平成26年度市政執行方針
平成26年度市政執行方針
平成26年2月26日(水曜日)平成26年第1回石狩市議会定例会
平成26年第1回石狩市議会定例会にあたり、新年度の市政に臨む基本方針を申し上げます。
(はじめに)
新年度予算は、今市長任期最後の政策予算であり、政策目標に対する達成度等の評価を意識しつつ、また、将来への道筋をつなぐ、いわば、播種的な要素を含めた編成となっております。
わが国における景気は、本市の市税も数年ぶりで前年度を上回ることが予想されるように、数字の上では回復基調にはあるものの、生活実感としては、物価の上昇や国民負担の先行などにより、厳しさを増しているのが実態ではないかと思います。
また、地元中小企業・零細企業においては、原材料費の値上げ等による利幅の縮小など、アベノミクスの潮流はいまだ及んでいないものと見ております。今予算や、企業の大規模プロジェクト関連投資等による、経済の地元循環を一層促進して参りたいと考えております。
さらなる課題は、人口減少と、高齢化の顕在化であります。
本市の住民登録人口が、昨年12月、ついに6万人を割り込みました。昭和期は、 団塊世代を中心とした郊外戸建て志向の時代でありましたが、今日、郊外からの都心回帰現象は、札幌近郊の都市が直面している共通課題であり、本市にとっても人口減少の要因の一つとなっています。
また、合計特殊出生率は平成25年で1.13と、人口が自然増となる水準を大きく下回っております。伝統的社会の慣習崩壊や、価値観の多様性、情報化社会の到来などに起因するとはいえ、克服すべき事態として、対応を図って参らねばならないと考えております。もとより、子育て環境の充実、就業機会の拡充など、これまで進めてきた各般にわたる基本的施策を推し進めることは、極めて大切なことと認識しております。
このところ、全国市長会の場など、政府関係者とお会いする機会が増えており、そうした中、肌で感じたのは、景気浮揚や消費税引き上げ後の消費の落ち込みに対応するとした大型補正予算などの、歳出面に目は行きがちでありますが、国においても国家予算のプライマリーバランスの改善を目指すなかで、社会保障費の地方への一部転嫁、あるいは地方の固有財源を縮減するなど、随所に地方への負担の押しつけが事業費から経常費にまで及んでいることを危惧せざるを得ません。さらに懸念するのは、税制改正について大都市圏と地方の考え方に差が生じている状況にあることです。
こうした背景を受け、今後の本市の財政運営について、後ほど改めて申し上げたいと存じますが、その前に、まず新年度の行政執行にかかる基本的な考え方と主要な事業について申し上げます。
(手話文化が根ざすまちづくり)
「手話」を言語として認め合い、手話を使用する市民が暮らしやすい地域社会の実現を目指すため、4月から「手話に関する基本条例」が施行されます。「耳が聞こえない方」「耳が聞こえづらい方」を「障がい者」ではなく、「手話を使用する市民」と考え、「言語である手話を使って心豊かに暮らす」という新しい文化を創造する、地方からの先駆的な社会モデルとしての試みであると考えております。
この基本的考えは、障がい者や他の福祉施策全体に共通する理念であり、社会が変化することにより、理解が広まり、ろう者を避けるのではなく、「おはよう」「元気ですか」の声掛けが簡単な手話で自然に出てくるまちにしたいと考えております。
このための、新たな各種施策を展開して参りますが、近い将来には、障がいのある無しに関わらず、全ての市民による共生社会の構築を目指して参りたいと存じます。
(石狩湾新港地域におけるダイナミズムの展開)
今年、石狩湾新港は、国際貿易港として開港20周年の節目を迎えます。開港以降、市は港湾管理者と共に産業拠点、物流基地として、国際貿易港への発展に向けて取り組み、昨年の取り扱い貨物量は17.4%増の約473万トン、輸出入総額は30.7%増の約1,185億円で共に過去最高となりました。
物流拠点港としての新港とその後背地域の企業活動を理解していただくため、今年の夏に団体、企業、市民の皆さまの協力を頂きながら、各種記念事業を展開致します。また、石狩湾新港は、東南海地震等、本州が災害に見舞われた際の北海道の役割を示した「北海道バックアップ拠点構想」における重要拠点として位置づけられています。物資等の搬送にとどまらず、企業BCPの中で情報資産の保護は極めて重要であることから、データセンターのさらなる立地、ユーザーの誘致を図って参ります。
東日本大震災以降、エネルギー問題は深刻さを増しております。石狩湾新港地域においては、道内初のLNG輸入基地の始動に伴い、LNGを単に燃焼エネルギーとして消費するのみならず、新港地域の特性である多様なエネルギーソースと先端技術を活用し、エネルギー供給の効率化、需給バランスの最適化を図り、賢く「つくる、ためる、つかう」石狩版スマートコミュニティの実現を目指して参ります。
また、今後直面するであろう電力システム改革は、発送電分離を始め、規制緩和などを目指したものであり、改革の第一段階となる「電気事業法の一部を改正する法律」が昨年成立したところであります。電力供給のパラダイムシフトとして、これらは社会的合意形成とイノベーションの両輪により推し進める必要があると考えております。本市でも、国による超電導直流送電の実証実験の取組が昨年より進められておりますが、新たなエネルギーシステムの構築に向け、積極的参加と推進に努力して参ります。これらにより、企業の誘致のみならず既設産業の振興、ひいては本市の有為な成長戦略につながるものと考えております。
(防災先進都市に向けた取組)
地震や津波などの大規模災害が発生した際、自治体は災害応急対策や災害復旧・復興活動の主体として重要な役割を担うことになる一方、災害時であっても行わなければならない通常業務を多く抱えています。応急対策や優先度の高い通常業務を災害発生直後から適切かつ円滑に実施するための「業務継続計画」、いわゆる、自治体BCPを新たに策定致します。
また、災害対策の強化として、刻々と変化する現場状況を的確に把握し、有効な対策を講じるため、ICTを活用した機動的な情報の収集と一元管理を図る防災情報システムを導入致します。
新港地区については、防災体制を強化するため、防災行政無線の設置や、新設する石狩湾新港支署の開署に併せ、石油コンビナート等特別防災区域の災害に対応する3点セットの最終機能である大型高所放水車の配備を図ります。
昨年、全戸を対象にお配りした「地区防災ガイド」は、地勢など地域特性を踏まえた実践的な計画となっており、これをもとに訓練を実施した地区では、明らかに防災意識が高まるという効果がみられており、引き続き地域が主体となった避難訓練の推進に取り組んで参ります。
以上の主要項目の他、いくつかの重要な事業や問題について申し上げます。
(健康に関心を持つまちづくり)
「人生にとって健康は目的ではない。しかし最初の条件である。」「人生論」の著者、武者小路実篤の言葉であります。
健康は幸せの一つとも言います。私ごとではありますが、このところ、幾度か入院等で市議会、市民の皆さまにご迷惑をかけており、私自身、健康の大切さを実感しております。健康を自ら得るため予防医療は大切なことであり、市としても、これまで各種検診等の導入を積極的に進めて参りました。
働く世代の女性を支援するため、新たに子宮頸がん及び乳がん検診の受診勧奨やクーポン券による検診費用助成を実施し、早期の発見につなげて参ります。また、検診の受診率が低い40歳を重点対象としたがん検診と特定健診を重点的に進めて参ります。
さらに、市民の救急車要請判断に対応するため、札幌市が中核となっている「#7119」番呼び出しの道央医療圏救急安心システム「救急安心センターさっぽろ」に参画し、適切で安心な医療の受診や相談機能の充実を図って参ります。 また、健康施策を複合的に展開するため、市民プールは、所管を市民生活部から保健福祉部に変えることに致します。
スポーツ健康都市の拠点として総合体育館の建設については、特別財源や先進地における建設コストとの試算、情報収集などを行いその可能性について調査、研究を進めて参ります。
(教育行政について)
教育委員会制度の法改正に向けた議論が本格化しております。
言うまでもなく、教育はこれからの社会を担う子どもたちの成長の根幹をなすものであり、わが国の命運を左右すると言っても過言ではありません。改革案については様々な議論が展開されております。私たちは子どもの教育環境にとって最善の利益となる制度の構築を期待し、今後の動向について注視して参ります。
(高齢者が安心して暮らせるまちづくり)
高齢化等に伴う医療費の増大は社会問題化しており、このまま漫然と現行の医療制度を進めるなら結局は個人への負担増加に帰結することになります。健全な介護保険運営を図り、サービスを継続するための「高齢者保健福祉計画・第6期介護保険事業計画」を策定致します。
85歳以上の4人に1人が認知症と言われています。地域で支え合う仕組みづくりの検討を始め、特に懸案となっている財産管理や契約行為を本人に代わって適切に行うため、「成年後見センター業務」を委託し、市民後見人の養成や相談体制の強化に取り組みます。
(子育て施策について)
総務省の労働力調査によると、35歳から44歳までの女性のうち就業者と求職者が7割を超え、子育て期に働く女性が増え続けております。女性の就業促進は、イノベーションを求められるわが国の価値創造や女性の自立促進等の側面からも重要性を増しています。引き続き、待機児童ゼロを具体的な目標とした保育サービスや放課後児童対策をとり進めて参ります。
また、平成27年度から始まる子ども・子育て新制度に向けた「子ども・子育て支援事業計画」を策定し、子育てしやすい環境の充実を図って参ります。
(未来への希望があふれるまちづくり)
超高齢化や人口減少、住民ニーズの高度化・多様化など市を取り巻く環境は大きな変化を見せ、私たちは現在、人類史上未到の領域に足を踏み入れ、その緒に就く時代にいると言えます。本市のまちづくりの基本方針となる「第5期石狩市総合計画」の策定は、公共施設、福祉施設等の再点検、市民目線での調査結果を踏まえ、これまでの方向から大きな転換を図らねばなりません。相関にある財政計画と連携を図りながら、より実効性を高めて参りたいと存じます。
また、合併後8年を経過し、特に顕在化した浜益地区の人口減少と高齢化は深刻な問題であり、例えば不採算バス路線である札浜線の在り方について調査を行い、福祉計画とも連動を図りながら、今後の方向性を検討して参りたいと考えています。
幸い、本市は世界をひきつける地域資源を有する石狩湾新港地域や、在来の産業、海と森林等の自然環境、縄文時代から続く歴史や漁業文化といった市政運営を下支えする多様な素地があります。
これらの特性を活かし、財政、投資のバランスを図った総合計画の策定をとり進めて参ります。
(花川北地区の再生へ向けた取組)
これまで、花川北地区はその閑静な住環境を守るため一戸建て住宅以外の建物の建築制限を行って参りました。今後は若年層を受け入れるための魅力的な環境づくりや、高齢社会を支える地域商店、医療、福祉、介護施設を含めた土地利用を進めるため、規制を大幅に緩和するなど、花川北地区の再生へ向けた取組を、市民参加のもと、さらにとり進めて参ります。
(厚田区と浜益区の地域活性化)
平成17年の合併後、厚田区及び浜益区では住民主体となった「地域協議会」を中心にまちづくりが進められてきました。厚田区では、NPO活動によるライフサポート、郷土資料室のリニューアルに併せた地域史の展示や水彩画展の開催、市民との協働による森づくり、浜益区では「コミュニティカフェ ガル」や、地域資源を活かした特産品の開発などの取組を進めております。
また、こうした地域主体の取組の維持、強化を図るため、国の制度である「地域おこし協力隊」を導入し、さらなる地域資源の掘り起こしや地域活動の推進を図って参ります。
両区には多くの人を魅了する資源が数多くありますが、これまではそれらを施策として活用しきれていなかった面もありました。
濃昼山道でのトレッキングやトレイルランニング等の、各種新たなスポーツの高まりにも注視しながら、厚田区内に予定している複合施設建設の在り方について、昨年設置した「複合施設建設構想策定委員会」との連携を図りながら、具体化に向け、調査、研究を一層深めて参ります。
(環境にやさしいまちづくり)
新年度新たに、廃菌床ペレットを活用したエネルギーの地産地消と授産施設における雇用創出を図るため、木質バイオマス推進事業を厚田区において実施し、新たな地域循環モデルを確立するためさらなる調査、研究を進めて参ります。
本市は一定程度の風が継続的に発生する地域であり、市域では複数の風力発電が計画されております。
風力は、再生可能エネルギーとしての大きな可能性を有するエネルギーソースの一つであり、本市において貴重な地域の特性、資源と認識しております。しかし、その一方で「生活環境や自然環境への影響」を懸念される声があることも承知しております。推進にあたりましては環境アセスメントや住民説明等は極めて大切なことと認識した上で、導入を図って参りたいと存じます。
(わかりやすい市役所の体制づくりについて)
市役所職員数の適正化、時間外勤務の縮減に引き続き取り組むと同時に、地方分権、「社会保障と税の一体改革」を始めとする各種制度改革に伴う事務量の増加に対応するため、市役所組織を改編し簡素で明確な指揮命令系統にするとともに、実務担当層の厚みの維持を図ります。
(おわりに)
日本は戦後の復興と経済成長、人口の急増を背景に国民皆保険制度等、世界に誇るべき社会保障制度を確立してきましたが、現在は人口減少や少子高齢化の進展など、経済社会や人口構造のめまぐるしい変化に直面しております。
これまで企業や、家族が支えていた社会保障制度の転換期をいやが応でも迎えることになります。私たちは将来の福祉社会における受益と負担の在り方について、自らの問題であることを社会全体で認識、共有する時機にきております。
市と致しましては、社会保障制度の基本的な事業に係る財源は、「国において責任を果たすべきものである」との考えを示していく一方、市民ニーズを踏まえ、人口や財源等を見据え、場合によっては痛みを伴う改革の必要性を丁寧に説明し、持続可能で質の高い社会保障制度の確立を目指して参ります。
先の第4回市議会定例会で制定された「手話に関する基本条例」は、様々な方のご尽力、ご助言を賜り新年度スタートすることになります。
本条例の施行は、言語を通じた、全ての市民による共生社会への歩み出しでもあります。
障がいや、年齢、性別や職業に関わらず、おのおのが自分の今いる立場で、「やる時はやる」、「やることはやる」、「やれるだけやる」ことをしていかなければ、これからの人口減少下の時代を乗り切ることは非常に難しいと感じております。
蓄積した市民力を市政に反映させ、さらなる発展を目指し、市と市民が一丸となった取組を進めて参らねばなりません。
市民の皆さまの社会参加をお願い致します。
新年度においてはこれまでの市長在任15年で学んだことを活かし、将来のあるべき姿を見定めた政策展開に全力で傾注して参りたいと存じます。
市民の皆さま並びに市議会議員の皆さまのご理解とご協力を心からお願い申し上げ、平成26年度の市政執行方針と致します。
今後の財政運営における課題
今後の財政運営における課題について申し上げます。(これまでの取り組み)
平成11年の市長就任当時、国と地方の財政環境は、共に多額の借金を抱え深刻な財政の硬直化により、もはや従来の発想では切り抜けられないほど危機的な財政悪化を招いていました。
そこで、この難局を乗り越えるべく平成14年度からは3カ年にわたり「財政構造改革」を進め、聖域なき行財政改革に取り組み一定の成果を上げましたが、その成果を打ち消すかの如く平成16年度から三位一体改革の名のもとに地方交付税等が大幅に削減されたことに加え、市債償還がピークを迎えるなどの悪条件が重なり収支バランスを大きく崩しました。
平成19年度から5年間は、新たに「財政再建計画」を策定し、改めて内部管理経費の削減や、職員数の削減などの市役所改革を断行することで、危機的な状況を脱し、各種財政指標は明らかに改善してきました。
これは、平成17年10月の合併により新生「石狩市」が誕生し、地方交付税や地方債などにおいて国からの合併支援を受け、その効果を得る一方で、市民の皆様にもご理解とご協力を頂き成し遂げられたものです。
この5年間は基金からの繰入に頼ることなく収支均衡を保った運営を行いつつ、長引く経済情勢の悪化に対し、時節を捉え平成21年度には述べ6回、総額29億円、平成22年度には10回で19億円、平成23年度には7回で10億円、平成24年度には6回で15億円という大型の補正予算を講じるなど財政の健全化と並行して地域経済の活性化にも投資を行うという相反する難しい政策運営の舵取りを行ってきました。
しかしながら、改善基調に転じた本市の財政状況も少子高齢化に伴う人口構造の変化や地方交付税の合併算定替の終了、さらには国家財政の歳出抑制のために地方交付税の特例措置の解消方針が示されるなど、将来の地方財政にとっては決して楽観できない状況であり、自立的なまちづくりを目指すための健全な財政基盤の構築に向けた一層の取り組み強化が必要であります。
(地方交付税の動向)
合併した市町村では、合併した年度に引き続く10年間は、合併前の旧市町村ごとに計算した普通交付税の合計額が交付額となる合併算定替が特例として認められていますが、10年を経過すると交付税は5年間の激変緩和措置を経ながら15年目を最後に特例措置が終了します。
本市では、平成25年度普通交付税におけるこの「合併算定替」は約13億円となっていますが、これが平成28年度より段階的に縮減され、平成33年度には完全に無くなることとなれば、その間で失われる財源総額は約45億円となります。総務省では合併市町村の行政区域の広域化を踏まえ適切な財政措置を講じるとして、交付税制度の見直しを図る方向にありますが、これにより仮に減額分の半分程度の措置がなされたとしてもこの期間だけで20億円を超える財源が失われることとなります。
また、昨年8月に閣議決定された中期財政計画では、「骨太方針」に基づき、国際公約にもなっている2020年度のプライマリーバランスの黒字化という目標達成に向け、地方財政については国の取り組みと歩調を合わせた歳出削減を図るべく、地方交付税を含めたリーマンショック後の緊急対応で増大した経費の平時モードへの切り替えについて言及するなど、地方財政制度における聖域なき見直しを図ることとしており、今後の国の動向が危惧されるところです。
(土地開発公社の状況)
土地開発公社は、「公有地の拡大の推進に関する法律」により、都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため、公有地の先行取得や独自事業として住宅地の造成・分譲を行い、市と一体となって本市のまちづくりの一翼を担ってきました。公社設立当時の人口は約1万3,000人でしたが、石狩湾新港の開発や大規模宅地造成で急速に発展する中、小中学校用地の確保などその必要性が迫られていた時期でありました。
しかしながら、公社保有地は、八幡ニュータウンの分譲の長期化や、市庁舎を含む公共施設などの建設候補地として購入した、志美地区や市役所周辺の中心核形成地区など、市街地発展動向の見込が外れたことや、市財政状況の悪化から事業計画の見直しなどにより処分が進まず、また、民間の設備投資意欲の減退なども相まって、いわゆる塩漬けとなってしまいました。
このため、平成9年度から2度にわたる「再建計画」を策定、更には解散に向け平成20年度から39年度までの20年間にわたる「経営健全化計画」を策定し、欠損金を穴埋めする補助金の投入や負債全額の無利子貸付を行うなど、バブル崩壊に伴う資産価値の劣化と保有期間の長期化による金利負担を軽減するための対策に加えて、計画的に市が保有地を活用して事業化を図ることで公社問題の解決に向けた取り組みを進めています。
平成19年度末には61億円の短期借入金を有し、地価下落が続く中、当時推定で約36億円という多額の含み損を抱えていましたが、その中でも最も大きな負担となっていた志美地区の用地処分を今年度までに終え、この間簿価で30億円の用地処分と2億円の補助金投入を実施したことで、短期借入金は今年度末で28億円と平成19年度に比べ半分以下の水準まで縮減することができました。
用地処分においては、合併特例債を活用したことで本市の財務体質の改善に大きく寄与した事や、「こども未来館」や「石狩消防署石狩湾新港支署」の建設により、市民生活に直結する課題解決も同時に行うことができました。
しかしながら、民間の土地需要に明るい兆しは戻らず、依然として地価の下落は続いていることから、公社の経営状況は改善基調にあるとは言え、債務超過である状況は変わらず、この解消に向け今後は市役所周辺の中心核地区の処理に力を注いでいかなくてはならないと考えております。
(ストックマネジメント)
本市は、1970年代以降札幌市のベットタウンとして急激な人口増加と急速な都市化が進みました。そのため、高度経済成長期には個性豊かで魅力あるまちづくりを推進するため、庁舎、学校、福祉施設等の公共施設の整備が集中してきました。まちの発展とともに急速に整備されたこれらの施設は、現在20年から30年を経過し一斉に老朽化し、今後の維持補修・改修などによる多額の費用確保が大きな課題となっています。このことは、少子高齢化という人口構造の変化も加わり公共施設の在り方に大きな影響を与え全国的にも同様な問題が顕在化しています。本市においては、今年度全ての学校耐震化を終え、道路・橋りょうの長寿命化対策を講じているところですが、国の財政支援がなくてはそのスピードも鈍化します。
出来得る限り公共施設をこれまでどおり維持し、充実させたいと考えることは自然なことかもしれませんが、今後人口の大きな増加が見込めない本市において、公共施設のみに集中して財源を確保していく事は現実的に困難であることは想像に難くありません。さらに、道路、橋りょう、上下水道などのインフラを対象にした公共施設の更新費用を加味すると一層深刻な問題となります。当然、施設の複合化、長寿命化、統廃合など多角的な視点を持ち、正面から課題を解決するため取り組んでまいります。
新年度には新たに総合的な施設管理計画の策定に取り組み、真に必要な公共施設・公共サービスの量的・質的な確保等を図っていきます。
以上のように地方財政運営は大きな転換期を迎えており、漫然と従来型の価値観をもって執行するならば、将来に禍根を残しかねません。市長に就任して以来、市民サービスの拡充や増加し続ける社会保障費への対応が迫られる一方で、財政の健全化という苦難を市長として一身に引き継ぎ、なお15年間力強く走り続けることができたのも、市民の皆様や議員各位の励ましと理解があったからこそであり、この苦を丸ごと自分の事とした石狩市民の勇気と決断に改めて感謝を申し上げるとともに、今後より一層のご理解とご協力を頂きますようお願い申し上げ、財政運営の課題について終わりといたします。