市長所信表明(令和5年6月9日)
市長所信表明
令和5年6月9日(金曜日)
令和5年第2回石狩市議会定例会 市長所信表明 [PDFファイル/308KB]
はじめに
令和5年第2回石狩市議会定例会の開会にあたり市政に関する私の所信の一端を申し述べさせていただきます。
私は、このたびの選挙結果を受け、約57,700人の市民をはじめ、多くの企業、団体等が躍動し、石狩の輝きをさらに前へと進めることを目指し、市長の職務を再び担うこととなりました。
決意を新たにするとともに、その職責の重さを強くかみしめております。
一期目を振り返りますと、新型コロナウイルスの流行に加え、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とし、エネルギーや食料価格が高騰するなど、世界各国においてはインフレが加速しました。
国際通貨基金(IMF)が発表した最新の世界経済の見通しによると、成長率については、昨年の3.4パーセントから今年は2.8パーセントへの減速が予測されるなど、依然としてその先行きに不透明感が漂っております。
一方、国内の情勢に目を転じますと、政府は3月の月例経済報告において、「一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している」という2月の基調判断を維持しましたが、輸入小麦価格や電気料金に加え、人件費や輸送費の上昇が重くのしかかり、物価の高騰は私たちの生活に大きな影響を与えております。
本市の財政状況については、石狩湾新港地域における企業の立地や設備投資に加え、近年は転入人口が転出人口を上回るなどといったことが要因となり、市税収入は堅調に推移しております。
石狩市長として、本市の強みを活かした、「住んで良かった、住みたいと思われる魅力あるまちづくり」「投資したいと思う先駆的な施策の推進」に引き続き取り組み、石狩市の発展のために全力を尽くしてまいりますので、議員各位ならびに市民の皆さまのご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
施策の大綱
それでは、公約に基づき、主要施策に関する所信を申し上げます。
まず始めに「未来を担う子どもたちの育み」についてであります。
近年、少子化や人口減少に歯止めがかからず、貧困・虐待・いじめなど、子どもたちを取り巻く環境は深刻化しています。
こうした子どもをめぐるさまざまな課題を解決するためには子どもの権利を守り誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しすることが必要不可欠です。
子ども施策を強力に進めるための司令塔機能の発揮、こども基本法の着実な施行を掲げた「こども家庭庁」が本年4月に創設されました。常に子どもにとって最善の利益を第一に考えることができるよう、本市においても組織改編をはじめ、国の動向を注視しながら子ども医療費に関する公費負担のあり方の検討など、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れた広範な議論をスタートさせたいと考えております。
日本国憲法や「児童の権利に関する条約」で保障されている「子どもの権利」に対する大人たちの認識や理解を深め、未来を担う子どもたちの視点に立ったまちづくりを目指すことを目的とした、「(仮称)子どもの権利に関する条例」の制定作業に着手いたします。
昨年オープンしたふれあいの杜子ども館は、子どもや親子が安心して訪れることができる居場所として多くの市民に親しまれています。引き続き、都市公園内の立地を活かした特徴的な活動を取り入れ、子どもの健全な発達を支援できるよう地域と連携して取り組んでまいります。
学校施設は、地域住民にとっても生涯にわたる学習、文化、スポーツなどの活動の場であり、非常災害時には避難生活のよりどころとしての重要な役割を担っています。
しかしながら市内の多くの学校は、昭和50年代に建築され、老朽化が一斉に進んでいるなど、適切に維持管理を行っていく必要があります。
そのため、これら老朽化した学校施設は、耐久性の向上や機能の復元、環境改善等を進め、全ての人が安全で快適に学ぶことができる良好な環境の整備を図ってまいります。
どのような環境に生まれ、どのような状況で育っても、子どもたちが笑顔で暮らせる、そうした「こどもまんなかまちづくり」施策を積極的に推進してまいりたいと存じます。
次に「安心して暮らせる豊かでしなやかな地域社会の構築」についてであります。
一次産業の振興に関しましては、本市の重要な成長軸と認識しております。
食は命の源であり、私たち人間が生きていくためには欠かせないものです。多くの魅力的な食材が市内にあふれているものの、一次産業従事者の担い手不足は長年にわたる大きな課題となっております。
そのため、次代の農業を担う新規就農者や農業後継者、認定農業者など多様な人材の定着および経営発展に向けた育成・支援を行うとともに、不足する労働力の確保、経営体を支える組織の育成・強化を図り、農業経営の安定と効率化を目指します。また、ドローンなどを活用したスマート農業の推進による農作業の省力化を図ることで、魅力ある持続可能な地域農業スタイルの構築につなげてまいります。
林業につきましては、森林資源の循環利用の確立による成長産業化と地球温暖化防止など、森林の有する多面的機能が発揮される森づくりに向け、森林環境譲与税も活用した計画的な森林整備と資源利用を進めてまいります。
水産業については、水揚げされた魚介類の鮮度を保持し、品質の確保、向上といった付加価値を高め、所得の増加につながる取組を進めてまいります。
商工業については、コロナ禍により影響を受けた事業者に対しては、各種制度の活用などにより、経営の安定化や事業継続に向けた取組を商工会議所、商工会など関係機関と連携し進めてまいります。
私たちの暮らしは、地域の人々の元気な活動に支えられていることから、一人ひとりが安心して生活できる環境づくりは、まちづくりにおいても欠かすことのできない視点です。
住環境の整備につきましては、住み慣れた住宅のリフォームなど、ニーズに応じた改修等が行えるよう支援を継続し、長く住み続けることができる住環境の向上を図ってまいります。
高齢となっても、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、外出を促す施策の検討や、保健事業と介護事業を一体的に取り組むことにより健康寿命の延伸を目指してまいります。
今年は36年ぶりに、本市において全国高等学校総合体育大会ソフトボール競技大会が実施されます。競技から運営まで高校生が主体となる祭典です。こうした機会を通して、スポーツが持つ魅力を伝え市民の健康づくりへとつなげてまいります。
近年は全国的に多発し激甚化している災害から、市民の生命・財産、安全・安心な暮らしを守るため、「地域防災力」の充実強化が求められています。
大規模災害時においてますます重要となってくるのは、自助・共助・公助が効果的に推進されることです。市民・事業者・市職員が日頃から防災・減災を意識し、行動することが当たり前となる社会を築くため、地域防災の担い手を育成してまいります。
一人ひとりが安心して生活できる実感を得るとともに、豊かで強い社会をつくり、地域に自信と誇りを持って次代に引き継ぐ社会を構築してまいりたいと存じます。
次に「DXによる市民生活の資質向上と新たな価値の創造」についてです。
在宅ワークの浸透や、非接触型サービスの提供などコロナ禍はDX推進の大きなきっかけとなりました。
本市ではこれまで、キャッシュレス決済やマイナンバーカードによる行政サービスの拡充等に取り組んでまいりました。
市民の利便性向上の観点から、ホームページやポータルサイト等において24時間365日手続きができるオンライン市役所を目指してまいります。
また、将来を見据えた行政情報や防災情報の、さらなる広域化や即時化につながるシステムが求められていることから、新たな発信手法の検討を進めてまいります。このシステムは防災情報のみならず、豊富な地域情報を配信することも目指しております。
このような情報配信を行い、地域・防災情報配信システムの構築を目指してまいります。
行政が抱える課題の解決と新たな価値の創造に向けて、市民ファーストの視点に立ち、デジタルが暮らしに浸透した、「人にやさしいまちづくり」を目指してまいりたいと存じます。
次に「石狩湾新港地域の未来創り」についてです。
石狩湾新港地域につきましては、近年、郊外型の大型小売店舗や市内で初となるビジネスホテルが開業するなど、これまでなかった業種の進出により新たな魅力が増しております。
3月末には、さまざまなニーズに迅速に応えるとともに、地域交流の場となるような施設が立地できるよう、都市計画を大幅に見直しましたことから、地域の新たな魅力創造とプレゼンスの向上につなげてまいります。
再生可能エネルギーを100パーセント活用するIT企業やデータセンターなど情報関連産業の集積を引き続き進めるとともに、エネルギーの地産地活に向けた、需給バランスの構築に係る検討業務を進めてまいります。
石狩湾新港地域は分譲率が8割近くに達し、大型案件に対応できる土地が少なくなってきておりますことから、長期未着手となっている都市施設の利活用や、新たな産業空間用地の確保に向けた検討を進めてまいります。
時代の変革により、これまでの職住分離の開発から都市と調和した産業空間を形成し、再生可能エネルギーの地産地活と環境先進都市ならではのビジネス価値の創造を推進してまいりたいと存じます。
次に「次世代につなげる社会インフラの構築」についてです
誰もが移動しやすい社会の創出は、交通分野の課題解決にとどまらず、まちづくり、観光振興、さらには健康、福祉、教育、環境等のさまざまな分野で大きな効果をもたらします。
交通事業者と連携し、地域公共交通の「リ・デザイン」を進めるため、シン・交通計画の策定に着手します。
また昨年度、交通事業者等と協力し、実施したデマンドサービスの実証課題等を整理し、地域に根差した交通サービスの導入に向けた検討を続けてまいります。
札幌から石狩の間は人口移動が多いものの、その公共交通機関はバスに限られるため、冬季の定時制や輸送能力に大きな課題を抱えています。そのため、環境にやさしい次世代型の新たな交通手段についての検討をスタートさせます。
花川地区と新港地区を結ぶ「花川通」の延伸工事に伴い、市街地の既存道路において、開通後に大型車両の増加が予想されることから、アスファルト舗装の強度と耐久性を高め、強靭化に取り組んでまいります。
緑苑台地区につきましては、西地区の造成が開始されたことから、これに合わせて周囲の土地利用を見直し、さらなる地域の魅力向上につなげてまいります。
除排雪につきましては、除排雪車両や除雪オペレーターの不足など、冬季における生活環境の確保に深刻な問題が生じております。地域の状況把握と検証に努め、時代に対応した持続可能な除排雪体制の構築を目指してまいります。
大雨などによる水害を防ぐため、河道を浚せつし、流下能力を向上させ、管理河川の適切な維持管理に努めてまいります。
我が国が直面する人口問題や環境対策に対処しながら、魅力ある社会を持続的・安定的に地域で維持していく必要がありますことから、集約的都市構造の実現に向けて取り組んでまいりたいと存じます。
次に「脱炭素社会と地域共生社会の実現に向けた取組」についてです。
2050年カーボンニュートラルを達成するためには、地域の脱炭素化の取組が欠かせません。そのためには、地域資源である再生可能エネルギーの活用が必要不可欠であり、あわせて地域経済の活性化や災害に強い地域づくり等、社会課題の解決に貢献する事業となることが肝要です。
本市は昨年、第一回脱炭素先行地域に選定され、脱炭素のモデルとなる取組が求められております。
公共施設への再生可能エネルギーや省エネ設備の導入をはじめ、それらを活用した公共交通の実現に向けた検討を進めてまいります。
先日、石狩市沖の海域が「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」に基づく「有望な区域」に追加されました。時には暴風雪などを引き起こし、生活の障壁となり得る風を本市にとっての重要な地域資源として位置づけ、今まで以上に国や各関係者、利害関係者等としっかり連携し、環境との共生に向けた議論を重ねながら、次のステップである「促進区域」の指定に向けての取組を進めてまいります。
ごみの広域処理につきましては、環境負荷の低減につながりますことから、引き続き札幌連携中枢都市圏の一員として札幌市等と議論を重ねていくとともに、プラスチックの資源循環につきましては「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」に基づいた新たな処理方法について検討を進めてまいります。
多文化共生は少子高齢化社会において、本市のみならず全国的に欠かせない視点となっております。
本市には現在多くの外国人の方が居住されております。文化や言葉の違いを乗り越え、より多くの方と交流を深め、お互いが安心して心豊かに暮らせる環境づくりは重要な課題でありますことから、日本語教室等の交流の場を創設し、多文化共生の推進に寄与してまいります。
われわれはグローバル化に伴い多種多様な価値観への対応が求められる一方で、地球温暖化や新型コロナウイルス等、全世界で共有し解決していかなければならない問題も抱えております。
こうした取組を市民の方々と進めるとともに、誰もが支えあい自らの能力を発揮し、自分らしく生きられる社会を実現させることが必要です。
環境・経済・社会の総合的向上とともに多様性を尊重する共生社会づくりを進め、持続可能な未来に向けた取組を目指してまいりたいと存じます。
最後に「厚田区と浜益区の未来創造」についてです
本年4月に開業5周年を迎えた道の駅石狩「あいろーど厚田」は国土交通省が調査したスタンプラリー完走者が選んだ北海道「道の駅」ランキング2021において「ゆっくり休憩できたと感じた道の駅 第7位」「長時間滞在したい道の駅 第8位」「再度訪れたい道の駅 第8位」にそれぞれ選ばれるなど、地域が「近説遠来」をテーマに目指してきた「滞在型」の道の駅として着実に成長してきていると感じております。
また、浜益区においては、保育園一体型の新しい義務教育学校の整備について、令和8年4月開校を目標に取り進めております。
0歳児の受け入れにも対応した保育施設を併設し、小学校から中学校までの15年間に及ぶ一貫した保育教育環境を整備することで、地域の特色を充分に活かしながら、子どもにとって新たな学びの場になることが期待されます。
両区では地域おこし協力隊や集落支援員の活躍や、新たな担い手確保事業の立ち上げなど、地域の魅力、ニーズを活かした活動が注目されております。
合併20年の節目を迎える令和7年度は一つの区切りとして、地域の特色や状況に応じた地域自治、地域振興のあり方について検討を進めてまいります。
厚田区や浜益区が持つ豊かな自然の恵みは貴重な財産です。都市と自然が調和した自然共生社会の実現により、生涯にわたって生きがいと誇りを持って暮らすことができる地域をつくってまいりたいと存じます。
以上、政策の大綱を申し上げさせていただきました。
むすびに
4月に札幌市で開かれたG7気候・エネルギー・環境大臣会合は、温室効果ガスの排出削減策が取られていない天然ガスを含む化石燃料使用の「段階的廃止を加速させる」との共同声明を採択しました。
また声明では、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機下でも、再生可能エネルギーを拡大する必要性が確認されました。
我が国におけるエネルギーの歴史を振り返りますと、鎖国時代は自然由来の資源を適切に利用することで、独自の循環型社会を形成していました。
そして1854年、日米和親条約の締結により開国を行い、近代化を進めました。
世界では植民地化が広がり、我が国もその危険にさらされながら、2度の世界大戦、そして戦後の復興を経て経済は急成長し、日本の国内総生産(GDP)は2021年度、アメリカ、中国に次ぐ第3位となっております。
化石燃料や鉱物資源等の地下資源に乏しい我が国では、それらの多くを海外からの輸入に依存しており、年間約20兆円の国富が海外に流出し続けております。
また、エネルギーの自給率は2019年度12.1パーセントであり、ほかのOECD諸国と比べても低い水準です。
近年、深刻であるのはロシアによるウクライナ侵攻に端を発した「国際エネルギー市場の混乱」で、市場における需給のバランスは大幅に崩れ、世界的にエネルギー価格が高騰する状況へとつながっております。
安定したエネルギー源の確保は大きな課題であり、その多くが純国産エネルギーである再生可能エネルギーの活用が期待されています。
再生可能エネルギーは単に二酸化炭素排出量を抑えるだけでなく、我が国の本質的課題であるエネルギーセキュリティーに大きく貢献する点にもっと着目する必要があります。再生可能エネルギーの比率を高めておくことは、国家規模での万が一の備えにほかなりません。
こうした考えのもと、地域資源から生まれたエネルギーが地域内で循環する社会構築を目指してまいります。
そして、われわれ個人の単位においても、社会全体の行動変容に向けたライフスタイルの転換が必要です。DXの活用などにより、「脱炭素」「循環経済」「分散・自然共生」という多角的な切り口によるアプローチでSDGsに取り組みつつ、私たちや将来世代が安心して暮らすことができるグリーン社会をつくっていくことを目指してまいりたいと存じます。
「夢なき者は理想なし、理想なき者は信念なし、信念なき者は計画なし、計画なき者は実行なし、実行なき者は成果なし、成果なき者は幸福なし、故に幸福を求むる者は夢なかるべからず」渋沢栄一の言葉です。
市長になって4年がたちました。石狩市は、あふれる市民力や多種多様な企業等、大きな財産を無限に抱えている「まち」であることを再認識した4年間でもありました。人工知能の研究開発がいくら進んでも最終的に社会を動かしていくのは人です。多くの人が夢を持ち、力を存分に発揮できる環境を創造してまいりたいと存じます。
以上、二期目の任期に臨むにあたり、所信の一端を申し述べさせていただきましたが、これらを具体的に市政運営に反映し、着実に実施していくには、議員の皆さま、そして市民の皆さまのご理解、ご協力をいただかなくては到底成し得ないものであります。石狩の輝きをさらに前へと進めてまいりたいと存じますので、市政運営により一層のご指導、ご協力をいただきますようよろしくお願い申し上げます。