平成21年度教育行政執行方針
平成21年度教育行政執行方針
平成21年度 教育行政執行方針平成21年2月26日(木曜日)
平成21年第1回石狩市議会定例会
平成21年第1回石狩市議会定例会の開会にあたり、新年度の教育行政の基本的な考え方と施策の大要を申し上げます。
はじめに(教育をめぐる現状)
平成20年度、ノーベル賞を一度に4人の科学者が受賞するという快挙は、日本人の失われつつある自信と誇りに大いなる刺激を与えるものでありました。
一方、教育をめぐる社会状況は少子高齢化の到来、豊かさを誇った産業界には赤信号が灯り、IT技術の進展とそれに逆行する人間関係の希薄化など、先行き不透明で混沌とした状況にあります。
また、規範意識の希薄化など家庭や地域の教育力や困難さに果敢に挑戦する意識などの低下、さらに子どもたちに目線をうつすなら、各種調査などの結果から、学ぶ意欲や学力、体力の低下、問題行動の深刻化など多くの面で課題が指摘されています。
本市においても同様に、多くのひずみや課題が山積しており、このような時こそ、さらに、「自立的な市民力」と「行政」が一体となり、さまざまな課題に果敢に挑戦することによって、石狩の教育が子どもたちや市民の皆さんにとって、より素晴らしい学びの環境を創造していけるものと確信しています。したがって、従来の枠組みに捉われることなく、ふるさと石狩の豊かな資源を活かし、学びあいながら、主体的・創造的にまちづくりに参画する「市民力」を身につけた「人育ち」を推進するための、「あい風の教育(地域教育)」を基本目標とし、各種施策を展開してまいります。
こうした考えの下、平成21年度の重点施策として次の3点を掲げ取り組んでまいります。
第1の重点 「未来を切り拓く確かな歩み」を進めるプランづくり
本市の教育プランは、まちぐるみで学ぶ心を育て、人を育てていこうとする「地域教育」を柱として策定しています。
その成果は、「協働」や「地域価値の創出」などの取り組みにより、自ら積極的に活動する「自立的な市民力」として着実な成果を上げております。この成果を次なるステップとして、これまでの経験や教訓を踏まえながら、教育基本法の理念の下、中・長期的な計画として、「新教育プラン」を策定してまいります。
第2の重点 果敢に挑む学校教育の創造
急激な社会経済情勢の変化の中で、子どもたちが、夢と希望にあふれ、力強く生きていくための、「知・徳・体」のバランスに富んだ能力を育んでいくことが大切であります。そのためには知的好奇心や学ぶ意欲の向上、豊かな心と健やかな体など、子どもが安心して学べる環境づくりに努め、さらに、一人ひとりを見守り、一人ひとりの力を育むことができる高い教育力を持つ教員の育成を図り、「学校力」を高め、家庭、地域と連携し「果敢に挑む学校教育の創造」を目指してまいります。
信頼に応える魅力ある学校づくりの推進と教職員の育成
各学校では、教職員が自らの使命を自覚し、信頼される学校づくりを進めるため、「学校評価」に加え、「外部評価」や「学校支援推進員」との連携のもとに、学校改善に努めてきたところであります。
さらに、学校教育の質的な向上を図るため、学校が自ら学校関係者評価委員を軸に地域と共に協働体制をつくりあげるほか、校長のリーダーシップの下に、より一丸となって前進する学校づくりを支援してまいります。
また、学校の組織の活性化や教職員の資質向上を図るため、「学校職員評価制度の導入」、「サマーセミナーの充実」、「自主的な研究団体への支援」を図るほか、幼稚園から中学校などで構成する「連携教育推進会議」をさらに充実させ、生活習慣や学習習慣などの改善に繋げられる効果的な連携となるよう、積極的に支援を行ってまいります。
確かな学力を育み、個性や能力を伸ばす教育
基礎・基本に裏付けられた「確かな学力」の定着が、学校の最重要課題と捉えており、市独自の施策を展開し、主体的、創造的な教育環境の整備を進めて行くことが必要であります。
そのためには、各種調査結果の検証をもとに、指導体制や指導方法の工夫・改善、基礎学力定着に向けたSAT、スーパーSATの活用や昨年設置した地域ぐるみで子どもを育てる「学校支援地域本部事業」の充実を図るなど、学校が必要とする支援を進めてまいります。
また、全国学力学習状況調査等の結果から、特に、「読解力」等に課題があり、全ての学習の基礎となる言語活動を充実させるとともに、個に応じたきめ細かな学習指導の強化に努めてまいります。
さらに、学習指導要領の改訂に伴う小学校外国語活動を先行実施するため、本市独自の取り組みとなる「小学校英語サポート事業」を実施し、外国語の発音や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力を伸ばす支援を行ってまいります。
豊かな心と健やかな体を育む教育
近年、子どもたちの社会性の低下、体力・運動能力の低下、食習慣の乱れなどが指摘されており、成長段階においてボランティア活動や様々な体験活動を学習に取り入れていくことが極めて大切であります。そのため、交流体験学習「パートナースクール」の充実や、ボランティア活動、職業体験学習など、地域の協力を得ながら積極的に取り進めてまいります。
また、昨年、国が実施した「児童生徒の体力・運動能力」の調査結果を踏まえ、体育の授業の改善や計画的な体力づくりの推進に取り組み、基礎的な体力・運動能力の向上を図ってまいります。
食育の推進においては、「いしかり版食事バランスガイド」と「運動指針」を活用し、正しい食事の在り方や望ましい食習慣を身につけさせるため、子どもたちや家庭への意識啓発に取り組むとともに、(仮称)石狩市食育推進委員会を設置し、学校、家庭、地域などが連携して効果的な食生活が実践できるよう取り進めてまいります。
情操教育の分野においては、全小学一年生を対象に情操教育スタートプログラム「おしゃべランド」を引き続き実施するとともに、本年度は、中学一年生向けのプログラムの開発に取り組んでまいります。
教育的ニーズに応じた適切な教育の推進
いじめや不登校の問題には、学習意欲の不足なども密接に関連しあうものが多く、これまでもその改善や解消に努めてきたところでありますが、より積極的な対応を行うため、(仮称)「スクール&コミュニティ・サポートセンター(石狩市教育支援センター)」の開設に向けた体制整備を図ってまいります。
このセンターでは、既設の教育支援教室「ふらっとくらぶ」の機能を拡充するとともに、「いじめ・不登校対策」、「インターネットサイト対策」、「教育支援対策」の3本柱を掲げ、臨床心理士や社会福祉士などの専門的な知見を得ながら、さまざまな課題を抱えている子どもや保護者、さらには学校に対し総合的な支援を行います。
また、特別支援教育につきましては、特別支援教育支援員を新たに4名増員するとともに、ティーチングアシスタント、SATやスーパーSATなど本市独自の人的な支援により一層の充実を図ってまいります。
学校における良好な学習環境の充実
学校における良好な学習環境は、学習活動を進める基盤として大変重要であります。そのため、学校における情報通信基盤を継続的に整備し、教職員及び子どもたちの情報リテラシーの向上を目指した研修等を通じ、教職員の指導力を向上させ、教科指導等におけるIT活用を促進します。
また、本を読むことは言葉を育て、生きる力を育むために欠くことのできない重要な営みであります。そのため、統合校(双葉小学校)を学校図書館のモデル校として市内の学校では初めてとなる「学校図書館司書」の配置と併せ「市民図書館とのオンライン化」などの環境整備を行なうとともに、保護者やボランティアなど、地域との協働による「新しい学校図書館運営」の体制づくりに向けた準備を進めてまいります。
さらに、安心・安全な学校環境及び災害時における安全を確保するため、3校の耐震診断調査と平成22年度開校を目指す統合校(双葉小学校)の大規模改修事業を進め学校施設の充実に努めてまいります。
第3の重点 活気と潤いのある「地域」の創造
地方分権時代における地域の発展の鍵となるのは、地域で活き活きと活動する人々の力を引き出し、活かすことのできる環境づくりにあります。そのため、将来を担う子どもたちの健全な育成はもとより、これからの社会の中核を担う若者世代から、活力ある長寿社会の主役となる高齢者まで、自らの夢や目標に向かい生涯を通じて学習できる機会の拡大を図り、豊かな知識や意識を高め、地域の特性を活かしながら活動できる人材の育成に努め、「活気と潤いのある『地域』の創造」を目指してまいります。
社会全体で取り組む教育の推進
全国的に、家庭、地域の教育力の低下が指摘される中、花川北中学校区をモデルとして地域のボランティアが学校を支援する「学校支援地域本部事業」を軸に、地域ぐるみで子どもを見守り、育てるシステムがさらに強化されるようバックアップするとともに、地域の連帯意識や地域コミュニティの再生・活性化に繋がるよう地域ぐるみの運動として展開します。
また、家庭の教育力の向上のための取り組みとして、幼児の情操教育、家庭教育と子育て支援などをテーマとして、親子で参加して子育てを学ぶ「ぴよぴよ広場」を引き続き実施してまいります。
市民の主体的な学習活動の支援
本市では、社会の成熟化に伴い、人々のライフスタイルが多様化する中で、市民ニーズに応じた教養・趣味などの講座の提供を行なうとともに、市民の主体的な学習活動が行なわれるよう支援に努めてまいりました。
これらの動きを契機として、この4月から、市民ボランティア組織「いしかり学びをつくる会」と「教育委員会」との協働により運営する「いしかり市民カレッジ」を開校してまいります。
学習の拠点としての図書館サービスの充実
市民の学習に必要な、図書を始めとするさまざまな資料・情報を収集、整理及び提供する図書館の基本サービスの向上に努め、利用者の期待に応えられる「レファレンスサービス」を充実させるとともに、「図書館講座」、「学級団体貸出」、「ブックスタート」など幅広い事業を積極的に実施してまいります。
また、開館10周年を機に、今後の図書館の運営についてビジョンを検討するほか、新たな「子どもの読書推進計画」を策定するなど、すべての市民に開かれ、暮らしに根付いた質の高いサービスを目指してまいります。
市民の創造性を育む特色ある石狩文化の創造
市民の手づくりで成長を続けてきた「市民文化祭」のさらなる発展を支援するため、その中心的役割を担っている「石狩市文化協会」の組織強化の支援を図るとともに、文化芸術関係団体や個人の取り組みに対する支援を引き続き行ってまいります。
また、文化財は、ふるさとに根付き、永い歳月を重ね、培われてきた郷土の豊かな個性であり、将来に向けた地域発展の礎となるものです。そのため、厚田区輩出の著名人を紹介する「人物から見る厚田の歴史と文化展」などを開催するほか、アイヌ文化に係る聖地として「浜益区の黄金山」を国の名勝として早期に指定されるよう関係団体と連携して働きかけていくなど、歴史・文化財の伝承、保存に努めてまいります。
むすびに
以上、新年度に向けての基本方針と主な重点施策について申し述べさせていただきました。
第44代米大統領バラク・オバマ氏は、「国民一人ひとりが責任を果たし、変革の努力を」と就任演説されました。
世界が大きく変わろうとしている今日、日本においても社会総がかりで「新教育時代」を切り拓く様々な教育改革が進められております。
そのような中で、本市の教育におきましても、「協働」を柱として市民一人ひとりがまちづくりの主役となる「自立的な市民力」の育成に努めてきたところであります。
その成果は、市民の主体的な活動として顕著となり、それぞれの役割や責任を自覚し、その能力を活かしながら主体的にまちづくりに参画している姿であります。
一方、子どもたちを支える熱心な教師や地域指導者の下に、囲碁、太鼓、リコーダー、吹奏楽などの文化面や、スキージャンプ、水泳、少林寺拳法、柔道などスポーツ面で、全国大会や全道大会での優秀な成績など、見事な成果を上げてくれています。
このように、未来のいしかりを担い、まちづくりの礎となる「人育て」が着実に実を結んでいるものと実感しております。
夢と希望にあふれた未来に大きくはばたく子どもの育成、市民一人ひとりが豊かな人生を送り、活き活きと活躍する生涯学習社会の構築を目指し、誠心誠意努めてまいります。
市民並びに市議会議員の皆様の一層のご支援とご協力を心からお願い申し上げ、平成21年度の教育行政執行方針といたします。