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いしかり博物誌/第13回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第13回 ビールもつくる「珪藻土」(けいそうど)

 夏です。ビールの季節です。きゅっと冷えた生ビールをぐいっ。そんな幸福にひたれるのは「珪藻土」という岩石の恩恵であることをご存じでしょうか。
 珪藻土とは植物プランクトンの一種「珪藻」の死骸が集まってできた軟らかい岩石です。
珪藻は大きさ0.01から0.05ミリで、無数に穴のあいた殻をもっています。そのため
に珪藻土は水や空気の小さなゴミを取り除く性質があったり、軽い、断熱性が高いなどの特徴があります。ビールは麦芽とホップを酵母で発酵させて作りますが、最後に酵母を取り除くためのフィルターとして珪藻土が使われているのです。また七輪コンロの材料、最近では家の壁に使うこともあるようです。そんな珪藻土が、このシリーズにたびたび登場している市内の紅葉山49号遺跡から出土しています。
 実は珪藻土は、昔から食べられる土としても知られていました。遺跡から出土したのも、当時の人、おそらく江戸時代のアイヌが食物として使っていたためでしょう。ところが遺跡の近くはおろか、石狩市周辺にも珪藻土が採れる地層はありません。では一体どこから運ばれてきたのでしょうか。その手がかりとなるのが、含まれている珪藻の種類です。
 珪藻はわかっているだけでも1万5千種類以上いますが、海の珪藻、湖の珪藻、すでに絶滅したものなど、場所や時代によって見られる種類が違います。北海道には珪藻土の産地はたくさんありますが、やはり中に含まれている珪藻にはそれぞれ特徴があるのです。
ということは遺跡のものも、種類を調べればどこから採ってきたのかわかるはずです。
 さっそく顕微鏡で調べたところ、今から500万年前の海でできたものであることがわかりました。残念ながら道内の産地の多くがその条件を満たしているので、1か所に特定することはできませんでしたが、おそらくは渡島半島や道北地方のような、意外と遠くから運ばれてきたらしいことは確かです。
 ただの土の固まりに見えても、当時の人々の活動を知るカギになるのです。ビールだけが珪藻土の恩恵ではないようです。              (志賀健司)

※珪藻土を食べる話は、博物館開設準備室だより「エスチュアリ」第3号に詳しく書かれています。バックナンバーもありますので、ご希望の方はご連絡ください。
北海道の珪藻土産地を表した地図画像   紅葉山49号遺跡から出土した珪藻土の写真
                         紅葉山49号遺跡から出土した珪藻土。
                         一見ただの白っぽい土のように見えますが・・・。
植物プランクトン「珪藻」の殻の写真
  珪藻土は、植物プランクトン「珪藻」の殻がたくさん集まってできています。