いしかり博物誌/第46回
第46回夏来れば、早、冬支度 キアゲハの長い眠り
石狩浜に夏の訪れを告げるハマボウフウの白い花。ふと葉に目を移すと、黄緑と黒とのストライプ模様のイモムシが見つかります。これは、ニンジンに代表されるセリ科の植物を食草としているキアゲハの幼虫。
昨年、海浜植物保護センターで飼育していた4頭のキアゲハの幼虫が7月19日にサナギになりました。海水浴シーズン真っ盛りのこの時期、野外では花もたくさん咲いており、じきにチョウになるのだろうと見守っていました。
待つこと3ヶ月、秋の深まりにもかかわらず、サナギはそのまま。「死んでしまったのでは」という思いが強くなりました。ハチや菌などに寄生されたり、乾燥にさらされるなどして、チョウになれないサナギもたくさんあるからです。
ところが、今年の5月3日、イソスミレの花が開き始めたころ。なんと、あの4頭のサナギがチョウになっているではありませんか。
9ケ月半、なんと長い眠りだったのでしょう。
さて、ここで虫たちの冬支度について考えてみましょう。
北国では、自然界の季節変化のおもなシグナルは、日の長さや気温、植物の変化です。夏真っ盛りと言えど、すでにこの時期、日の長さは徐々に短くなっています。また、昨年の夏は天候が悪く、気温の低い日が多くありました。キアゲハは、サナギの状態で気温の低さや日の長さが短くなっていくことを感じ、冬の到来を感じ取ってチョウになることをやめてしまったのでしょう。


このように、北国の生きものたちは、夏のころからもう冬への備えを始めるものも少なくないのです。この時期、冬支度を始めている生きもの、ほかにも見つかるはずですよ(写真:木の冬支度)。

※キアゲハは普通、春と夏の2回、羽化するといわれています。今回の例が一般的かどうかは分かりません。
(内藤華子 広報いしかり2003年8月号掲載)
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