いしかり博物誌/第18回

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ページID 1002136  更新日 2025年2月28日

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第18回 大都市近郊にのこる自然海岸

写真:石狩浜岳頂上付近のエゾスカシユリ
石狩浜岳頂上付近にて。エゾスカシユリの花の奥にカシワ林が広がる。

いしかり博物誌の執筆陣に、石狩浜海浜植物保護センターの前野華子さんが加わりました。これまで森林の研究をしてきた生態学の専門家です。
初夏、海岸各地でハマナスが最も咲き誇る時期、本町から新港へ向かって車を走らせる。2から3キロほど走ったあたりで車を止め、港へ向かって左手の砂丘斜面をかけ上る。振り返れば、海岸草原の中に点々と咲くエゾスカシユリの朱色の花が目に入り、その向こうには真っ青な海。そして、海とは反対側から聞こえてくるカッコウの声に誘われて顔を向けると、広大なカシワの林が目に飛び込んでくる。そう、この砂丘の頂は、石狩浜の雄大な自然を満喫する絶好のポイントなのです。
石狩砂丘は、小樽市の銭函大浜から厚田村の無煙浜(むえんはま)まで延長約30キロにわたって連なる、道内でも道北の稚咲内(わかさかない)砂丘に次ぐ第2の規模の、自然の海岸砂丘です。

画像:海側から、陸側にかけての植物生息分布


砂丘は、波打ち際から内陸へ向かって約200メートル付近で最も高くなり、ここを境に、海側には海岸草原、陸側にはカシワ主体の海岸林が分布します。海岸草原の中でも、海に近い部分には、ハマニンニク、コウボウムギといった不安定な砂地に適応した植物がみられます。海から離れ砂地が安定してくる部分には、ハマナス、ススキをはじめ、ハマエンドウ、エゾスカシユリ、エゾカワラナデシコ、コガネギクなど多様な植物種がみられ、特に6~7月・9月の花の彩りの美しさは、車を止めて見入ってしまうほどです。
さて、海岸林は、砂丘の頂付近から人の背丈ほどのカシワではじまります。内陸へ向かうにつれてカシワは樹高を高くし、次第にミズナラなど他の広葉樹がまざります。この天然の海岸カシワ林は、世界的にもトップクラスの規模と言われます。
これらの海岸草原やカシワ林には、大コロニー(巣)をつくるエゾアカヤマアリや、キタホウネンエビをはじめ稀少な動植物も複数生息します。新港で分断されはしましたが、石狩砂丘は、全国的にも数少なくなった自然豊かな海浜地です。砂丘植生の車による踏みつけや海浜植物の乱採があとを絶ちませんが、この貴重な自然をしっかり保全し、後世に残していかなければならないと思うのです。
砂丘の自然は現在雪に閉ざされていますが、5月の中旬、イソスミレ、ハマハタザオの花、ヒバリのさえずりによって冬の眠りから目を覚まします。(前野華子)

画像:石狩砂丘の主要植生

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