いしかり博物誌/第65回
第65回 風とともに生きる木々 子づくりは風が頼り
石狩市の防風林に生育する高木種は30から40種、このうち半分は「風媒花(ふうばいか)」。本数で言えば、直径30センチメートル以上のもののおよそ7割にあたります。
風媒花とは、花粉を風に運んでもらうタイプの花をいいます。これに対して、花粉を虫に運んでもらうタイプは「虫媒花(ちゅうばいか)」です。
南の地方の樹林では虫媒花をもつ樹種が多いのに対し、北国では風媒花をもつ種が多いのが特徴です。
なぜ風に花粉を運んでもらうタイプの木が北国では多いのでしょうか。それは、木々が寒い冬を過ごすために落葉することや、早春に雨が少なく風が強い気象条件があることが大きく関係していると考えられます。
気温が上がり始める早春、葉が開く前の林の上部では、木々の花粉は、葉に遮られることなく、強風に吹かれて飛ばされます。雨の少なさは、花粉が雨に洗い落とされるのを防ぎます。
また、風は花粉を運ぶ先を選んではくれませんので、同じ種類の木が周囲にたくさん生えているほうが、花粉は簡単に目的地(同種別株の雌しべ)に到達することができます。
北国の寒冷な気候下では、生育する樹種は少なく、ひとつのまとまった林に同じ樹種がたくさん生育します。このことも、木々が北国の林で風媒花をつけることに都合がいいものと考えられます。
シラカバに代表される風媒花樹木の花粉の飛散は、時に私たちをアレルギーで悩ますやっかいものですが、厳しさ残る早春の環境に適応して子孫づくりに励む、木々の生活の1コマであることも忘れないでくださいね。
(内藤華子 広報いしかり2005年5月号掲載)
春先の木の花については、いしかり博物誌第31回でも紹介していますので、ご覧ください。

林下の草本は早々に葉を広げていますが、上層木はまだ広げていません。主な樹種であるハンノキ・ハルニレ・ヤチダモ・ミズナラは、早春からこの時期までに咲く風媒花です。

垂れているのが雄花、上を向いているのが雌花。

色は黒っぽい赤。
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