いしかり博物誌/第49回
第49回浜辺の頭蓋骨
この夏、頭蓋骨を拾いました。石狩浜には、東シナ海からやってくる対馬暖流にのって、いろいろなものが漂着します。この頭蓋骨は、海水浴場のゴミ拾いをしたときに見つけたものです。もちろん人間のものではありません。いったい何の骨でしょうか。
全長35センチ、上から見ると2つの大きな穴があいています。これはどうやら鼻の穴。哺乳類でも魚類でも、脊椎動物の鼻の穴は、ふつうはまさに「鼻先」にあります。でもこの骨では頭の真ん中に、真上を向いて鼻の穴があいている!頭のてっぺんに鼻がある動物――それは、クジラ・イルカ(あわせてクジラ類)です。クジラの潮吹きは、この鼻の穴からの呼吸です。
もうひとつ、この骨には変わったところがあります。額の部分がえぐれたような形をしているのです。実はここは「メロン」と呼ばれる脂肪でできた組織が入っていた場所で、クジラ類のなかでもイルカやマッコウクジラなど、ハクジラ(歯鯨)類にしかない特徴なのです。
空気中と違って、海の中ではあまり視界がききません。ハクジラ類は、音によってまわりを「見て」いるのです。自分が出した音が何かに反射してもどってくるのを聞き取って、どこにどんな形のものがあるのかわかる、と言われています。コウモリと同じ能力です。このとき、光を集めるレンズのように音波を集中させる役割をするのが、この「メロン」だと考えられています。
そのほかの細かい特徴を調べてみた結果、どうやらイシイルカの頭骨とわかりました。成体で体長2メートルの小型のハクジラ類で、北日本からアラスカにかけての太平洋やベーリング海など、冷たい海に棲んでいます。ここで座礁したものが、人知れず白骨化したものなのでしょうか。それともキツネか何かが、どこかからくわえてきたのでしょうか…。
この頭骨、内側にはまだ肉が残っていました。現在はある所に埋めて、土中のバクテリアが肉を分解して、きれいな白骨にしてくれるのを待っています。




体長1.7から2.2メートル。日本近海には、日本海で越冬するイシイルカ型と、三陸沖で越冬するリクゼンイルカ型とがいます。両者は白い模様と体の大きさが少し違います。
(志賀健司 広報いしかり2003年11月号掲載)
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