市長所信表明(令和元年7月11日)
市長所信表明
令和元年7月11日(木曜日)
令和元年第2回石狩市議会定例会
はじめに
令和元年第2回石狩市議会定例会の開会にあたり市政運営に関する、私の所信の一端を申し述べさせていただきます。
先の石狩市長選挙におきまして市民の皆さまのご信任をいただき、石狩市長としての重責を担うこととなりました。
この上ない光栄でありますとともに、身の引き締まる思いであります。
この度の選挙を通じ、市民の皆さまの石狩を想う気持ちをお聞きし、また、豊かな地域づくりにご尽力されております姿に接し、これまでの田岡市政を引き継ぎ、市民協働のまちづくりを進め、地域の宝を守り育みながら活力あるいしかりを築いていくことが、私の使命であるとの決意を新たにしたところであります。
石狩市長として、市民の皆さまの負託にこたえ、石狩市の発展のために全力を尽くして参りますので、議員各位ならびに市民の皆さまのご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
さて、5月の月例経済報告によると、実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比2.1パーセント増となり、2四半期連続のプラスでありましたが、GDPの過半を占める個人消費はさえず、本年10月には消費税率10パーセントへの引き上げも予定されており、景気の先行きは楽観を許さない状況です。
本市の財政状況におきましては、地方交付税などの依存財源が歳入の多くを占めていることから、国の制度改正等の影響を受けやすい状況にあります。
人口減少や高齢化の進展、消費税率の引き上げなど地方財政を取り巻く状況は刻々と変化しており、特に本市独自の課題として普通交付税の合併特例措置が令和3年度に終了するなど、今後も財政健全化に向けた取組をより強固に進めていかなければなりません。
また、市財政の地方公会計制度の整備による財政の見える化や、市の施策及び社会経済情勢の変化に対応した適切な組織体制のあり方については、引き続き検討を行って参りたいと存じます。
この4年間の本市の人口減少率は1.7パーセント、高齢化率は28.8パーセントから33.0パーセントと増加し、今後も人口減少・少子高齢化の傾向は続くものと推計されていますことは、極めて深刻な政策課題であると認識しております。
これらの問題は市が単独で対応できるものではなく、国や北海道、圏域等の連携が必須であります。
そのため、首都圏への若者の流出抑制や、地域ごとの特色や強みを活かした強い経済圏域、世界に通用する魅力ある観光圏域の形成を目指すため、本年4月より、新たに札幌市を連携中枢都市とし本市を含む12市町村で構成する「さっぽろ連携中枢都市圏」を形成致しました。
本市におきましても、お示しする施策大綱を柱に、札幌圏域と効果的に連携しつつ、石狩市のまちの強みを活かし、市民が住んでよかったと思えるまちづくりを目指して参りたいと存じます。
施策の大綱
それでは、市民の皆さまにお約束をさせていただいた、主要施策に関する所信を申し上げます。
まず始めに「子どもの未来づくりは石狩の未来づくり」についてであります。
急激な少子化や核家族化など、家庭や地域を取り巻く環境が大きく変化する中で、次代を担う子どもが健やかに生まれ育成される社会の形成が重要な課題となっております。
このため、あらゆる主体が、子どもと子育てを応援する社会の一員として、当事者である子育て世代が安心して子どもを産み育てることができる環境づくりに力を注ぐことが求められております。
特に、成長期までの子どもにおいては、医療への受診機会が経済面などの社会的環境によって抑制されることがあってはなりません。子どもの早期治療の促進と心身の健全な育成に資する環境を整えていくため、子どもの医療費助成を小学6年生まで拡大して参ります。
児童虐待など子どもが犠牲となる痛ましい事案が後を絶たない昨今、地域社会で子どもを見守り、支えることのできる環境整備が求められております。
子どもの居場所対策と致しましては、樽川地区の児童数増加などを受け、さまざまな年代の子どもや子育て中の保護者等の共生・交流拠点機能確保のため、子育て支援と公園機能との相乗効果を併せ持つ市内初の公園内交流施設を石狩ふれあいの杜公園内に整備致します。
また、就学や就労などの生活面で困難を抱える若者の居場所対策と併せて、8050(はちまるごーまる)問題のような深刻化する社会的課題にも対処していくため、相談支援体制の強化に努めて参ります。
子育て世帯に対しましては、「妊娠から子育てまで切れ目ない支援」をテーマに、全ての母親が安心して子育てできる環境整備を進めて参ります。
本市で生まれ育った若い世代に対しましては、ふるさとに戻り就職しやすい環境づくりを進めるため、新規学卒者を対象とした奨学金返済支援制度の創設を進めて参ります。
また、保護者の多様な働き方や社会参加の希望に応えるため、厚田区と浜益区においても0歳児保育に対応できる体制整備に取り組むほか、さらなる保育の量と質を確保できるよう、適切な保育サービスの提供と併せて、保育人材の確保対策を進めて参ります。
以上、申し上げました取組を計画的に推進するため、「(仮称)いしかり子どもビジョン」を策定し、基本的な施策の方向性をお示しして参ります。
本年度は、首長が定める「教育大綱」と、教育委員会が策定する「石狩市教育プラン」の両計画の見直しの年です。総合教育会議も活用するなど、教育委員会との意思疎通を図り、将来の社会変化も見通した上で教育における諸課題やあるべき姿を共有し、新時代を担う人材育成に寄与できる計画を策定して参りたいと存じます。
次に「共生社会の構築」についてであります。
本市はこれまで「市民参加」を実現させるため平成13年に「行政活動への市民参加の推進に関する条例」、平成20年に「協働によるまちづくり」をさらに確固としたものにするための「自治基本条例」、平成25年には「手話を言語として認知し、市民が手話の広がりを実感できる」まちを目指して「手話に関する基本条例」を制定致しました。
本市は市民がまちづくりに積極的に参加する土壌があり、市民力がまちの発展の原動力となっています。社会活動を支える元気な高齢者のためには「ふれあいの場」の創出を、情報を得ることに困難を感じている障がい者には、それぞれの障がい特性に応じた手段により情報を取得し、コミュニケーションしやすい環境づくりを、また改正入管法施行に伴い増加することが予想される外国人に対しては、市民として安心して生活できる環境整備を進める必要があると認識しております。
誰もが相互に人格と個性を尊重し支えあい、人々の多様なあり方を相互に認めあえる全員参加型の社会モデルの構築に取り組んで参りたいと存じます。
次に「石狩市の豊富な資源の活用」についてであります。厚田区が目指す将来の姿「近説遠来(きんせつえんらい)」をキーワードとして昨年4月にオープンした道の駅石狩「あいろーど厚田」は、当初の想定を上回る多くのお客さまに足を運んでいただいております。石狩湾を一望できる展望デッキがあり、晴れた日にはさわやかな潮風を感じ、日本海に沈みゆく夕日の美しさは何度訪れてもその感動が薄れることはありません。
こうした景観を楽しみに足をお運びいただいているお客さまに、さらなる石狩北部地域の魅力を伝えるため、道の駅を中心とした周遊観光につなげるための取組を進めて参ります。
また、自転車を活用して生活の質を向上することを目的とした「自転車活用推進法」に基づき、地方版自転車活用推進計画を本年3月に策定しております。日本海や暑寒別山系などの絶景を求めて高まるサイクリングニーズに対応し、自転車が安全で快適に走行できる通行空間の確保や、受け入れ環境の充実に向けた整備を進めるとともに、サイクリングやトレッキングといった体験型観光につきましても、道の駅を核に、近隣市町村と連携した広域での観光振興をよりスピード感をもって取り組んで参ります。
また、交流人口の増加に対応するためには市民を中心としたホスピタリティの醸成についても重要な課題と認識しております。地域観光資源のブラッシュアップを行い、さらなる観光客の獲得に向け、官民協働による着地型観光開発に取り組んで参ります。
本町地区は本市の発祥の地であるとともに、道内最大級を誇る石狩浜海水浴場「あそびーち石狩」、国内でも希少な自然草原が残されている石狩海岸、さらには180種に及ぶ海浜植物が自生するはまなすの丘公園など本市を象徴する空間となっております。
海、川、植物、歴史などの固有の資源を有機的に結びつけ、新たな本町地区の魅力創造に向けたプロジェクトの検討を進めて参ります。
本年5月、北前船の日本遺産構成文化財として「旧 白鳥番屋(きゅう しらとりばんや)」等4つが追加認定されました。10月には北前船(きたまえぶね)寄港地フォーラムを小樽市と合同で開催し、国内外から多くのお客さまをお迎えします。「北前船」によってもたらされた文化や資産、魅力を広く世界に向け発信する機会となるよう、取り組んで参りたいと存じます。
次に「災害に強いまちづくり」についてであります。
昨年9月の北海道胆振東部地震により引き起こされた北海道全域においてのブラックアウトにより、集中型電力システムの脆弱性に対する危機感を全ての北海道民が共有致しました。災害等による電力系統事故時における供給信頼度を高めるためには、分散型電力システムへの改革が必要であり、その中でも風力や太陽光、バイオマスといった再生可能エネルギーの活用はゼロ・エミッションの観点からも有効と認識しており、エネルギーのベストミックスに向けた取組を継続して参ります。
また、災害発生時における災害対策本部や避難所など災害対策上重要な公共施設に関して非常用電源対策を講じるとともに防災備蓄品を配備し、さらには自助・共助推進のための防災拠点創出の検討をするなど、災害に備えた機能強化を引き続き行って参りたいと存じます。
次に「超高齢社会と人口減少社会に向けた取組」についてであります。
高齢化と人口減少により都市部においても社会基盤規模の見直しが迫られております。特に上下水道に関しては、市民生活に欠くことのできない基礎的な行政サービスです。だからこそ老朽化が進む施設を適切に更新し、将来にわたり持続性を確保するとともに、市民の皆さまが安心してご使用いただけるよう、時代に即した上下水道政策のあり方について検討して参ります。
1970年代の花川北・花川南地区の宅地造成で転入されてきた世代が高齢期を迎え、本市の人口の約7割が暮らす両地区の高齢化率も高くなっております。高齢者の方々がいつまでも住み慣れたまちで健康で活き活きと暮らせるまちづくりを目指し、高齢者の総合相談窓口である「地域包括支援センター」の機能・体制強化を進めて参ります。
また、高齢となり自動車の運転が困難となっても安心して地域で生活し続けることができるよう、交通空白地の移動環境の向上について調査・検討して参ります。
浜益区の川下・柏木コミュニティセンターについては、その代替施設について再配置の検討が必要となりますことから、地域での議論を踏まえつつ速やかに方向性を示して参ります。
合併時をピークに人口減少が予測されている状態にある時にこそ、まちづくりの指針となる計画が必要です。
10年後、20年後においても本市の歴史・文化・自然環境をはじめとしたさまざまな魅力を活力に持続可能なまちづくりを推進していくため、「都市マスタープラン」「水とみどりの基本計画」「住生活基本計画」「立地適正化計画」をひとつにまとめた次世代のグランドデザインを策定致します。
また、人口減少社会において、空き家、空地、所有者不明土地などの問題は本市においても顕在化しております。官民連携の事業スキームを早期に確立し、空き家や空地等の利活用に向けた検討を進めて参ります。
除排雪に関しましては市民の皆さまからの要望や苦情が最も多い案件と認識しております。公共交通の定時運行に寄与し、冬場において安心して生活できるよう、今の時代に対応した本市にふさわしい雪克服の方法などについて検討を進めて参ります。
今後、社会の成熟期を迎え、われわれはそのイメージの明確化を求められております。人口減少が続けば行政サービスの低下につながりかねません。結婚・出産・育児支援による人口流出防止対策と、市の魅力アップや雇用創出による人口流入につながる人口維持政策に向けた取組を継続して参りたいと存じます。
次に、「石狩市の今後の成長軸」についてであります。
石狩湾新港地域は市税の安定的な確保に寄与しており、法人市民税、固定資産税、都市計画税の主要3税において40パーセントを占めています。
この地域の核となる石狩湾新港は、北海道の日本海側を支える拠点的な港湾として、取扱貨物量も順調に増加しております。
一昨年には、国土交通省より全国第1号の農水産物輸出促進計画の認定を受け、昨秋には、北海道米36トンが中国に輸出されました。
さらに、昨年9月には北海道ガスが、本年2月には北海道電力がそれぞれLNG火力発電所の運転を開始したほか、港湾内においては、洋上風力発電の現地着工を目前に控えるなど、物流の要所としての機能のみならず、エネルギー供給という視点においても、重要な拠点として、今後も持続的な成長が期待されております。
また、今や北海道を代表する産業拠点である石狩湾新港地域においては、企業立地が着実に進み、現在650社を超える企業が操業し、さらには風力や木質バイオマスなどの再生可能エネルギーの集積が進んでおります。
このことを地域経済の活力として取り込むため、地域内の一部エリアにおいて、全量再生可能エネルギーを供給することを可能とする「再エネ電力100パーセントエリア」の創出に向けて取組を進めております。事業活動に再エネ電力を活用することは、ESG投資(環境Environment・社会Social・統治Governance)が注目されている近年、SDGs(えすでぃーじーず)(持続可能な開発目標)と併せて、世界経済においても大きな時代の潮流となっており、再エネ電力を求める企業が増加しております。ここに集積する再エネ電力を供給する仕組みをつくり、エネルギーの地産地消を実現することで、多大な電力を消費する企業の集積を図るなど、石狩湾新港地域の新たな可能性を創造して参ります。
一次産業の振興に関しましては本市の重要な成長軸であると認識しております。農業経営を取り巻く環境は、経済のグローバル化や農産物貿易の自由化の進展、米消費の減少、少子高齢化による国内需要縮小等の厳しい環境におかれております。さらに農業者の高齢化に伴う後継者の育成と雇用労働力不足の解消は本市の喫緊の課題です。こうした農業を取り巻く環境の変化や課題を的確に捉え、安心・安全な農業が持続できるよう、地域特性を活かしたさらなる農業発展と地域活性化を目指して参ります。
温室効果ガス排出削減目標の達成や山地災害発生防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する目的で「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が、本年4月1日に施行され、森林環境譲与税が各自治体に譲与されることとなりました。
森林の有する地球温暖化防止や災害防止・国土保全、水源育成等のさまざまな公益的機能は、われわれに広く恩恵を与えるものであります。次世代に豊かな森林を引き継ぐため、森林環境譲与税を活用した仕組みづくりを検討して参ります。
本年は新元号のスタートとともに、本市にとっても20年ぶりに市長が交代する節目の年となります。田岡前市長がこれまで道内のみならず、首都圏等において築き上げた人脈や信頼は令和の時代にも確実に引き継がなければなりません。本年10月に、市内起業者や、インターンシップの大学生等を招き、東京において石狩シティープロモーションを開催し、本市を支える関係人口の創出を図って参りたいと存じます。
以上、施策の大綱を申し上げさせていただきました。
むすびに
私は国、道、市と三つの異なる環境において39年間にわたり行政経験を積み重ねて参りました。平成の始まりまでのバブル経済期は、地域はリゾート開発で湧き上がっていたと記憶しております。企画、資金、ノウハウ、運営の全てが外部から導入されるという典型的な外来型でした。その後バブルが崩壊し、沈静化した10年後に市町村合併が始まりました。
田岡前市長の5期20年にわたる市政に関しましては、土地開発公社の解散など将来に大きな財政負担を残さないことを念頭にご尽力され、また石狩湾新港地域への企業誘致にも熱心に取り組まれ、これまで行ってきた播種的政策は確実に実を結び、税収の増加や石狩市の知名度アップという形で現れてきていると思っております。
また、何より市民協働のまちづくりに対する熱い思いは、今後も深化させ継続して取り組む必要があると感じております。
人口減少に向かっていく時代において、年齢、性別、障がいの有無や国籍等にとらわれない全ての人がまちづくりに参加する、共生と共創の社会構築が既に始まっております。
「凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない」
Winston Churchill(ウィンストン・チャーチル)の言葉であります。人が最大に能力を発揮する時は大変なことに立ち向かっている時であり、逆境の中にこそチャンスを見い出す機会も多く、逆風の時こそ高みを目指すことができます。
そして、その逆風の中で得られた知識や培われた経験こそがわれわれを強くし、未来を創るエネルギーとなります。
こうしたチャレンジ精神を忘れず市民が一丸となり、新時代へ向け確かな石狩の礎を築いて参ります。
以上、市長に就任し、市政を担当させていただくに際して、それに臨む私の所信の一端を申し述べさせていただいたわけでありますが、これらを具体的に市政運営に反映し、着実に実施していくには、議員各位、そして市民の皆さまのご理解、ご協力をいただかなくては到底成し得ないものであります。これらの市政運営に、より一層のご指導、ご協力をいただきますようよろしくお願い申し上げ、所信表明とさせていただきます。