いしかり博物誌/第32回

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ページID 1002121  更新日 2025年2月28日

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第32回 座礁したクジラたち

写真:石狩浜に漂着したトドの死体(2002年3月)
石狩浜に漂着したトドの死体(2002年3月)

石狩浜を歩いていると、流木や貝殻、外国語の文字が入った容器など、いろいろな漂着物を目にします。先日は大型動物の死体を見つけました。全長約2.5メートル、トドのようです(写真)。
おそらくどこかで死んだものが流されてきて、砂浜に打ち上げられたのでしょう。
このように浜辺には、トドだけでなくクジラやイルカなどの海の動物が生きたまま、あるいは死体で漂着することがあります。これを「ストランディング(座礁)」と言って、日本中で毎年100件くらい報告されています。
平成14年に入ってからは、1月に鹿児島県で14頭のマッコウクジラが、2月には茨城県で85頭ものカズハゴンドウ(体長2から3メートルの小型のクジラ)が、どちらも生きたままの集団座礁を起こしました。ニュースでも大きく取り上げられたので、記憶に新しいかと思います。このストランディング、石狩浜でもこれまでにたびたびあったようです。

国立科学博物館のストランディングデータベースなどを調べてみると、小樽市側も含めた石狩浜で、ここ10年ほどの間にクジラ・イルカだけでも8件の座礁記録が見つかりました。最近では平成8年、クジラ1頭の記録があります(写真下)。発見時にはすでに死んでいたそうですが、体長およそ4.5メートル、下アゴから2本だけ生えている大きな扇状の歯などの特徴から、オウギハクジラ(扇歯鯨)のオスと思われます。これは北太平洋に棲息するクジラですが、情報のほとんどは座礁した死体からのもので、生きている姿が目撃されることはめったにありません。そのため、生態や棲息個体数がよくわからない謎のクジラです。

石狩浜の古い地名には「鯨塚(くじらづか)」「分部越(ふんべこえ)」(アイヌ語で《クジラがいるところ》の意味)など、クジラがやってきたことをうかがわせるものが残っています。また、石狩市内の低地部の地下からは、クジラの化石が出てくることがあります。これはさらに時代をさかのぼって1万年前から数千年前、石狩市の大部分が浅い海だったころのものです。もしかしたら縄文時代のストランディングで死んだクジラたちなのでしょうか。 (志賀健司)

写真下:平成8年、石狩浜に座礁したオウギハクジラ。下アゴから2本だけ生えている扇状の歯(○印、歯の先端が扇の要にあたる)、尾ビレの真ん中に切れ込みがない、オス同士の闘争による白い傷跡(相手の歯によるひっかき傷)などが特徴。

写真:座礁したオウギハクジラ(平成8年)
1996年に座礁したオウギハクジラ

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