いしかり博物誌/第33回
第33回 新たに見つかった銛の柄 49号人は海でも漁をしていた?

何気なく、横目で見ながら通り過ぎようとしてもなんだか気になってもう一度見たら、それが意外な発見につながったという経験はありませんか?
先日、紅葉山49号遺跡の木製品の整理をしていて、どうも気になる先端に切れ込みがある木製品があったので、もう一度よく見直してみたら、なんとそれは銛の柄でした。しかもこの木製品は図のように複数の柄を組み合わせて使う形式の銛の一部と考えらます。このタイプの銛は、投げて使用するもので獲物に刺さったらこの部分だけが残る離頭銛と呼ばれるものです。
離頭銛は、一般に大型の魚や海獣に用いられる場合が多く、このことはこの遺跡の人々がサケマスだけでなく、石狩川本流から海に出て漁または狩猟をしていた可能性が高いことを示しています。残念ながら今のところこの銛でどんな獲物を獲っていたか不明です。ただ、49号遺跡ではクジラの骨をはじめ数種類の動物骨がありますので、このなかに離頭銛で獲られた動物が含まれている可能性もあります。
銛の柄の先端には長さ4から5センチメートル以上で、重さ10グラム前後の石銛と呼ばれる大型の柄のある鏃がつけられたものと見られます。このタイプの鏃は縄文時代中期になると全道的に増える石器で、49号遺跡でもこれまで数十点出土しています。その多くは黒曜石製です。
本遺跡の場合、使われた黒曜石はその特徴から後志管内赤井川村産と考えられます。
ところで49号遺跡ではもう一種の銛があります。これもつい最近、確認されたものです。これは銛先と柄が一体で固定銛と呼ばれるものです。こちらの方は、手に持って突くタイプです。確認されたのは、長さ約160センチメートル、太さ2センチメートルのもので、これも石銛を先端の切れ目にはさんで使用したものと思われます。固定銛は鮭などに使われたものでしょう。これらのことから49号遺跡では、川と海で漁業や狩猟活動が行われていたことが推定されます。ちなみに木製の離頭銛の柄が出土したのは、縄文時代では初めてのことと思われます。 (石橋孝夫)
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