を目指して
「第3次行政改革大綱(石狩市行政改革2016)」では、業務の質的改善「仕事の仕方見直し」や 、目まぐるしく変化する情勢に応じた組織づくりにより、限られた資源で効率的、効果的な行政運営に最大限取り組むとともに、これまでも一貫して推進して参りました「協働」をさらに推進し、新しい地域経営を築いて参ります。
わが国は、世界がこれまで経験したことのない超スピードで少子高齢化が進んでおり、それに伴って急激な扶助費の増大と、財政の硬直化が危惧されております。このような社会環境のもと、市民の皆様や地域の活力なくして、解決には至りません。市民力、企業力、行政力を併せて知恵を出しあい、石狩の特性を活かした政策実行のために優先順位や手法の選択を行うと同時に、サービスに対する応分の負担の議論を通して持続可能な行政運営に取り組む必要があると認識しております。
これまでも総務省、北海道経済産業局、北海道庁、札幌市など他の行政機関に職員を派遣して参りました。新年度においては、復興のために宮城県名取市、山元町などへの被災地への職員派遣や、財政再生団体である夕張市に対し職員を派遣し、大局を見据え時代の潮流の変化に迅速に対応できる職員の育成と組織づくりを図って参ります。
おわりに
私たち地方自治体は、極めて不透明な国政の下にあり、さらに未曽有の災害から、共に手を取り、立ち上がろうとしています。先行きが見えない不安な時代を迎えていることを自覚しつつも、それを恐れることなく、将来の糧となる種をまきながら、一歩ずつ歩んでいかなくてはなりません。
市民の皆様が、石狩市を愛し、石狩に住んで良かったと日々感じることができるような、「まちづくり」を行っていく所存であります。市民協働の取り組みが功をなし、市民活動は着実に成果を上げております。このエネルギーは何にも替え難い「まちづくり」の推進力と考えます。健康であることの喜びをかみしめ、幸せを実感しながら真の豊かさを追求できるよう取り組んで参ります。
また、石狩市の将来への足かせになりかねない大きな課題に対しては、断固たる姿勢を持って、解決への道筋を立てたいと考えております。それが、愛する石狩の持続可能な発展のために私に与えられた使命だと考えております。
さまざまな困難が待ち受けているとは思いますが、困難を乗り越えた先に必ずしや見えるであろう明るい未来を目指し、持てる力を尽くして皆様と共に立ち向かっていく決意であります。
市民ならびに市議会議員の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、平成24年度の市政執行方針といたします。
財政再建計画の検証と今後の運営と課題
続きまして、平成19年度より取り組んで参りました、財政再建計画が今年度末をもって終了するこの機会に、「財政再建計画の検証と今後の運営と課題」について、申し上げます。
財政再建計画の成果
バブル崩壊後に景気浮揚策として国を挙げて行った景気対策と連動した都市基盤整備や、特に市制施行時に行った福祉、社会教育施設等の社会資本整備による市債の償還、また、高齢化社会の到来とともに社会保障費が年々増嵩していく歳出環境に対し、長期化する不況の影響で予想を上回る市税収入の減少、さらには三位一体改革における地方交付税の大幅削減といった歳入環境の悪化から、市財政は、平成16年度より実質的な赤字体質に陥り、このままでは赤字再建団体へ転落しかねない危機を迎えました。
そこで、合併の前後の平成16年度から平成18年度の3年間は、収支不足を補うため、基金からの繰替運用や備荒資金の取り崩しなど、総額23億円を超える財源補てんを実施してきましたが、このうち約10億円は平成17年度の合併により可能となった「合併まちづくり基金」であります。「合併まちづくり基金」は、合併による「合併特例債」の活用で作ることができた基金ですので、合併しなかった場合には、この3年間の財源補てん策の半分程度が不可能だったことになり、平成19年度で3市村いずれかの団体は「財政再建団体」への転落という状況に陥っていたかもしれません。
このように毎年、基金による財源補てんをしなければならない財政構造から脱却するため、市では平成19年度に「財政再建計画」を策定し、これまでの5年間、内部管理経費の削減や、職員数の削減などの市役所改革を断行すると同時に、市民の皆様にもご理解とご協力を頂き、大胆な行財政改革を断行した結果、5年間総額で約50億円の財政効果を生むことができました。
この間、国の景気対策や地方交付税の増額効果が重なったこともあり、一時の財政危機を脱し、各種財政指標は緩やかな改善基調を歩んでおり、財源補てんすることなく予算編成を行うことが可能となる、いわゆる、体質改善を図ることができました。
財政指標の達成状況についてでありますが、財政の硬直度を示す「経常収支比率」は、目標の90パーセント未満をクリアし、平成22年度末で88.4パーセント、今年度末には90パーセント弱を見込んでおります。
公債費のフロー指標であります「実質公債費比率」は、目標の13パーセント未満をクリアし、平成22年度末で11.9パーセント、今年度末で11.5パーセント程度を見込んでおります。
「人口1人当たりの市債残高」は、目標が50万円未満でありましたが、平成22年度末で52万8,000円、今年度末で53万4,000円程度となる見通しであり、目標を達成できませんでしたが、このことについては、国が地方交付税の一部を臨時財政対策債に振り替えたことによる起債発行額の増加も要因の一つと考えているところであります。
また、その他の関連項目での成果についてでありますが、国民健康保険事業特別会計の累積赤字額では、平成19年度で12億6,000万円であったものが、今年度末では約7億5,000万円までの改善の見通しとなります。
土地開発公社の累積欠損額では、平成19年度に11億円生じておりましたが、今年度末では9億6,000万円まで改善となります。
この5年間における、市民、議会の皆様、および市職員のご協力に対しまして、改めて、お礼を申し上げます。
さて、このように順調に推移していると思われる本市の財政状況ではありますが、国の財政出動が地方に与える影響の大きさや、少子高齢、人口減少等を考えますと、今後につきましても、財政運営は決して楽観できるものではないと考えているところであります。
国の財政出動の状況
未曽有の被害をもたらした東日本大震災から約1年が経過し、この間政府は補正予算を数次にわたり編成する一方で、国家財政は税収が歳出の半分も賄えず、国および地方の長期債務残高が、間もなくGDP対比の2倍に達すると見込まれ、これは、主要先進国の中で最悪の水準であるといえます。
こうした中、国はこれまで以上に行財政改革に取り組むことに加え、「社会保障と税の一体改革」を通じ、国民生活の安心の確保と財政の健全化に取り組む姿勢を見せています。
しかし、消費税議論の高まりはありますものの、肝心の社会保障の仕組みが全く見えておらず、地方の関わりも不透明であります。
懸念されるのは、歳出削減を地方に求めようとする地域主権に抗う姿勢であります。
地方交付税の動向
国が、三位一体改革後の地方財政の窮状から、近年、地方交付税の増額を図ったことは、地方として一定の評価をしており、政府が現在、示している「中期財政フレーム」においても、地方交付税等の一般財源ついては、平成24年度から平成26年度までの3年間は、平成23年度の「地方財政計画」の水準を下回らないとしております。
本市においては、これまで合併に伴う合併算定替による普通交付税の増額措置が行われています。
しかしながら、合併後10年を境に段階的に縮減されます。
合併算定替が終了する平成33年度には年間約10億円の減少が見込まれますことから、引き続き、一層の財政構造の見直しと基盤強化へ取り組みつつ、ソフトランディングしていく必要があると考えております。
一括交付金
政府の掲げる「地域主権戦略」の財政面での改革として、特定の補助金、いわゆる「ひも付き補助金」の一括交付金化が唱えられています。
これまでの「ひも付き補助金」が、国において使途を定めるものであり、結果、中央による地方支配の根源となっていたことに対し、一括交付金は、地方に裁量権を持たせることで「地域のことは地域に住む住民が決める」という「地域主権」を確立するものとなっております。 平成23年度に都道府県に導入され、平成24年度には政令指定都市への導入も図られますが、今後市町村に配分される交付金の総額や配分額の制度設計については、いまだ不透明な状況にあり、安易に国の歳出削減のための制度とならぬよう、地方財政の安定的運営を確証する基準に基づく配分を強く求めて参ります。
臨時財政対策債の所感
平成17年度をピークに、本市の一般会計の市債残高は着実に減少していますが、今後数年間は足踏み状態が続くこととなります。
これは地方財政制度上の財源対策的性格を持つ地方債である「臨時財政対策債」の発行が大きく影響するもので、後年度の元利償還金が、全額地方交付税で措置されることを考えますと、実質的な市債残高は減少基調となります。
しかしながら、平成13年度から行われてきた地方交付税の「臨時財政対策債」への振替措置については、一面では市債の発行を地方へ委ねる「分権型」の側面を持つものですが、他面では、赤字地方債に依拠し、将来の地方交付税を先食いしていることに他ならず、将来の元利償還金に対する新たな財源確保がなされる必要があると考えております。
合併特例債の動向
本市では、新市建設計画の計画期間である平成26年度まで財源的に有利な「合併特例債」の発行が可能で、計画上は総額125億7,700万円の発行を見込んでおり、今年度までに約52億円、率にして約41パーセントの発行となります。
本市の財政力を鑑みますと、財源的に有利な条件の地方債とは言え、残り3年間で70億円以上の「合併特例債」の発行は現実的には不可能な数字であることは言うまでもありません。
しかしながら、これまで法的には「合併年度に引き続く10年間」において発行可能であった「合併特例債」も、「5年延長」となる見通しにあることから、今後、新市建設計画の期間延長を含めた議論を皆様としていく必要があるものと考えております。
今後の財政運営
こうした中、新年度予算については、市政執行方針で述べさせていただきましたが、将来に不安を残す要因を積極的に解消するものとしたところであります。
今後具体化する「社会保障と税の一体改革」による社会保障費の財源確保などは、必至の命題であり、本市においても、「少子高齢社会」の到来による扶助費の増加が財政運営に与える影響は、極めて深刻なものとなってきており、将来を見据えた財政の健全化は、これらの新たな課題の出現により、今後も大変厳しい予算編成となることが想定されます。
私としましては、新年度から5年間の財政運営の指針とします「石狩市中期財政運営の指針(財政規律ガイドライン)」で示す財政指標を遵守した財政運営に努め、引き続き市債発行額の枠を設定し、公債費の抑制を図るなど健全化に努め、道内の他都市と比較すると依然として高い「将来負担比率」をガイドライン最終年の平成28年度には、道内の平均値まで下げることを目標としたところであります。
財政再建計画5年間の成果は成果として、「隗より始めよ」のたとえにより、引き続き報酬の削減を提案させていただき、その意を示させていただきました。
議会の皆様にも政務調査費等の諸費についてもご協力を頂かなければなりません。
今、為すべきことを為し、出来る限り先送りしたくありません。
どうか、皆様のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、財政に係る所信といたします。