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いしかり博物誌/第29回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第29回 石狩でいちばん寒い日

凍結した石狩湾新港(2001年2月)の写真

 世界でいちばん寒い場所はどこだか知ってますか? 最低気温の世界記録は南極のボストーク基地(ロシア)で観測された-89.2℃(昭和58(1983)年7月21日)です。それに比べると、石狩はとても暖かい土地なのですが、それでは石狩の最低気温の記録はどれくらいなのでしょうか
アメダス(地域気象観測システム)の観測結果には、昭和61(1986)年1月24日に-23.6℃という記録があります。これが昭和49(1974)年の観測開始以来、石狩でいちばん寒い日、ということになります。

 ところでみなさんは去年(2001年)の冬を覚えているでしょうか。気象庁の「暖冬」という予報は外れ、地球温暖化と騒がれつつも、実際はとても寒い冬になりました。ロシアで大勢の凍死者を出した、100年に一度と言われる猛烈なシベリアの寒気が日本にも流れこんだためです。石狩の最低気温は1月19日には-23.1℃(観測史上3番目)を記録し、石狩湾新港でも海面が初めて凍ったほどです。この大寒波の原因、実は遠い北極にありました。
石狩の最低気温がマイナス10度以下の日数を表した画像
 北極上空には大きな低気圧が広がっているのですが、最近の研究から、この低気圧がおよそ10年くらいの間隔で強くなったり弱くなったりしている(振動している)ことがわかってきました。この現象は「北極振動」と呼ばれ、遠く離れた日本の暖冬/寒冬をもコントロールしているというのです。
 北極の低気圧が弱くなると、すぐ南のシベリアで高気圧が発達し、非常に強い寒気が日本に流れこみます。去年あたりからそんな状態に変化したために、1990年代の暖冬は終わり、久しぶりの寒い冬がやってきたのです。前回、北極の低気圧が最も弱まった時期は昭和60(1985)年から昭和62(1987)年ごろでした。「石狩でいちばん寒かった」昭和61(1986)年の冬も、北極振動がもたらしたものだったようです。

 北極振動の研究は始まったばかりで、原因はまだわかっていません。しかし石狩の気候も地球全体の気候変動とは無関係ではないのです。これから数年、去年のような厳冬が続くのかもしれません。   (志賀健司)