市民参加手続の実施運用状況および市民参加制度の改善方策について
市民参加手続のテーマ
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答申内容
平成19年11月28日開催の平成19年度第3回市民参加制度調査審議会で結審し、平成19年12月27日下記のとおり答申されました。
平成19年12月27日
石狩市長 田岡 克介 様
石狩市市民参加制度調査審議会
会長 石黒 匡人
市民参加制度の実施運用状況及び改善方策に関する答申
平成18年6月6日付け石協共第15号で諮問を受けた標記の件について、下記のとおり答申いたします。
第3次市民参加制度調査審議会においては、本年4月で市民の声を活かす条例の全面施行から5年が経過したことを踏まえ、各種アンケートも活用しながら、過去5年間の市民参加制度の実施運用状況の総括的な評価を行うとともに、その結果を踏まえて必要と思われる制度の改善について議論を重ね、今回の答申に至りました。この答申を十分に検討され、まちづくりの意思形成により多くの市民が参加することによって、石狩市が誇る市民参加制度がさらに充実するために必要な対応を講じていただくとともに、市役所職員と市民両者の意識高揚にも取り組んでいただくことを期待いたします。
- 1 平成17・18年度の市民参加手続の実施状況について
- 平成17年度は34案件について39の市民参加手続が行われ、延べ1,893人が参加しました。また、18年度は49案件について61の手続が行われ、延べ1,052人が参加しています。
- この2年間で特徴的なことは、パブリックコメント(PC)への意見提出者数が1件当たり3.5人(18年度に限ると4.5人)と、14から16年度までの平均1.8人から大幅に伸びていることです。これは、PCに合わせた意見交換会の開催や、過去にPCに対して意見を提出された方にPC実施の通知などをした効果と考えられますが、このことは、今後も意見を出しやすい環境づくりや効果的な周知方法を工夫することにより、市民意見をさらに掘り起こすことができる可能性があることを示しているものと思われます。
- 一方で、これまで毎回指摘されてきた審議会等の会議開催に関する情報提供の遅れは、根絶にまで至っていません。情報公表窓口の一元化や毎年の研修などで、市側もこのような事務的ミスを減らす努力をしていることは認められるものの、一番の基本となる関係職員のさらなる自覚を求めるものです。
- また、平成17年度に実施した「市の木、花、鳥の検討」は、審議会で原案とその理由をまとめた後にPCで市民意見を広く募集するという方法をとりました。こうした方法をとったのは、選定の理由も含め、しっかりと内容を検討するためであり、その選択には一定の妥当性もあったと思われます。しかし、市の木、花、鳥は、子どもも含む広範な市民がそれぞれの感覚で考え、意見を述べやすいテーマなので、市民参加を推進する観点からは、例えば審議会では理由を明示した上で複数の候補を示し、市民アンケートでそれらの中からひとつを選定したり、市民から候補を募集して審議会で絞り込むなど、より広範な市民が意見を述べやすいような手法を選択する余地もあったと考えます。今後、今回と同じように広範な市民の参加が望めるようなテーマについて市民参加手続を行う場合は、例示したような市民参加の広がりを確保できるような方法についても検討することを望むものです。
- 2 条例施行後5年が経過した時点での総括的評価について
- 5年経過時点での総括的評価としては、今後の取り組み方策をより具体的に示すため、いくつかのポイントを絞って検討しました。具体的には、条例の市民への浸透状況、条例施行の効果、代表的な市民参加手続である審議会とPC制度の運用状況、さらに市民の声を活かす条例に基づき設置されたユニークな情報伝達手段である「あい・ボード」について検討しました。
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- 市民の声を活かす条例の市民への浸透状況
ごみステーションにごみを出しに来られた市民を対象としたアンケート結果(資料1。以下「市民アンケート」という。)では、「条例の詳しい・大まかな内容を知っている」回答者はおよそ20%、「名前を知っている」という回答者まで含めると65%程度となりました。これは施行後5年目の数字としては妥当な水準と言えるかもしれません。しかし、市民参加制度を意義あるものとするためには、市役所と市民が相互に働きかけることが必要であることを考えると、この条例に対する市民の認知度をさらに高めていかなければなりません。市民の声を活かすことによって具体的なプラスがもたらされた事例や職員が感じている条例の効果などを多様な方法でPRするなど、さらに市民の認知度を上げる努力が求められます。 - 市民の声を活かす条例を施行した効果
市民の声を活かす条例は、(1)市民参加手続の実施を市役所に義務付けることにより、市役所の思考や行動のパターンを変えるとともに、(2)市民の知識や経験などを取り入れて政策決定のレベルを上げる、という二つの狙いを持っているため、この点に着目して効果を検証しました。市職員アンケートでは、市民への情報提供、市民や議会への説明、職員自身の政策理解度向上などを中心として、市民参加手続を経験した大半の職員がその効果を認めており、「市役所を変える」という点については一定の評価ができると思われます。
一方、「市民が持つ知識、経験等を市政に活かすことで政策決定のレベルを上げる」効果は、参加する市民の絶対数が少ない現状では、まだそれほど大きいとはいえないと思われます。19年度の市職員アンケートで市民参加手続に政策決定上の効果を認めた回答は約33%であり、「市役所を変える」効果を指摘した回答に比べるとまだ少ないことも、その表れと考えられます。長年続いてきた「陳情・要望」型から「提案」型へと、市民と市役所がともに思考を切り替えるためには一定の時間と継続的な努力が必要です。試行錯誤を繰り返しながら、より分かりやすい情報提供やより答えやすい問い掛けの手法を開発するなど、費用対効果の視点も持ちながら市民参加制度を改善していくとともに、職員自身が感じている効果を市民に伝えるなどして、市民が条例の具体的メリットを感じられるような場面を作っていくことも必要と考えます。 - 審議会制度の運用状況
審議会委員へのアンケート結果からは、事務局の対応、会議時間や回数の設定、答申や提言を受けての市役所側の検討状況などは概ね満足できる水準に達していると考えられます。今後もさらに的確な説明手法や柔軟な開催方法の検討などを進め、実りのある審議会審議の実現に向け、引き続き事務局として最善を尽くす努力を期待するものです。
しかし半面で、審議会の傍聴者は1回当たり1人台であり、また市民アンケートでは委員公募制度を知っている市民の割合は約30%に止まっているなど、せっかくの会議公開や委員公募など「開かれた審議会」を目指す仕組みが十分に活用されていません。今後はこうした面での取り組みが求められるところですが、まずは審議会の活動内容などを分かりやすくPRするなどして、審議会制度とその役割に対する一般市民の理解を深めることが必要と思われます。また、同じ市民アンケートでは、条件次第では委員になっても良いと考える市民が30%近く存在するというデータもあることから、今後はこれら潜在的な関心層への効果的な働きかけや参加を求める手法の研究を進めることも望まれます。また、公募委員の掘り起こしという点では、広報の委員募集のお知らせ欄を、要点のみを伝えるように整理して見出しを目立たせることについても研究してはどうでしょうか。 - パブリックコメント(PC)制度の運用状況
PC制度は市が行おうとする施策に意見を持つ市民に対して、その発言の機会を確保することが目的なので、提出された意見の数をもって一概に評価はできませんが、制度の内容やPC実施の告知はできるだけ多くの市民に届くことが求められます。市民アンケートの結果を見ると、PC制度を知らない市民が5割を超えている状況であり、また、ごみ戸別収集・有料化のPCを例に取ると、市民の関心の高い話題であるにもかかわらず約67%の回答者がPC実施を知らなかったことが明らかになりました。また、PCに意見を提出する気持ちがあっても、意見をまとめることや文章化することなどがハードルになっていることも伺えます。制度自体のPRをさらに強力に進めるとともに、次に例示するような方法で意見を出しやすい環境を整えるなどの方策が必要と考えます。
(1)PCのテーマと関係の深い施設にPCの告知を掲示するなど、市民がより情報に触れやすい形でPC実施の周知を図る
(2)PCの実施にあわせた説明会などで原案をより分かりやすく伝えるとともに、説明会の場で意見を聴く
(3)アンケートのように答えやすい形で問いかける
(4)PCの名称をより判りやすいものに変える
(5)市役所などに口頭での意見を文書化する窓口を設置する
前記のように、これまで市が行ってきた意見提出をしやすくするための取り組みは一定の効果を上げており、さらに工夫を重ねていけばPC制度は市民意見の反映手法としてより効果を発揮するようになる期待が持てると思われます。 - あい・ボードの運用状況について
あい・ボードは市民の声を活かす条例独自の情報伝達ツールですが、アンケートでは「あまり・ほとんど見ない」「存在自体を知らない」と答えたのが、市民参加手続の参加経験者で約55%、市民アンケートでは約75%と、現時点であまり活用されているとはいえません。しかしながら、あい・ボードはインターネットを使えない市民でも比較的リアルタイムで情報を入手できるという特徴があり、情報伝達手段の多様化という面でも可能性を持っていることから、当面は市民にもっと活用してもらうための取組みが求められます。具体的には、あい・ボード自体のPRに力を入れるとともに、設置場所や掲示内容のアピール方法などについての再検討が必要ですが、これらの努力を重ねても市民に受け入れられないときは、その存続の是非を含めた抜本的対応も検討課題になり得ると考えます。
- 市民の声を活かす条例の市民への浸透状況
- 3 市民参加制度の見直しについて
- 市民の声を活かす条例施行後5年が経過し、市民参加手続の実績が一定程度積み重ねられてきたことを踏まえて、手続に係る市役所の負担も考慮しつつ、一層的確に市民の声を行政活動に反映させ、市民参加制度の実効性を高める観点から、条例第4条に基づき、次の点について制度の見直しを進めることが適当であると判断します。
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- 公共施設の新増設等を市民参加手続の対象とすること
現行制度では、公共施設を新増設する場合、その設計の概要は市民参加手続を経て定めることとしていますが、新増設の是非そのものの判断は、市民参加手続の対象となっていません。石狩市は厳しい財政状況にあることに加え、今後は人口減少に転じることも予想されています。そうした中で、公共施設の新増設については、将来にわたっての維持費用負担や利用者確保の見込みなども吟味した上で判断することが求められます。
また、以前は総合計画の中で主要な公共施設の新増設予定が明らかにされており、この計画策定時の市民参加手続で新増設の是非を検討できるという考え方もできましたが、地方財政制度の過渡期ともいえる現在は、将来の財政見込みが不透明さを増したことに伴い計画の担保性が低下し、いきおい事業実施段階での判断が重要になってきています。加えて、総合計画では膨大な事業が列挙される反面、個別事業の内容は固まっていないため、計画策定時点でその是非を市民が考えることは難しいという現実的な事情も指摘できます。5年間実施してきた職員アンケート(資料2)でも、施設の建設や買取りを市民参加手続対象に加えることを求める意見が根強く出されています。
こうしたことから、公共施設については、設計概要だけではなく、その新増設についても市民参加手続の対象に加えることが妥当と判断するものです。ただし、すべての公共施設について対象とするのではなく、施設の規模・性質や市民の関心度などに応じた線引きが必要と思われます。 - 公共施設の休廃止を市民参加手続の対象とすること
現行制度では、公共施設の利用方法に関する条例等の規定を廃止する場合は市民参加手続を行うこととしていますが、規定の廃止は公共施設を廃止するという市役所の一連の意思決定の最終段階と位置づけられるため、その段階で市民意見を聴いたとしても、それが活かされる範囲は自ずと限定されてしまうことが危惧されます。
市役所内部では、通常、それ以前の時点で、例えば利用者に与える影響や代替措置をどうするかなどの諸点について検討した上で、廃止という意思決定を行うことが一般的ですから、むしろ、その内部検討の時点で、利用者などの参加を求め、最終結論を導くことにしたほうがより望ましいと考えられます。
このことから、市民参加手続を行う対象を、「公共施設の利用方法に関する規定の廃止」から「公共施設の休廃止」と改めることが妥当です。ただし、一定の線引きが必要なことは1,と同様です。 - 他の制度に基づいて市民参加手続を行う場合の手続内容は、当該他の制度が定めるところに従うようにすること
市民の声を活かす条例第2章では、それぞれの市民参加手続の進め方を細かく定めるとともに、法令など他の制度に基づき市民参加の機会が確保されている場合でも、同章の規定を適用した場合に法令違反となる場合を除き、第2章の規定を適用することとしています。これは、市民がより意見を提出しやすくするため、一般的に他の制度で定める手続内容と同等以上のレベルである条例第2章の規定を優先適用する趣旨のもので、例えば一般的に「縦覧・意見提出」と呼ばれる手続は(以下「縦覧等手続」)、市民の声を活かす条例のPC手続とみなされ、法令では2週間から1月とされることが多い意見提出期間は一律1月としてきました。しかし、過去5年間で、この縦覧等手続は16件実施されたものの、意見がまったく提出されていません。
この理由は、他法令で縦覧等手続が定められるような案件は、利害関係者の存在が想定される場合が多いため、事前に説明会などで関係者の意見を聴取し、強い異論などがないことを確認した上で縦覧等手続へと進むパターンが多く、いわば縦覧等手続は形式的に最後の確認をするような性格になっていることが考えられます。
市民参加手続を行うかどうかの基準は、市民参加を求める市民側のニーズや市民参加を行うことによる効果と、市民参加手続を行うことにより増加するコストとのバランスを考えながら判断すべきですが、現状ではニーズと効果は極めて少なく、コストだけが余分にかかっている状態と判断されます。また、例えば都市計画決定などは、周辺都市と同じタイミングで手続を求められますが、縦覧等手続の期間が他都市では2週間のところ、石狩市だけが1月となるのは実務上も大きな問題があります。
これらのことに加え、市民の声を活かす条例を適用しないとした場合でも、それぞれの制度に基づく全国水準の市民参加の機会が確保されている場合は、市民参加を進める上で特段の支障がないとも考えられます。
以上から、法令等他の制度に基づいて市民参加手続を行う場合の手続内容は、市条例の適用除外とし、当該他の制度が定めるところに従うように改めることが妥当であると判断します。 - 公共施設の利用方法を定める規定の制定改廃について
現行は、公共施設の利用方法に関する規程の制定改廃について市民参加手続の対象としていますが、過去8回の手続のうち、意見提出があったのは2回に止まっています。これを分析すると、市民が利用方法について関心を持ちにくい施設や、利便性向上につながるような改正については意見が提出されないなどの傾向が見られるため、現在のような原則一律で手続の対象とするのではなく、例えば市民の関心が高いと判断される場合に限って手続を行うように制度を改めることも考えられます。しかし、この場合でも関心の高低を市役所だけで判断するのではなく何らかの客観的な基準を設けるべきとの意見もあり、本審議会として結論を出すには至りませんでした。
この点については、もう少し時間をかけて市民意見の提出状況を見守るとともに、市役所内部で研究を重ねることを望みます。
- 公共施設の新増設等を市民参加手続の対象とすること
諮問事項
平成18年6月6日開催の第1回市民参加制度調査審議会で下記のとおり諮問する。
石協共参第15号
平成18年6月6日
石狩市市民参加制度調査審議会
会長 石黒 匡人 様
石狩市長 田岡 克介
市民参加制度に関する諮問
石狩市行政活動への市民参加の推進に関する条例第28条の規定に基づき、市民参加手続の実施運用状況の評価及び市民参加制度をより良い内容とするための改善方策について、貴審議会の意見をうかがいます。