いしかり博物誌/第26回

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ページID 1002128  更新日 2025年2月28日

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第26回 5000年前のハマナス!?

写真:馬追(まおい)に咲くハマナス
馬追(まおい)に咲くハマナス。マオイとはアイヌ語で「マウ・オ・イ」イコール「ハマナスの実の多い所」という意味。フリーライターの貫井さんは、アイヌ語地名と縄文時代の地形との関係を調べています。

馬追(まおい)に縄文時代のハマナスが咲く――その話を札幌市のフリーライター、貫井進(ぬくいすすむ)さんから教えていただいたのは今年の春先のことでした。ハマナスと言えば石狩浜。北日本の海岸に自生する植物の代表格です。ところが馬追は、長沼町(ながぬまちょう)や由仁町(ゆにちょう)、千歳市などにまたがる内陸の丘陵地で、海からは20から30キロも離れています。そんなところで一体なぜ、ハマナスが咲くのでしょうか。しかも、縄文時代の立方メートル!

答は簡単。縄文時代の前半、そこが海岸だったからです。今から1万年前から5000年前、石狩市や札幌市などの低地部は「古石狩湾(こいしかりわん)」という海に覆われていました。その海岸線は馬追丘陵まで達していたのです。このハマナス群落は、周辺に他の海浜植物やカシワもわずかに残っていることから、当時の植生が受け継がれていると考えられています。古石狩湾の名残が意外な形で馬追に生きていたのです。

石狩市内を花川(はなかわ)から生振(おやふる)、美登位(びとい)へと伸びる紅葉山(もみじやま)砂丘は、今では海から5から6キロも離れています。しかし5000年前までは立派な海岸砂丘でした。馬追にハマナスが咲いているということは、紅葉山砂丘のどこかにも咲いているはずでは?

写真:紅葉山砂丘で発見されたハマナス
紅葉山砂丘で発見されたハマナス

「馬追のハマナス」を聞いてからというもの、ヒマを見ては砂丘を歩き回りました。ハマナスはないか、ハマナスはないか…。付近に住む人たちからは、だいぶ怪しまれたのではないかと思います。そしてとうとう見つけました! 砂地の露出した日当たりのいいところに、たくさんの赤紫色の花をつけたハマナスが、ぽつんと生えていたのです。その時、5000年前の渚が目の前によみがえりました。

ハマナスの生育地は海岸砂地ですが、鳥によって種子が内陸まで運ばれることもあるそうです。今回発見した紅葉山砂丘のハマナスが、本当に5000年前から続いているものなのか、鳥が運んできたのか、それとも誰かが植えたのか。それはわかりませんが、どちらにしても5000年のタイムスリップを味わわせてくれました。屯田(とんでん)墓地から自衛隊演習地の意外と目につきやすいところにも生えているので、みなさんもハマナスを捜して砂丘を歩いてみてはどうでしょうか。 (志賀健司)

イラスト:内陸に咲くハマナスの場所を表した写真(1万年前から五千年前、どちらも海岸だった)
赤い丸印:内陸に咲くハマナス。1万年前から五千年前、どちらも海岸だった場所です。

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