いしかり博物誌/第64回
第64回 石の恵比須様
石狩弁天社は、海の神様である弁財天をお祭りしていますが、ほかにも鮫様などの神々が一緒に祭られています。写真はその神様の1つです。一体何に見えますか?私には恵比須様に見えるのですが、いかがでしょうか。
恵比須様といえば大黒様と対になる福の神として知られています。この神様は、風折烏帽子(かざおりえぼし)に釣りざお、脇に鯛を抱えた姿でおなじみの、海や商売繁盛の神様です。また、「えびすさん」と親しまれている庶民的な神様です。
この神様は「夷(い)」と書いて「えびす」と読ませるように、もともと海を渡ってきた神様、つまり「寄り神(漂着神)」だと考えられてきました。このため本州の漁村では、海岸や海中にある丸い石をご神体(神様を象徴する物体)とする風習があります。
おそらく、今回ご紹介した弁天社の恵比須様の場合も、こうした風習からご神体となったのでしょう。ご神体の岩は、いくつかの石がくっついた堆積岩です。また、この岩と一緒に貝化石をたくさん含んだ泥岩が数個、厨子(ずし)の中に一緒に入っているところから、厚田村望来(もうらい)付近で採取された可能性が高いと思われます。
なぜなら、望来(もうらい)付近では貝化石をたくさん含んだ地層があるからです。また江戸時代、石狩から厚田に行くのには、望来(もうらい)の海岸を通るのが普通でした。この恵比須様は、こうした往来の途中で拾われたのでしょう。その人が誰か不明ですが、岩の形が恵比須様に似ていたので商売繁盛や海上安全、鮭の豊漁などの祈りを込めてお祭りしたと考えられます。
今は伝わっていませんが、恵比須様の縁起(由来を伝える話)もあったのではと想像されます。
恵比須様が納められている厨子は、神社の形を模した大変手の込んだもので、宮大工など専門家が製作した立派なものです。厨子の天井板に「天保10年(1893)」という年号が書かれていることから、恵比須様がお祭りされた年がわかります。

(石橋孝夫 広報いしかり2005年3月号掲載)
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