いしかり博物誌/第61回
第61回 アキグミは晩秋のごちそう?
草木は茶色く枯れ、寒風が吹き抜ける晩秋の石狩浜。毎年この時期になると、何百羽ものムクドリの大群が浜を訪れます。目当てはアキグミの実。
一般に庭木などで「グミ」といわれるものは、ナツグミと言うもので、夏に楕円形の赤い実をつけ、野生ではおもに山地に生育します。
これに対してアキグミは、秋に実ります。風や、栄養の乏しい土地にも強く、飛砂防止の樹木として各地で植栽されています。石狩浜では、すすんで植栽されたわけではありませんが、その旺盛な生育力により、あちこちで見ることができます。
6月初旬に咲いた花は、海辺の過酷な環境の中、ゆっくりと実に成熟し、9月末頃から赤くなります。ちょうど、ハマナスの実が熟して多くが落ちてしまうのと入れ替わるようなタイミングです。
10月に浜の草原で見つけたキタキツネのフンには、アキグミのタネがびっしりと入ったものがたくさんありました。浜で暮らすキタキツネにとって、アキグミの実は、晩秋から初冬の大切な食べ物なのです。
アキグミのタネは、果肉を除いて秋に播けば、翌春、高い率で芽を出します。動物が食べることで果肉は除かれ、発芽しやすくなっていることがわかります。アキグミとキタキツネ、双方に得があるのですね。
秋には渋さが口に残り、私たちにはあまりおいしいとは言えないアキグミの実ですが、寒い日が続くにつれて渋さは徐々に除かれ、甘さが増してきます。しかし、浜のアキグミは背が低く、その頃には雪の下。たわわになった実も、食べられずに雪に埋もれてしまうものも多いようです。


(※野生動物のフンは、その動物が何
を食べて生活しているのかなどを知る、
生体調査のための大切な手がかりです)
(内藤華子 広報いしかり2004年12月号掲載)
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