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市長所信表明(平成27年6月10日)

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年6月26日更新

市長所信表明

平成27年6月10日(水曜日)
平成27年第2回石狩市議会定例会

はじめに

 平成27年第2回石狩市議会定例会の開会にあたり、5期目の市政に係る所信を申し上げます。

 昨年12月、内閣府は、各市町村の農業出荷額や製造品出荷額、従業者数などのデータを取りまとめ昭和50年を基準とした、総合的な経済力の伸びを示す偏差値を算出し公表致しました。本市は平成22年における偏差値が北海道で最も高く、全国では第27位となりました。(H27.4.22現在)

 特に、企業の進出による製造品出荷額の伸びが大きく、昭和50年で約65億円でしたが平成22年は1,072億円と約16倍となり、平成26年の貿易額においては平成6年の開港指定以降最高額を記録し、道内3位でありました。

 また、事業所数につきましても昭和50年777社だったものが、平成21年には2,427社と約3倍に伸びておりますことから、石狩市がこの約35年間で大きな発展を遂げてきたことが分かります。

 人口が右肩上がりだった時代に選択してきた施策は確実に本市を成長させてくれましたが、人口は昨年6万人を割り込み、今後も減少傾向が続くものと推計されておりますことは極めて大きな政策課題であると考えております。

 今日、日本のもつ課題は人口、少子高齢化、社会保障、教育など国の根幹をなすものばかりであり、広範、多層的かつ複合的であります。これらの課題は国のみで解決し得るとは言いがたく、国と地方公共団体、さらに、地域、企業、非営利団体、市民など各層各人において、具体的かつ戦略的に対応していかなければ、私たちが理想とする未来を手に入れることはできないと考えております。

 次にお示しする施策大綱を柱に、石狩市のまちの強みを活かし、市民が安心して生活できる、自立性の高いまちづくりを目指して参りたいと存じます。 

施策の大綱

 それでは、市民の皆さんにお約束をさせていただいた、主要施策としての3つのテーマに基づき、所信を申し上げます。

 まず1つめのテーマとして「社会保障制度と財政健全化に向けた取り組み」についてであります。

 内閣府が示した、中長期における経済財政の試算では、2020年度の基礎的財政収支は、今後の経済成長率を高く見積もった経済再生ケースでも、約9兆円の赤字になると見込んでおります。このことからも、歳出削減と併せて給付と負担のバランスを図りながら、社会保障費をいかに抑制していくかは、超高齢化、人口減少社会に突入したわが国において喫緊の課題であり、その重責は、前年度末において6億5,000万円という国民健康保険の累積赤字を抱える本市においてもまた同様の問題として受け止めざるを得ません。 

こうした中、平成30年度から国民健康保険の財政運営を都道府県に移行し、市町村との共同運営体制とすることを柱とした、医療保険制度改革の関連法案が国会において可決されました。制度設計の詳細はまだこれからとなりますが、都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業確保等の国民健康保険運営について中心的な役割を担うことで、制度の安定化が期待されるだけに、北海道と連携を図り、本市の役割を果たしながら、この問題に取り組んで参ります。

 また、介護保険制度については、本年度から介護保険の月額保険料が引き上げとなったほか、特別養護老人ホームなどの入所要件が原則、要介護3以上に引き上げられるなど、大きく制度が変わりました。今後、団塊の世代の要支援・要介護が急増すると見込まれており、介護保険計画に基づき、引き続き介護サービスの質と量の確保に努めて参ります。膨張し続ける社会保障費の負担増を直接的に市民に求める前に、重度化を防ぐための予防を地域レベルできめ細かく進めていくなど、基礎自治体としてやるべき取り組みを積極的に行って参ります。

 働き盛り世代からの健康づくりの重要性が高まる中、政府が金融政策、財政政策に続く“第3の矢”として発表した「日本再興戦略」では「国民の健康寿命の延伸」を重要な柱として掲げました。この中で、予防・健康管理の推進に関する新たな仕組みづくりとして、医療保険者における健康保険レセプト(診療報酬明細書)や健診情報等のデータ分析に基づき加入者の健康保持・増進を図るデータヘルス計画の実施が求められております。

 本市においても、保険者として「国保データヘルス推進事業」を取り進め、データヘルス事業の効果を最大限に引き出すために、現在、約20%である特定健診受診率の、さらなる向上に向け取り組んで参りたいと存じます。

 こうした予防医療に力点を置き、患者に至らない「未病者」が発症することや重症化することを防ぐことで、医療費の適正化を図るとともに、「国保経営健全化計画」の各施策の確実な実行により、平成31年度までに国民健康保険の累積赤字額約2億8,000万円の圧縮を図って参ります。

 また、高齢化社会に対応する取り組みに関しましては、これまで地域を中心として行ってきた健康づくりに関する事業をさらに充実させるとともに、地域の自主的な活動を積極的に支援することにより、高齢者が経験と知識を活かして活躍できるまちづくりを進め、充実した健康長寿社会の実現に向けた取り組みを行って参ります。

 昨年4月からスタートしました「石狩市手話に関する基本条例」は、聞こえる人がこれまで意識してこなかった「音の無い世界」に踏み込む大きなきっかけとなり、地域での障がいに対する理解や関心の高さは、心のバリアーを無くすことができるということを、多くの人が実感することができました。引き続き、社会の意識や仕組みを変えていく取り組みを継続し、近い将来、障がいのある、なしに関わらず、誰もが心豊かに安心して暮らせる共生社会の実現に向けてより一層の努力を行って参ります。

 次に「財政健全化に向けた取り組み」について申し上げます。

 平成19年度からスタートした「財政再建計画」では徹底した行財政改革に取り組み、その後の「財政規律ガイドライン」においても、これまで一貫してその姿勢を継続しつつ財政基盤の再構築に努めてきた結果、ひとつの成果として着実に現れてきていると感じております。

 最大の懸案でありました「土地開発公社」の問題につきましては、「石狩市土地開発公社経営健全化計画」に基づき、防災や市民サービスの向上を目的とした事業を最大限実施し、併せて国の「第3セクター等改革推進債(所謂「3セク債」)」を活用することにより、解散時期を11年前倒し、平成28年度とする決断をし、解散に向け大きく前進できたことで、将来世代の負担軽減と財政健全化に一定の成果を成し遂げることができました。

 しかしながら、今後、人口減少や地方交付税の見直し、さらには合併による特例措置の縮減など、将来の地方財政にとって楽観できない状況でありますことから、攻めるべきところは攻め、守るべきところは守り、「財政規律ガイドライン」に則しながら収支バランスを重視した市政運営を行って参ります。もとより、先人が私たちに発展の可能性を遺してくれたように、私たち世代も将来への投資、人づくりを怠ってはならないと考えております。

 もうひとつ懸念される問題は公共施設・インフラ施設の老朽化であります。

 昭和30年代後半から開発された都市施設の約半数が、既に完成後30年以上を経過し、老朽化が進んでおります。現下の厳しい財政状況、さらには一層厳しさを増すであろう地方財政環境を鑑みるとすべての施設を維持・更新することは困難な状況にあります。

 このため、本市における、施設の適切な規模とあり方を検討するとともに、広域的な活用を進めるなど、公共施設等のマネジメントを徹底することにより、公共施設等の機能を維持しつつ、可能な限り次世代に負担を残さないよう「公共施設等総合管理計画」に基づき、効率的・効果的な公共施設等の最適な配置を検討して参ります。

 上・下水道事業等の場合、現在の施設が人口減少したからといって、すぐに施設規模を縮小することはできず、基本的にはその時の利用者によって維持することになります。運営コストの削減や人口に見合ったダウンサイジング等は当然のこととして、利用者・利用水減少の構造の中で長期的視点に立った、負担のあり方についての議論は避けられないと考えております。

 今後も引き続き給付と負担に関する闊達な議論を重ね、持続可能な行政サービスの提供を心がけたいと存じます。

 2つめのテーマの「今後の成長戦略」についてであります。

 いよいよ石狩湾新港地域で開始される「超電導直流送電実証実験」は、世界最長、最高性能レベルの超電導直流送電システムを構築し、データセンターへ実運用されることから、海外研究者も参加するものと承知しており、石狩発のイノベーションとして、全世界にアピールされるものと考えております。

 また、「石狩スマートエネルギー構想(Isec)研究会」等、各プロジェクトは本市のみならず北海道を牽引する可能性を秘めたプロジェクトと認識しております。

 さらに現在、石狩湾新港で計画されております洋上風力発電についてですが、東日本大震災以降、あらためて顕在化した、日本の脆弱なエネルギー供給体制にあって、多様なエネルギーソースや新港地域の潜在能力を活かし、石狩モデルのスマートエネルギーの創造を目指す本市において、風力発電は重要な要素のひとつと認識しております。引き続き生活環境や自然環境への影響を考慮しつつ前向きに取り組んで参りたいと存じます。

 また、石狩湾新港では韓国東部の東海(トンヘ)、ロシア・ウラジオストクと石狩湾新港を結ぶ、本道初の本格的定期国際貨物航路開設に向けた計画があります。輸送には生鮮食品の直接輸送が可能となるRoro船が就航することとなり、これまでのコンテナ船と併せ物流のスピードアップと複合性が図られ北海道における国際物流の、新時代に向けた拠点としての機能を石狩湾新港が担うこととなり、新港後背地域や企業の安定した成長に結び付けて参りたいと存じます。

 次に、厚田区から浜益区に及ぶ「地域の拠点」と「道の駅」についてでありますが、厚田区における複合施設構想策定委員会において2年余議論してきた厚田複合施設の建設構想が、国で進める地方創生の拠点「道の駅」を併せ持つモデル事例として、本年1月30日に国土交通省より重点「道の駅」として選定されました。

 厚田区が目指す将来の姿「近説遠来」は孔子の言葉で「地域内の人が喜んで暮らしていると、おのずと地域外からも多くの人が訪れ、にぎわい、活気あるまちになる」という意味で、プロジェクトのコンセプトとしたと聞いております。厚田区地域協議会が中心となり、多くの地域住民の議論の積み重ねから見いだされてきたものであり、浜益区との連携がさらに必要となることは申し上げるまでもありません。

 道の駅構想にあたっては、両区の独自性を活かす「地域の拠点づくり」を基本として、厚田区や浜益区の資源をこれまで以上に活用し、両区の自然を活かしたサイクリングやトレイルランニング等のスポーツ体験型観光や、地域の再生につながる拠点としての整備を図ると同時に、地域の特性を発信しインバウンド観光としての魅力も兼ね備える拠点整備を取り進め、両区はもとよりオール石狩として展開できる仕組みの構築を目指して参りたいと存じます。

 その他、地域間伐材を原料とする、キノコ菌床を栽培後にペレット化し、地域へエネルギー資源として供給する「木質バイオマス地域循環事業」や、「厚田ふるさとの森」予定地の風力発電所から得られる、売電益の一部を基金化して森づくり等環境施策に活用する取り組みや、地域独自の技術を活かした農業生産法人による、生薬の研究栽培など、主に地域資源を活用した取り組みが進められております。

 これら本市の特色ある取り組みを、本年度新たにスタートする「第5期総合計画」や新たに策定する「地方版総合戦略」に基づき、さらなるまちの強みとするため大胆かつ戦略的な取り組みを引き続き行って参りたいと存じます。

 次に、3つめのテーマの「教育と子育て環境の充実」についてであります。

 本年度、「教育委員会」および「子ども・子育て支援」に関しての新制度がスタート致しました。「教育委員会新制度」では、首長と教育委員会との議論が活発に行われるように、総合教育会議を設置致しました。

 この会議では、人口減少や少子化社会において、子どもたちが心身ともに健やかに成長できるための教育環境や、グローバル社会や情報化社会への対応など、教育における課題等が協議・調整されます。さらに、総合教育会議の下、教育委員会との意思疎通を図りながら、こうした教育における諸課題やあるべき姿を共有し、今後の教育における目標や方針を示す大綱という形で策定して参ります。

 「子ども・子育て支援新制度」においては、保護者の就労形態やニーズに応じて保育・教育の選択の幅が広がることにより、潜在化している女性の活力を発揮できる機会が広がるだけでなく、女性の社会参画と併せて社会における生産性の向上につながることは大変意義のあることと認識しております。

 言うまでもなく幼児教育は家庭教育とともに義務教育の基礎を形成する大切なものであり、必要とする全家庭のニーズに応えられるよう、待機児童の解消と併せて保育と幼児教育の一体的な提供を行って参ります。さらに、「小1の壁」の解消に努めるとともに子どもの安心・安全と居場所づくりを提供できるよう「放課後子ども総合プラン」の推進や放課後児童対策の充実を図って参ります。

 大家族が珍しくなかった頃は、誰かが子育てする姿を間近で見ながら親も子どもも育ち、周りの大人たちは危ないことをする子どもを見つければ、自分の知らない子であっても叱るというような、地域全体で子育てをしていくという空気がありましたが、今は核家族化が進み誰かの子育てを見ながら育つという経験をしていません。

 今、子育てにおいて失われつつある地域力の下支えをするために、行政の力を発揮すべきと考えておりますが、まちの宝となる子どもを生み育てることを地域社会全体で支え、安心して子育てできる環境づくりを進めて参ります。

 また住宅施策に関しましては、昨年、樽川地区の一部の分譲が開始されたことに伴い、当該地区の年少人口と生産人口がこの1年で約5%伸びております。雇用の場や良好な住環境の創出等不朽の施策が人口流入を促しているものと考えておりますことから、引き続き選ばれるまちづくりを取り進めて参りたいと存じます。 防災対策に関しましては、市民の防災に対する関心の高まりや、本年度の公表が見込まれる津波浸水想定の見直しなど新たな知見の集積により、今後も次々とリスクや課題が顕在化していくことが予想されます。市民の生命と身体を守るため、本市にとっての優先順位を的確に見極め、ハード・ソフト両面で対策を進めて参ります。
 

むすびに 

 私は、47年間の行政経験の中で、財政再建団体に転落する直前の財政状況や、度々襲う経済不況による、国の一方的な交付税の削減など、抗しきれない時代の流れに直面して参りました。

 負の遺産もありました。合併という未来への可能性にも挑んで参りました。石狩湾新港は大きな釣り堀と揶揄され、水道問題では多くの理解をいただきながらも、その本質は伝えきれておりません。問題は次から次へと山崩れで、瓦礫が落ちるように蓄積され、時ばかりが進み課題はさらに深刻化しております。

 特に昨年5月「日本創成会議」分科会が公表した、いわゆる「消滅自治体リスト」はかなり衝撃的なものとして社会に受け止められました。

 しかしながら、私はこれからの人口減少に向かっていく時代を、必ずしも悲観的なものとして捉えていないのは、これまで市民協働によるまちづくりを進めてきた本市にとって、人口が減るとまちが疲弊するという図式は本市には当てはまらないと確信しているからです。人口増が大きく期待できなくなった今日、すべての市民がもてる力を出し合い地域を支えていく協働力こそが持続可能で豊かな暮らしを実現させるために必要なことと考えております。

 社会経済構造が大きく変革している今こそ、現在から予測し得る20年30年後の本市のまちづくりを想定し、パラダイムシフトしている分野と社会や経済に与える影響は何かを明らかにした上で、過去の延長線上に将来のビジョンを描くのではなく、未来からのバックキャスティング手法で今後の行うべき政策を検討するとともに、これまでのまちづくりで培った協働力で、皆さまが成長を実感できる「将来」を次の世代へと確実につなぐ必要があります。

 石狩のまちを描く「夢」を形に、可能性を「現実」に、ふるさとのすばらしさを「石狩っ子」の誇りとしていく、そのような視点のまちづくりを皆さんとさらに進めて参ります。 「石狩のはるかなる発展」を紡いでいくために、議員各位を始め市民の皆さまのご理解とご協力を心からお願い申し上げまして所信表明と致します。