令和6年度教育行政執行方針
令和6年度教育行政執行方針
令和6年度 教育行政執行方針
令和6年2月22日(木曜日)
令和6年第1回石狩市議会定例会
令和6年第1回市議会定例会の開会に当たり、教育行政の基本的な考え方と施策の大要を申し上げます。
はじめに
まず、このたびの令和6年能登半島地震の犠牲者に哀悼の意を表します。また被災された方々にお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。教育委員会では、被災地の教育活動を支援するため、既に市内の教員を派遣いたしましたが、今後も事態の推移に応じ、必要な支援を行ってまいる所存であります。
さて、今日の社会は、少子化・人口減少、グローバル化、気候変動や大規模災害、国際情勢の不安定化などの課題が山積しております。こうした社会を持続的に発展させ、活力あふれるものにしていくためには、何よりも「人」の力が鍵を握ります。一人一人が自分の可能性を認識し、他者を尊重しつつ多様な人々と協働し、さまざまな社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓いて持続可能な社会の創り手となることを目指す、という学習指導要領の考え方は、年代を問わず広く共有される必要があります。
加えて、こども基本法の施行や本市における子どもの権利条例の検討などを踏まえた「こどもまんなか社会」「こどもまんなかまちづくり」を目指す上でも、教育の果たすべき役割は極めて大きなものがあります。
令和6年度に実施する教育プランの改定作業はもとより、具体の施策展開に当たっても、こうした認識をしっかりと基底に据えつつ、本市が目指す教育の姿の具現化に向けて、鋭意取り組んでまいります。
以下、令和6年度の主要な施策について、教育プランの柱建てに即して、順次申し述べます。
目標1 自ら学ぶ意欲をもって、主体的に社会に関わり、新しい時代を生きる力を育てる
(新しい社会で生きる力の育成)
学習指導要領の趣旨を踏まえ、本市学校教育の大きな課題となっている確かな学力の育成に向け、「未来にも生きる資質・能力の確実な育成」を重点テーマとして、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善のさらなる推進」「確実に身に着ける学習保障のさらなる推進」を柱とした具体的な取組を進め、学習効果の最大化を図ります。
各校においては「1人1台端末を有効活用した、個別最適な学びと協働的な学び」や「思考力・判断力・表現力を育成する、対話を重視した学習活動」の取組が着実に進められてきております。これらの取組を継続するとともに、学校組織マネジメントの一層の充実により、「伸びしろ層・中間層・定着層の各層が伸びる学習指導」「AIドリルを有効活用した補充学習」「家庭学習の習慣化に向けた指導」等の取組を改善・発展させ、児童生徒一人一人の確かな学力の育成を図ります。
変化の激しい時代の中で「生きる力」を育むためには、児童生徒の学びも大きく変わらなければなりません。令和6年度は新たに、協働学習・交流学習に特化したデジタル支援ツールを試験的に小学校に導入し、その効果を検証するとともに、これまで普通教室に整備してきた電子黒板を特別教室にも計画的に拡充配備し、1人1台端末と連動した実習や実験の授業展開を図るなど、「主体的・対話的で深い学び」の充実を図ります。
ICT教育を推進する学校に一層きめ細やかな支援を行うべく、ICT支援員を増員するとともに、ICTを活用した授業支援、校内研修などの充実を図り、1人1台端末の利活用促進、さらには個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ってまいります。
新時代の学びを支える指導体制の充実を図るため、小学校で学級編制標準の段階的な引き下げや教科担任制の導入が進められています。市としては、引き続きエキスパートサポーターや外部指導者等の効果的な配置などにより、子どもたち一人一人に対するきめ細やかな指導体制を確保し、学習意欲の向上を図ります。
特別な支援を必要とする児童生徒の実態や保護者の意向を踏まえた上で、一人一人の教育的ニーズに応じた途切れのない一貫した支援を行うため、就学前からの教育相談の実施や、「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の活用により、子どもたちの未来を見据え、計画的・組織的な教育活動を推進いたします。
義務教育段階から外国の言語や文化について理解を深め、語学力とコミュニケーション能力を高めることができるよう、外国語指導助手(ALT)を活用し、生きた外国語教育を行ってまいります。
(学びを支える家庭・地域との連携・協働の推進)
家庭教育支援を充実させるために、市長部局の家庭生活支援相談員との連携を継続します。中学校の試験期間に合わせた小学校の家庭学習強化週間の設定や「AIドリル」を活用した家庭学習の充実など、学習習慣の確立に向けた取組を継続するとともに、小中の連携による生活規律の確立に向けた取組を継続します。
また、国の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、本市の児童生徒の朝食欠食やスクリーンタイムは依然として多い状況にあることから、引き続き、「いしかりふれあいDAY」や「家庭教育講座」等により子どもたちの基本的な生活習慣の定着を図るほか、スマートフォン等の使用ルールを保護者と児童生徒が一緒に考えるきっかけとなるよう、「電子メディアに関する家庭のルールづくりシート」の活用などについて、学校と連携して情報を発信します。
(学びをつなぐ学校づくり)
「中1ギャップの解消」や「義務教育9年間を見通した教育活動」に向け、小中一貫・小中連携の取組を一層進めます。令和6年度は、新たに「小中連携の日」を各中学校区毎に定め、小中相互に授業を参観し、研究協議や中学校区の課題に関する協議を行い、児童生徒の学びの質の向上と、小学校から中学校への円滑な接続を図ってまいります。
また「幼保小連携協議会」を継続して、認定こども園等と小学校の連携が自走できるよう支援し、各小学校におけるスタートカリキュラムの確実な実施と適切な見直しを通して、幼児期の学びと育ちを義務教育へとスムーズにつなげてまいります。
全校が移行してから3年が経過したコミュニティ・スクールは、新型コロナウイルス感染症の5類への移行後、地域と学校の連携・協働による教育活動が着実に展開されてきております。令和6年度は、より充実した地域学校協働活動が図られるよう、学校運営協議会に交付金を交付するほか、学校支援ボランティアの確保と地域コーディネーターのさらなる掘り起こしなどに努め、「学校を核とした地域づくり」の実現に向けた取組が実を結ぶよう取り組んでまいります。
生徒数の減少を踏まえ、将来にわたり持続可能な中学生の課外活動の場を確保するため、北海道の推進計画や本市の実情も踏まえながら、部活動の意義の継承・発展、さらに生徒にとって望ましいスポーツ・文化芸術環境の整備を目指します。そのために、専門的な知識や技術を持つ部活動指導員を増員し、地域の実情に応じたスポーツ・文化芸術活動の最適化を図るとともに、地域のスポーツ・文化関係団体や学校などで構成する協議会において部活動の地域連携・地域移行等に関する議論を本格化させてまいります。
浜益区の子どもたちのより良い教育環境を確保するため、令和8年4月の開校を目指し、保育園と一体型の義務教育学校の整備に取り組みます。令和6年度から建設工事に着手するとともに、引き続き学校や地域と丁寧な対話を重ねながら、学校の名称や教育目標、経営方針、教育課程の検討など、開校に向けた準備を進めてまいります。
学校の暑さ対策につきましては、夏休み期間の延長や、暑さ指数・熱中症警戒アラートを活用するほか、現在進めている冷房設備設置検討調査の結果がまとまり次第、可能な限り速やかに学校への冷房設備の設置を進めてまいります。
そのほか、樽川中学校にエレベーターと多目的トイレを新設するとともに、同校の屋上防水の修繕を行い、学校施設の整備に努めてまいります。
学校における働き方改革につきましては、これまでの様々な取組の結果、教職員が本来担うべき業務に専念できる環境へと徐々に移行してきてはいるものの、さらなる改革の推進が求められております。令和6年度は、第3期となる「石狩市立学校における働き方改革推進計画」を策定するとともに、市内全校において欠席連絡のオンライン化を進め、校務支援システムへの情報連携を可能にするほか、学校規模に応じて設置するカラー複合機・印刷機及び拡大プリンターを市教委が一元的に保守管理する体制を構築し、学校現場の負担軽減と業務の効率化を進めてまいります。
目標2 思いやりと豊かな心・健やかな体をもって、多様な人々と共に支え合う人を育てる
(健やかな成長を促す取組の推進)
「特別の教科道徳」を基軸とした豊かな心の育成、人権を尊重した教育による他者を思いやる心の育成のほか、あい風寺子屋教室等の地域学校協働活動も活用し、地域の様々な人々との交流や体験活動などを通して、自己肯定感や自尊感情を醸成するとともに、「豊かな心の育成」に向け、学校、家庭、地域の連携強化を図ります。
校則については、ここ2年間の取組により、学校の教育目標と社会の変化を踏まえ、児童生徒や保護者等の参画のもと、その妥当性を定期的に見つめ直すという意識が全校に定着いたしました。「こどもの年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する事項に意見を表明する機会が確保されるとともに、その意見が尊重される」というこども基本法の理念が学校現場のすみずみまで浸透するよう、引き続き学校への啓発に努めてまいります。
読書活動に関しては、コロナ禍で中止していたブックスタートボランティアの読み聞かせ再開、家読(うちどく)の推進など、本との出合いや本に親しむ機会の創出を図ります。また、学校図書館においては、学校司書の配置・派遣により児童生徒や教職員の情報ニーズに対応する資料の購入・更新を進め、適切な蔵書構築を行うとともに、読書支援、授業支援などに努めます。
本市の不登校児童生徒は、9年連続で増加しております。通級生が増加している「ふらっとくらぶ」の指導員を1名増員し、小学生や個別の配慮が必要な子どもにも通いやすい環境となるよう、支援体制を充実させます。また、不登校の児童生徒が学校復帰へのステップを踏み出すための環境づくりとして、引き続き校内への別室設置を促進するとともに、別室への教育支援員の配置を継続いたします。
いじめへの対応や不登校児童生徒への支援について、学校がチームで対応できるようにするため、引き続きスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置し、これらの未然防止と早期発見・早期対応に努めます。
児童生徒の体力と運動能力の向上を目指し、「体力の1校1プラン」や全学年での体力テストの活用を継続するとともに、中学校においては、専門的な知識や技能を有する外部指導者の派遣・指導により、きめ細やかな指導体制のもと、運動能力の向上、運動習慣の定着に努めます。また、小学校においては、放課後すこやかスポーツ教室などの地域学校協働活動により、放課後に児童が運動する機会を提供します。
関係機関と連携した健康教育や栄養教諭を中心とした食に関する指導により、健康で豊かな食生活に対する児童生徒の関心を高めるほか、成人向けの食育講座を開催します。また、食材価格高騰への対応として、国の交付金を活用して給食費を据え置き、安心・安全な学校給食を安定的に提供するとともに、今後も石狩産食材の活用を意識しながら、心身の健全な発達と望ましい食習慣の育成に努めます。
目標3 ふるさとへの愛着をもち、幅広い視野で新しい価値を創造し、活躍する人を育てる
(学びを活かす地域社会の実現)
「情操教育セカンドプログラム『THE MUSIC』」の実施校を拡大し、ジャズの鑑賞や演奏体験を通して中学生の豊かな創造性や感性を育んでまいります。
一人一人の学びへの意欲を喚起し、潤いのある生活と活力ある地域づくりを推進するため、市民が集い、生涯にわたる主体的で多様な学びを実践する「いしかり市民カレッジ」との協働や、市内文化芸術の振興を通したまちづくりに取り組む「石狩市文化協会」への支援など、市民の学習機会の充実に向けた環境づくりを進めます。
市民図書館では、さまざまな主体と連携し、引き続き「子ども司書養成講座」、「市民展示室」、「郵便局除籍本コーナー」など図書館利用の促進に向けた取組を展開するほか、「図書館まつり」や「科学の祭典」など、市民に親しまれるイベントを開催してまいります。
(ふるさとを学ぶ機会の充実)
石狩で生まれ、育ち、学んだ子どもたちが、ふるさと石狩への愛着と誇りを持つことができるよう、総合的な学習の時間での学習活動やテーマ展、体験講座、野外講座などを開催します。
開館20周年を迎える砂丘の風資料館で特別展を開催するほか、引き続き、歴史的価値のある旧石狩小学校円形校舎の公開及び道の駅の情報コーナーを活用した情報発信に取り組むとともに、市民図書館等と連携した講座や展示を行うなど、市民が文化財に親しみ、ふるさとを学ぶ機会を提供してまいります。
また、本市にとって重要な文化財の保存及び活用を図るため、市指定文化財の追加指定に向けて、候補となる文化財の価値を見極めるための調査を行います。
むすび
能登半島地震の被災地支援のため、市内の中学生が、冬休み明け直ちに校内で義援金を募り、多くの生徒がこれに応じました。ここに示された石狩の子どもたちの主体性、共感力と行動力からは、次世代の社会の担い手としての確かな成長と頼もしさを感じとることができると思います。
昨年策定された国の教育振興基本計画では、子どもたち一人一人が幸福や生きがいを感じられる「学び」を保護者や地域の人々とともに作ることで、学校に携わる人々のウェルビーイングが高まり、その広がりが子どもや地域を支え、さらに世代を超えて循環するというあり方が示されています。そうした姿に石狩市が近づいていけるよう、市長部局ともしっかりと連携し、全力で取り組んでまいります。
市民の皆さま並びに市議会議員各位の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、令和6年度の教育行政執行方針といたします。