いしかり博物誌/第56回

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ページID 1002097  更新日 2025年2月28日

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第56回謎の漂着物!?

写真:石狩浜に漂着したサルパ
石狩浜に漂着したサルパ。全長約15センチメートル

この春、サルパを拾いました。
石狩浜には、いろいろなものが漂着しています。5月の砂浜を歩いていたら、透明で軟らかそうな物体を見つけました(写真1)。クラゲか?、と思いながら近づいてみると、ちょっとようすが違う。外形は丸くなく、まるで草履のようです。長さは15センチくらい。透けて見える内部には内蔵のようなものがあるので、すでに死んでいますが動物であることは間違いありません。さわってみると予想外に、ゴムのような弾力があります。落ち着いてまわりをよく見ると、同じような物体がいくつも転がっていました。とりあえず資料館に持ち帰りました。

イラスト:サルパの構造
サルパの構造(山路勇1966「日本海洋プランクトン図鑑」)

翌日、館のスタッフがインターネットでそれらしきものを見つけたので、図鑑でも確認したところ、正体が判明しました。「サルパ」です。原索動物(魚や鳥、哺乳類など脊椎動物の祖先にあたる)の一種で、食卓にものぼるホヤの仲間です。ダイビングで目撃されたり魚網にかかることがあり、その世界では知られているようです。

イラスト:対馬暖流
南から漂流物を運ぶ対馬暖流

海底で岩などに固着して生活するホヤに対して、サルパは海中をゆらゆら漂う、大きな動物プランクトンです。「入水孔」と呼ばれる口をパクパクさせて海水を吸い込み、小さなプランクトンなどを漉しとって食べています(図1)。1匹だけでいることもありますが、鎖のように何十匹もつながって漂っていることもあるそうです。石狩浜に漂着していたのは、そのタイプの残骸だったのかもしれません。

サルパは本来、暖かい海で生活しています。それを北海道まで運んできたのは、赤道太平洋に起源を持つ海流、対馬暖流です(図2)。アオイガイ(貝殻をつくるタコ)のような暖海の生物や、ハングル文字の書かれたボトルなどが石狩浜に漂着することがあるのは、この海流のためなのです。

みなさんも浜辺を歩くときは足もとに注意してみましょう。謎の生物が見つかるかもしれませんよ。

(志賀健司 広報いしかり2004年7月号掲載)

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