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いしかり博物誌/第6回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第6回 化石海水でいい湯だな

「番屋の湯」の写真

すっかり寒くなり、温泉が恋しい季節になりました。本町地区にある石狩温泉 「番屋の湯」に出かけて暖まろう、という人も多いことでしょう。
 みなさんは「番屋の湯」の湯をなめてみたことがありますか?しょっぱい味がするでしょう。
 これ海水じゃないの、と思った人も多いはず。そう、実はこの湯は海水なのです。 といっても目の前の日本海から汲んできたものではありません。
地下数百メートルから汲みあげた大昔の海水、言うなれば「化石海水」なのです。 では化石海水とは、いったいどんなものなのでしょう。

 海底には砂や泥がどんどん降り積もっていきますが、砂粒同士の間にはわずかなすき間が残っています。 そこに海底付近の海水が閉じ込められるのです。
石狩市の北隣、厚田村の望来(もうらい)海岸の崖に延々と続く地層が見られるのはご存じでしょうか。
その地層は海底に積もった砂や泥からできていて、石狩市や札幌市など、石狩低地帯の地下深くまで続いています。
「番屋の湯」に限らず、札幌や南幌、長沼などの温泉は、みんな地下にあるこの地層から汲みあげられたものなのです。地質時代でいう新生代新第三紀の末ごろ(一千万年前から数百万年前)の海水です。
望来海岸の地層の写真

現在の海水も「番屋の湯」の湯も、ナトリウムと塩素がもっとも多く含まれていて、成分はよく似ています。
マグネシウムや硫酸イオンなどは海水よりも減っていますが、それは海底に棲んでいたバクテリアや、海水と地層との化学反応のためです。
また、海水の塩分の量は約3.5パーセントなのに対して、番屋の湯は約2パーセント、ちょっと薄塩です。
これは地上に降った雨や雪が地下に染みこんで、化石海水を薄めていったためと考えられています。
 なんだこの湯は海水か、なんて思わないでください。「ナトリウム-塩化物強塩泉」という立派な温泉で、塩分が入浴後の発汗を押さえるため湯冷めしにくいという特徴があります。
それに何といっても一千万年近く前、人類の祖先も生まれていない太古の海水なんですから。(志賀健司)
「番屋の湯」の化石海水の時代の画像