検討委員会提言(HTML版)
石狩市における市民参加制度のあり方に関する提言書
平成13年3月石狩市市民参加制度検討委員会
目次
- はじめに
- 第1章 市民参加を進めるに当たっての理念、目的等
- 第2章 市民参加を進めるために市が検討すべき施策の大綱
- 第3章 市民の意見を市政に反映するための方策
- 第4章 市民参加を目的として市が行う個別の手続のあり方
- 第5章 市民参加制度の実効性を確保するための方策
- 第6章 市民参加制度に対する市民の関心を高めるための方策
- 第7章 その他必要な事項
- 参考資料
はじめに
この提言書は、石狩市市民参加制度検討委員会(以下「本委員会」と表記します。)が、市長からの依頼を受け、石狩市が目指すべき市民参加制度のあり方に関して検討した結果をまとめたものです。
依頼の趣旨は、地方分権の時代に自治体が目指すべき方向を踏まえ、行政システムの中に市民の考え方や市民が持つ情報を反映する「市民参加」の仕組みを組み入れるための条例を制定することを前提として、市民参加の定義や理念、あるいは市民参加を推進するための具体的方策などの事項について検討されたいということでした。
本委員会においては、平成12年4月に市役所作業チームが作成した「石狩市市民参加推進条例試案」をたたき台とし、この試案に対して寄せられた市民と市役所からの意見を考慮しながら、同年7月7日から平成13年3月2日までの間に、10回にわたる会議を開催して検討を行いました。
提言の内容は次ページ以下に掲載したとおりですが、市民が「市民参加」という言葉に対して抱くイメージを大切にしたいという思いから、一部、提言依頼に際しての前提-行政活動への市民意見の反映-を大きく超えて、市民参加の本質に踏み込む内容となりました。本委員会としては、この提言を十分に踏まえ、行政活動に市民の意見を反映させるための条例を早急に制定することはもちろん、石狩市における市民参加の理念を明らかにする条例の検討を速やかに開始されるよう、強く望むものであります。この点については、本委員会のメンバーも、今後はそれぞれの立場から市の取組みを見守ってまいります。
石狩市市民参加制度検討委員会
会長 佐藤 克廣
第1章 市民参加を進めるに当たっての理念、目的等
昨年4月から本格的に地方分権が始まりました。地方分権時代の自治体には、地域の独自性を活かしながら、それぞれの創意工夫により、地域をより良く、より豊かにしていくことが求められています。ここで忘れてならないことは、自治体のすべてのこうした活動には、自治の主体であり自治体の構成員である市民が直接間接に関わっているということです。以上のことから、「石狩市における市民参加」とは、自治体としての石狩市の目標-石狩市というまちをより良く、より豊かにすること-を達成するために行われるあらゆる活動(以下「まちづくり活動」と表記します。)に、市民が主体的に参加することが、その本質であるといえるでしょう。
市民参加によるまちづくりを進めるためには、あらゆる分野、あらゆる局面のまちづくり活動を市民の参加のもとに行うべきとも考えられます。しかし、実際の具体的なまちづくり活動は、市民からの負託を受け、活動のための財源や専門の職員を擁する市の執行機関(以下「市役所」と表記します。)が執行する場面が多いことが現実です。また最近は、NPOやボランティアなど、市民が自主的又は組織的に行う活動が担う部分も着実に増えてきており、地域社会の成熟化などに伴って、この傾向は今後も続くものと考えられます。
市民参加のすがたやあり方にはさまざまなものがあり得ますが、以上のような前提に立つと、今後、石狩市が市民参加を進めていく際に主として意識する必要があるのは、市役所が行うまちづくり活動(以下「行政活動」と表記します。)に市民が参加するタイプの市民参加と、市民が自主的又は組織的に行うまちづくり活動(以下「市民活動」と表記します。)に市民が参加するタイプの市民参加の2つであろうと考えられます。
従って、本委員会としては、石狩市において市民参加を進めるためには、行政活動への市民参加と市民活動への市民参加の双方を活性化することによって、市民と市役所が、パートナーシップに基づき、相互に信頼し、協力し合うような関係を築くことが必要との結論に達しました。そして、そのような関係で結ばれた市民と市役所が、より良いまちの姿をともに考え、その実現に向けて行動するような地域社会を創り上げることが、市民参加を推進する目的と考えます。
第2章 市民参加を進めるために市が検討すべき施策の大綱
2-1 総論
行政活動への市民参加と市民活動への市民参加の両方を進めていくためには、それぞれの市民参加を推進するという市の姿勢を明確にするとともに、そのための具体的方策について定める条例を制定することが必要です。同時に、2つの市民参加を進めることによって、このまちは最終的に何を目指そうとするのか、あるいはこれら2つの市民参加を貫く共通の理念とは何か、ということをはっきりと示す条例(以下「市民参加理念条例」と表記します。)の制定も必要と考えます(右図参照。なお、市民参加理念条例に代えて、石狩市のまちづくり全般についての理念について定める条例を制定し、その中で市民参加の理念などを明らかにするという方法もあり得ると思われます。)
これらの条例の検討方法としては、最初に市民参加理念条例を定める、あるいは市民参加理念条例と並行して他の条例を検討するという順序がもっとも適当という意見が大勢を占めました。しかし、行政活動が市全体に及ぼす影響の度合いを考えるとこの方面への市民参加を制度化する意義は大きいと思われることや、市民参加理念条例の内容を検討するためにはさらに時間が必要であること、行政活動への市民参加のあり方についてはたたき台の中である程度整理されていることなどを考慮すると、最初に行政活動への市民参加について定める条例を制定し、その後速やかに市民参加理念条例の検討に着手するのが、当面、現実的という結論になりました。また、行政活動への市民参加について定める条例を先行して制定することにより、地域に対する市民の関心が高まり、総体的な市民参加を実現するための条件が整いやすくなるという効果が期待できるほか、市民が、市民参加に関する他の条例の検討について、市役所に働きかけたりチェックをするための制度的裏付けが得られるというメリットもあります。
以上のような前提に立った上で、次節以降では行政活動への市民参加を進めるための施策についての提言と、市民参加についての後続の条例を検討する際の論点について記します。
2-2 行政活動への市民参加を進めるために検討すべき施策の大綱
本委員会としては、行政活動への市民参加を進めるためには、次のような事項を踏まえた制度づくりや施策展開が必要と考えます。
(1)行政活動への市民参加とは、市民と行政が協働し、ともにまちづくり活動を進めるような石狩市づくり実現に向けての試みの第一歩である、という位置付けを明確にすること。
(2)行政活動への市民参加を進めるための基本は、市民の意見を行政活動に反映することであり、そのためには、市民の意見を聴く手続(以下「市民参加手続」と表記します。)を経た上で企画立案する行政活動をなるべく多くすることが効果的である。加えて、市民参加手続そのもののあり方についても、市民がその手続に参加しやすくなるような方向で、手続ごとに統一的な基準を定め、その基準のもとに運用するようにすること。ただし、行政活動への市民参加が、行政活動の効率を著しく低下させたり、市役所がみずからの責任を回避する口実に使われることのないように配慮することも必要である。
(3)行政活動に対して市民の意見を聴くだけでなく、行政側が何らかの動きを起こそうとする前に市民から上げられる提案を、行政活動に活かす仕組みを検討すること。
(4)上記(2)(3)の施策を実効性あるものとするためには、市民と市役所との間の情報の流れをスムーズにすることや、市役所が市民の意見を聞きっぱなしにしないような措置を講じることも必要不可欠であるので、この点も踏まえた制度とすること。
(5)また、意見があってもさまざまな理由でそれを表明できないでいる市民にも配慮する必要がある。そのためには、継続的な意識調査や課題別のアンケートを充実させるなどのことにより、市役所が市民の考え方を積極的に把握したり、市職員が積極的に市民の中に出向き、市民と話し合う機会を設けるなどのことも必要であること。
(6)以上に挙げたような行政活動への市民参加を進めるための施策を具体化するための条例を制定すること。この条例の名称は、その内容と取り組み姿勢を明確に表現するため、「行政活動への市民参加推進条例」とすることが適当である。
2-3 市民参加理念条例などの検討に際しての視点
本委員会の中では、市民参加の理念や市民活動への市民参加を進めるための施策については結論を出すまでに至りませんでしたが、今後、これらの事項について定める条例を検討する際には、本委員会で提出された次の意見も検討の視点に加えていただくよう望みます。
- 学校教育や社会教育を通じて、まちづくり活動への市民参加の意義や重要性についての市民意識を育てることが必要である。(第6章に再掲)
- 市民はまちづくり活動に積極的に参画する責任を持ち、市は助言や金銭的援助などのバックアップを行うことを考えるべきである。
- 研修などの機会を通じて、市職員が市民参加に対して積極的な意識を持つようにすることが必要である。
- 市の意思決定に市民が直接的に参画できる制度である住民投票の導入について、前向きな検討が必要である。(詳細は第7章に記載)
- 市民の自主的又は組織的なまちづくり活動が現に存在するということを行政側が認知するとともに、それらの力を借りてまちづくりを行おうとする発想が必要である。
- 市民活動を行政がサポートし、市民が自立し、参画するための条件整備を考える必要がある。なお、条件整備の内容を検討する際には、市民活動の実態や市民のニーズに合致したものとなるよう、十分な配慮が必要である。
- 企業との連携を踏まえた市民参加を実現する方策についても検討すべきである。
第3章 市民の意見を市政に反映するための方策
本章では、行政活動への市民参加に焦点を絞り、2-2で述べた施策の大綱のうち、市民の意見を市政に反映するための方策についての検討結果をまとめました。
2-2で、市民の意見を市政に反映する上で効果的と指摘した、市民参加手続を経た上で企画立案する行政活動をなるべく多くするということを実現するためには、これまでのように市民参加手続を行うかどうかについての判断を市役所が一方的に行うのではなく、市民が関心や利害を持つ事項については確実に市民参加手続が行われるよう、条例の中で基準を定めることが必要です。
また、多くの行政活動が市民参加手続を経た上で行われ、さらに市民参加手続に関する情報を市民に提供する仕組みを作ることにより、市民が市役所の動きを適時的確に知ることができるようになって、市民と市役所との間の情報の流れをスムーズにすることにつながると考えられます。加えて、市政に関する正確で豊富な情報に基づいて提出される意見は、より現実的・建設的なものとなり、市政に反映される可能性も高くなるものと思われます。なお、この場合の情報の提供方法については、誰もが入手しやすいような方法とする必要があることはいうまでもありません。
そして、市役所が市民の意見を聞きっぱなしにしないようにするためには、それらの意見の実現可能性を真摯に検討することを市役所に義務づけるとともに、その義務の履行を担保する意味で、検討結果を公表する仕組みを作ることが必要です。ただし、市役所に寄せられるすべての意見に対してこの仕組みを適用することは現実的に難しいので、この仕組みの適用については、市民参加手続の際に提出された意見とそれ以外の意見とに分けて検討することが妥当と考えられます。
以上のような観点から、次の事項を提言します。
3-1 市民参加手続の実施について
(1)条例等の制定改廃、市の計画の策定改廃、公の施設の位置や設計の概要、いわゆる指導要綱の制定改廃、出資又は出捐、国等に対して市が行う意見表明などの行政活動のうち、一般に市民の関心が高いと思われるもの(巻末に例示)を条例で指定し、市役所がそれらの行政活動を行うときは、あらかじめ、市民参加手続を実施すること。この場合に実施する市民参加手続の内容については、規則により定める最低基準を満たし、かつ、その対象となる行政活動の内容・性質に応じた適切なものとすること。
なお、規則で市民参加手続の内容の最低基準を定める際には、この条例の目的にのっとり、市民参加手続の結果を市役所の決定に活かすことができ、かつ、市民参加に対する市民の要求に応え得るようなものとなるように配慮すること。
(2)市民参加手続を行う時間的余裕がないときなど正当な理由があるときは、例外的に市民参加手続を行わないことも容認するが、その場合には、次の事項を、速やかに公表すること。
ア 市民参加手続を行わないこととした行政活動の内容
イ 市民参加手続を行うことができなかった具体的理由
ウ 市役所が下した決定の内容及びその理由
(3)市民参加手続の内容の最低基準を定める規則を制定し、又は改正しようとするときは、市民参加推進協議会の意見を聴き、かつ、パブリックコメント手続※を経るとともに、規則を制定し、又は改正したときは、その内容を公表すること。
3-2 市民参加手続に関する事項の公表について
(1)市民参加手続の実施やその結果を始めとする市民参加手続に関係する事項は、3-1、3-3、第4章に定めるところにより公表するほか、毎年の市民参加手続の実施予定についてもあらかじめ公表すること。また、市民参加手続の実施状況も毎年公表し、市民がチェックできるような体制のもとに制度の適正な運用を図るようにすること。
(2)市民参加手続に関する情報の公表方法は、次のアからエまでのすべての方法とすること。この場合においては、イ、ウ、エについては概要での公表、ウについては事後の公表も容認するものとするが、概要での公表を行う際にはすべての情報を入手する方法を併記するようにすること。なお、イの掲示板を設置したときは、告示などの方法により公にすること。
ア 市役所情報公開コーナー及び担当窓口での供覧又は配布
イ 市内主要施設に設置する掲示板への掲示
ウ 広報いしかりへの掲載
エ 石狩市ホームページへの掲載
(3)市民参加手続に関する情報を公表したときは、報道機関への情報提供その他の適当な方法により、公表内容を市民に周知するよう努めること。
3-3 意見の取扱いに関する原則について
(1)市民参加手続の際に市民から提出された意見は、組織を挙げて総合的に、かつ、様々な観点から多面的に検討することを、市役所に義務づけること。
(2)市民参加手続の際に提出された意見について検討したときには、意見の内容、検討結果及びその理由を公表すること。ただし、その公表により、情報公開条例で定める不開示情報が明らかになると認められる場合は、この限りではないこと。
第4章 市民参加を目的として市が行う個別の手続のあり方
石狩市では、市民の意見を市政に反映することを目的として、これまでも附属機関やそれに類する合議制機関(以下「審議会等」と表記します。)への諮問や、パブリックコメント手続の実施などの市民参加手続が行われてきましたが、行政活動への市民参加をさらに進めるためには、これら個別の市民参加手続の進め方についても、その透明性を高めるとともに市民がその機会をとらえて意見を言いやすくなるような運用が求められます。こうした観点から、それぞれの市民参加手続の種類ごとに、次のような統一的なルールを定めることを提言します。
4-1 審議会等に関する統一ルールについて
4-1-1 構成員の選考等
(1)審議会等の議論を通して市民の意見を行政活動に反映させるためには、なるべく多様な立場からの議論が展開されることが望ましい。このため、審議会等の構成員のうちの一定数は、公募により選考するよう努めるようにすること。ただし、具体的な公募の方法や選考基準は、その都度、審議会等の性格等を勘案しながら定めることが適当である。
(2)委員の公募のほかにも、委員の男女比に配慮したり、委員の掛け持ちや長期にわたる再任を避けるなど、審議会等における審議が市民の多様な意見を反映できるよう、構成員の選考方法に配慮するようにすること。
(3)上記の努力義務、配慮義務を担保するための措置として、市役所は、それぞれの審議会等について、毎年、次の事項を公表すること。
ア 構成員の氏名、肩書及び選任の区分
イ 構成員のうちに公募により選考した委員が含まれないときは、その
理由
4-1-2 会議の公開等
審議会等の会議を公開することは、市役所内部での検討の過程を明らかにし、より良いまちの姿について考える契機を市民に提供する上で意義が大きい。このため、情報公開条例で定める不開示情報が明らかになるなどの正当な理由がある場合を除き、審議会等の会議を公開するようにするとともに、審議会等の議事について定める条例等の中で公開・非公開の区分を明示すること。また、傍聴者には、審議会等で使用される討議資料を配布するなどの利便を提供するよう努めること。
4-1-3 諮問事案等の公表
会議公開を形だけで終わらせないようにするためには、いつ、どのような会議が開かれるかなどの情報を積極的に市民に提供し、会議を傍聴しやすくするような環境整備が必要である。このため、市役所が審議会等に諮問したときはその旨と諮問内容を公表するとともに、公開で行う会議についてはその開催日時等の予定を公表すること。
また、審議会等における検討が比較的長期にわたるときはその検討経過を公表したり、答申を受けてからその具現化までに時間がかかるときは答申内容を公表するなどして、傍聴に来ることができない市民に対しても審議会等における検討経過をできるだけ透明にするよう努めること。
4-1-4 議事録の作成
審議会等における議事内容を明確にし、どのような経過を経て結論が導かれたかを記録しておくことは、その内容を公表するかどうかにかかわらず、非常に重要である。このため、審議会等を開催したときは、次の事項を明らかにした議事録を作成すること。なお、エに掲げる事項については、必要に応じ、録音(録画)テープなど、文書以外の形式で残す方法も考えられる。
ア 会議の日時、場所、出席者、傍聴者数
イ 会議の議題
ウ 会議資料の内容
エ 会議における発言内容又は議事の経過
オ 会議の結論
カ その他必要な事項
4-2 パブリックコメント手続に関する統一ルールについて
4-2-1 意見の提出方法等
(1)パブリックコメント手続の際の意見提出方法は、市民が意見を提出しやすいように、郵便、ファクシミリ、電子メール、さらに場合によっては録音テープなど、その記録性を確保できる範囲で、可能な限り多様な方法とすること。
(2)意見の提出期間は、1か月を下回らない範囲で、事案の性質に応じ適切に定めること。ただし、やむを得ない事情があるときは1か月未満とすることも容認するが、その場合は、1か月の期間を確保できなかった理由を公表することとすること。
4-2-2 パブリックコメント手続実施の公表
パブリックコメント手続を実施する際の公表事項は、次のとおり統一すること。
ア 対象となる事案の内容
イ 対象となる事案の処理方針に関する原案及び関連資料
ウ 意見の提出先、提出方法、提出期限
エ 意見を提出することができる者の範囲
オ 検討結果等の公表予定時期
カ その他必要な事項
4-2-3 パブリックコメント手続の準用
事案の性質によっては、対象となる事案の処理方針に関する原案の作成前に市民から意見を募集する場合も考えられるが、この場合も、意見の提出方法、提出期間、公表事項(原案及び関連資料の公表は除く。)について、パブリックコメント手続に準じた手続を経ること。
4-3 公聴会に関する統一ルールについて
4-3-1 公聴会開催の手続
公聴会を開催するときは、意見の申出期限の1か月前までに、次の事項を公表すること。また、形式的な公聴会の開催を避けるため、期限までに意見の申出がない場合は、公聴会を中止し、その旨を公表することとすること。
ア 公聴会の日時及び場所
イ 公聴会の対象となる事案の内容
ウ 公聴会の対象となる事案の処理方針に関する原案を作成したときは、
その原案及びこれに関連する資料
エ 意見を申し出ることができる者の範囲及び意見の申出期限
オ 検討結果等の公表予定時期
カ その他必要な事項
4-3-2 議長等
公聴会は、市長等が指名する者が議長として主宰することとし、参加者は議長の指示に従う義務があることを最低限のルールとして定めること。なお、公聴会の開催や進行方法等に関するルールの細目についても、規則などによりあらかじめ定めておくこと。
4-3-3 調書の作成及び公表
議長は、公聴会開催の都度、次の事項を明らかにした調書を作成し、市長等に提出することとすること。また、公聴会が終結したときは、提出された調書及び公聴会での配布資料を、必要に応じて公表するようにすること。
ア 公聴会の日時及び場所
イ 公聴会の対象となった事案の内容
ウ 公述人の氏名及び傍聴者の人数
エ 公述人の発言及び質疑の要旨
オ その他必要な事項
4-4 その他の市民参加手続に関する統一ルールについて
(1)審議会等、パブリックコメント手続及び公聴会以外の方法により市民参加手続を行うときは、これらの手続を行う場合との整合を図るため、その期日の1か月以上前に、次の事項を公表するようにすること。
ア 市民参加手続の対象となる事案の内容
イ 市民参加手続を行う期日
ウ 市民参加手続の内容
エ 市民参加手続の対象となる事案の処理方針の原案を作成したときは、
その内容及び関連資料
オ 市民参加手続に参加することができる者の範囲
カ その他必要事項
また、やむを得ない事情により、期日の1か月以上前に公表できなかったときは、その理由を公表すること。
(2)前項の場合において、市民参加手続の対象者が限定されており、かつ、それらの対象者に対して公表以外の方法により上記アからカまでの事項を周知することができるときは、その方法により周知すれば足りることとすること。
4-5 他の制度との調整について
市民参加手続の実施及びその運用に当たっては、市民参加手続について定める他の法令や条例の規定との間との調整が図られるよう、適切な措置を講じること。
第5章 市民参加制度の実効性を確保するための方策
本章では、前2章で提言した行政活動への市民参加に関する制度の実効性を確保するための方策について述べます。
行政活動への市民参加に関する制度は、その内容が市民のニーズに合致しており、かつ、制度を維持するためのコストが妥当であるという条件が成立して、はじめてその実効性が確保されます。従って、市民参加制度の実効性を確保するためには、市民と市職員が共通の理解のもとに率直な議論を行う場を設け、上記のような視点から制度の運用状況をチェックした上で、改善すべき事項は改善するという仕組みを作ることが不可欠です。
このような観点から、次の事項を提言します。
5-1 制度の改善について
行政活動に対する市民参加の制度は、行政活動に対する市民参加のあり方に関する市民の考え方を適切に反映したものとなるよう、随時必要な見直しを行うことを明文化すること。
5-2 市民参加推進協議会
5-2-1 設置
次に掲げる事項についての諮問・建議機関として、石狩市市民参加推進協議会(以下「協議会」と表記します。)を置くこと。
ア 行政活動への市民参加推進条例及びその施行細目について定める規則
その他の規程の制定改廃
イ 市民参加手続の実施状況の評価に関する事項
ウ 市民参加手続の運用に関する事項
エ 上記のほか、市民参加の推進に関し必要な事項
5-2-2 委員
(1)協議会の委員は、次に掲げる者15人以内とすること。この場合における委員の男女別の人数は、男女いずれも総数の4割を下回らないようにすること。
ア 学識経験者
イ 市内において活動する団体が推薦する者
ウ 市内に居住し、又は通勤通学する者であって市長が行う公募に応じた
もの
エ 市職員
(2)公募による委員の数は、5人を下回らないこととするように努めること。また、市職員である委員の数は、2人を超えてはならないこと。
(3)協議会の事務局を担当する部局に属する市職員は、市職員である委員に選任されることができないものとすること。
5-2-3 任期
協議会の委員(市職員である委員を除く)の任期は2年とし、補欠委員の任期は前任者の残任期間とすること。また、委員の再選は、連続2期を限度とすること。
5-2-4 会長及び副会長
協議会に会長及び副会長を置き、市職員である委員以外の委員のうちから、委員の互選により定めること。また、それぞれの職務は次のとおりとすること。
(1)会長は、協議会を代表し、協議会の会議の議長となる。
(2)副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときは、会長の職務を代理する。
5-2-5 会議
協議会の会議の運営は、次のとおりとすること。
(1)協議会の会議は、会長が招集する。
(2)協議会の会議は、委員の過半数の出席をもって成立する。
(3)協議会の会議の議事は出席委員の過半数で決し、可否同数のときは会長が決する。
(4)会長は、必要に応じ、協議会の会議に参考人の出席を求めることができる。
(5)協議会の会議は、これを公開する。
5-2-6 会長への委任
上記のほか協議会の運営に関し必要な事項は、会長が協議会の会議に諮って定めること。
第6章 市民参加制度に対する市民の関心を高めるための方策
行政活動への市民参加は、条例により制度を作れば完成するというものではなく、市民がこの制度を十分に理解した上で活用しなければ意味がないと言えるでしょう。従って、この制度に対する市民の関心をどのようにして高めていくか、ということは非常に重要です。残念ながら、市民参加に対する市民の関心はそれほど高くないというのが現状であり、本委員会でも、これを打開するための決定的な方法を見つけることはできませんでした。この点については、さらに時間をかけながら、徐々に改善していかなければならないという認識を持つ必要があります。また、制度の内容についての一般的な周知活動のみに頼るのではなく、第1章で述べたようなまちづくり活動に市民が広く参加するような動きの中から行政活動への市民参加へとつなげていくようなアプローチを考えることも必要だと思われます。
このような観点から、本章では、行政活動への市民参加についての制度に対して市民の関心を高めるための方策とともに、まちづくり活動への市民参加に対する市民の意識を高めるための方策についても提言します。
6-1 行政活動への市民参加に対する市民の関心を高めるための方策
(1)条例そのものの表現をできるだけ平易にするとともに、分かりやすい解説書などを作成し、配布すること。
(2)行政活動への市民参加の意義や方法などについて、さまざまなメディアを活用しながら、地道に繰り返し何度も市民にPRすること。
(3)制度の内容やその効果を市民に分かりやすく伝えられるように、象徴的・パイロット的な事業の実施や、参加者の自由な発言が行政活動に反映され得るような場の設定などについて検討すること。
6-2 まちづくり活動への市民参加に対する市民の関心を高めるための方策
(1)常時必要な情報を収集し、市民がまちづくり活動への市民参加について知りたいと思ったときに情報を提供できるような場所を市役所に設けること。
(2)市民活動を行う市民が自分たちの活動を市民に広くPRできるような場を提供するなどのことについて検討すること。
(3)学校や地域社会におけるさまざまな地域教育の機会を通じて、まちづくり活動への市民参加の意義や重要性についての市民意識を育てること。
第7章 その他必要な事項
7-1 住民投票制度について
住民投票制度は、市民参加制度と密接な関連がある事項として最近注目を集めており、本委員会でも検討項目に加えたところです。本委員会においては、石狩市にとって真に重大な影響があるような問題について、議会や市長が市民の意思を問うというような住民投票の必要性を否定する意見はありませんでしたが、住民投票制度の検討を行う際には重要な論点となり得る意見が多数提出されましたので、以下に列記します。今後、市民参加の理念と並行して住民投票制度の検討を進める際には、これらについても考慮されるよう望みます。
(1)住民投票条項(市長は、必要に応じて、別条例により住民投票を実施できるというような条項)については、市民参加の条例に住民投票条項が含まれるのは当然、市の姿勢を分かりやすく示す効果があると、これを評価する意見もあったが、実効性が低い条項を入れても意味がない、市民参加手続を適正に運用すれば住民投票条項は必ずしも必要でないとする見解もあった。
(2)住民投票条項を検討する際には、改めての条例化がいらないような住民投票など、実効性・独自性の追求を行うと同時に、規定の必要性やその内容を各方面に十分説明できるような論拠が必要であるとの意見があった。
(3)住民投票の対象を重大問題に限る必要はないのではないかという意見もあったが、これには反対する意見もあった。また、市民が発意する住民投票制度を考えられないかという意見もあったが、直接請求制度があるのだから不要とする意見もあった。
7-2 オンブズパーソン制度について
オンブズパーソン制度については、制度の運用のために要するコストなど慎重に考慮すべき事項はあるものの、方向としては前向きに検討すべきとする意見と、オンブズパーソン制度は苦情処理を主目的とするものであるので市民参加とは性格が異なるのではないかとする意見がありました。
7-3 今後市民参加に関係する条例を検討する際の留意点について
今後、市民参加理念条例や市民活動を促進する条例の内容を検討するに当たっては、市民の自主的又は組織的なまちづくり活動の実態や課題を掌握した上で、広範な市民の参加のもとに、まちの状況、市民参加の必要性、市民参加とは何かなどという点について、時間をかけて議論し、合意を形成することが必要だと思われます。
参考資料
平成12年7月7日
石狩市市民参加制度検討委員会
石狩市長 田岡 克介
市民参加制度のあり方に関する提言について(依頼)
本市が目指すべき市民参加制度のあり方に関し、下記の事項についてご検討の上、提言をいただきますようお願いいたします。
記
1 市民参加を進めるに当たっての理念、目的等
2 市民参加を進めるために市が検討すべき施策の大綱
3 市民の意見を市政に反映するための方策
4 市民参加を目的として市が行う個別の手続のあり方
5 市民参加制度の実効性を確保するための方策
6 市民参加制度に対する市民の関心を高めるための方策
7 その他必要な事項
(総務部総務課)
石狩市市民参加制度検討委員会構成員名簿
氏名 | 選任区分 | 肩書 | 備考 |
---|---|---|---|
石黒 匡人 | 学識経験者 | 小樽商科大学商学部教授 | 会長代理 |
柏野 俊子 | 団体推薦者 | 特定非営利活動法人ふれあい広場タンポポのはら理事長 | |
川中 信 | 学識経験者 | 藤女子大学人間生活学部助教授 | |
小杉 章悟 | 一般公募 | ||
駒井 秀子 | 一般公募 | ||
佐藤 克廣 | 石狩市市民参加制度アドバイザー | 北海学園大学法学部教授 | 会長 |
佐藤 豊治 | 団体推薦者 | 石狩市連合町内会連絡協議会会長 | |
佐藤 幸枝 | 団体推薦者 | 石狩青年会議所理事 | |
野 昭夫 | 市職員 | 石狩市企画調整部長 | |
樋口 幸廣 | 市職員 | 石狩市保健福祉部長 | |
藤原 市子 | 一般公募 | ||
三島 照子 | 一般公募 | ||
山崎 成記 | 市職員 | 石狩市市民部長 |
3-1 市民参加手続を実施すべきと思われる行政活動の例
行政活動の種類及び内容 | 備考 | |
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1 | 条例、規則その他の規程*1 の中の、次に掲げる部分の制定改廃 (1) 市民の権利又は義務について定める規定。 (2) 公法上の徴収金(規則で定めるもの*2 を除く)の賦課徴収について定める規定 (3) 市民に対して、その内容にのっとった自発的な活動を求める規定 (4) 市役所が保有する情報の開示又は提供についての原則又はその具体的方法について定める規定 (5) 公の施設の利用条件(使用料を除く。)について定める規定 | *1 受任規程、告示等も含む *2 市の裁量余地が狭いもの(法定地方税、標準事務手数料など)や制裁的性格を持つもの(過料、延滞金など)を想定 |
2 | 将来達成すべき政策の目標及びそのための施策*1 の方向性について定める市の計画(計画に類するもの*2 を含む)の策定改廃。ただし、次に掲げるものは対象外とする。 (1) 市の財政に関する計画の策定改廃 (2) 市役所の人事政策に関する計画の策定改廃 (3) もっぱら市役所内部の事務処理に関する計画の策定改廃 (4) 既定計画で定めた施策の進捗状況を調整する目的で行う計画の改定*3 | *1 「施策」とは歳出予算科目の事業を最小単位とし、「政策」とは複数の事業を実施することにより達成を図る効果・目的を指すものとイメージしている *2 構想、指針、大綱など *3 いわゆる計画のローリング改定を指す |
3 | 次に掲げる公の施設* の位置及び設計の概要 (1) 建築物を主体とする公の施設 (2) 公園、スポーツ施設 | * 住民の福祉を増進する目的で、住民の利用に供するために市が設置する施設をいう |
4 | 法令に基づく特定の申請をする複数の者に対して公益上の観点から行う行政指導の内容についての基準* の決定、変更又は廃止 | * いわゆる指導要綱を指す |
5 | 出資又は出捐のうち次のいずれかに該当するもの (1) 市が資本金等の1/2以上を出資する法人に対するもの (2) 市の事業の受け皿となる法人に対するもの (3) 市の出資又は出捐の総額が1千万円を超える法人に対するもの | |
6 | 国等*1 が行う次の行政活動について、法令の規定に基づき、又は当該国等からの求めに応じて行う意見表明。ただし、当該国等が別途市民参加手続を行う場合及び市民参加手続を行うことが不要又は困難なものとして規則で定めるもの*2 は対象外とする。 (1) 市の全部又は一部についての法令に基づく区域の指定又はその解除 (2) 市の全部又は一部を対象とする計画の策定改廃 (3) 申請に対する処分又はその取消し (4) 申請又は法令の規定に基づき行う意見表明 | *1 国及び他の地方公共団体を指す *2 影響が限定的なもの、市民参加のための時間を確保することができないのが通例であるものなどを想定 |
7 | その他市民の関心が高いことにより市民参加手続を実施する必要があると認められる行政活動 | 上記6類型に該当しない行政活動であっても、必要に応じて市民参加手続を実施することを明確にする趣旨の規定 |
石狩市市民参加制度検討委員会会議開催状況
回 | 開催日時 | 主な討議内容 | 傍聴者数 |
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1 | 平成12年 7月7日 | 4 | |
2 | 8月1日 | 2 | |
3 | 8月18日 | 3 | |
4 | 9月14日 | 2 | |
5 | 9月29日 | 2 | |
6 | 10月27日 | 2 | |
7 | 11月17日 | 2 | |
8 | 12月22日 | 2 | |
9 | 平成13年 1月22日 | 1 | |
10 | 3月2日 | 1 |