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いしかり博物誌/第57回

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年7月31日更新


第57回チョウザメは、なぜ石狩に来たか

11年ぶりに石狩川で捕獲されたチョウザメ
11年ぶりに石狩川で捕獲されたチョウザメ

平成16(2004)年5月27日、石狩川河口で11年ぶりにチョウザメが網に掛かりました。オスの成魚で体調2.3メートル、体重100キログラム以上と推定され、記録に残るものでは最大級に近いものです。

石狩市には、江戸時代から伝わる伝説があり、それによると、この魚は石狩川の主だといわれます。そのため石狩弁天社(いしかりべんてんしゃ)や金龍寺(きんりゅうじ)には、チョウザメの神様(鮫様・さめさま)が祭られています。この神様はサケ漁の神様です。

石狩川のチョウザメが歴史に登場するのは、享保2(1717)年が最初です。このときは「菊とじ鮫」の名で松前藩が幕府に献上しています。漢字では「蝶鮫」(ちょうざめ)と書きますが、これはうろこ板がチョウの羽を広げたように見えるからです。この魚は、普段は海にいて、繁殖期(5、6月)になると川を遡上します。記録では、現旭川市の神居古潭(かむいこたん)まで上っています。しかし、サケのように産卵などの後、死ぬことはありません。
チョウザメの顔
チョウザメの顔

過去、石狩川では、「ダウリアチョウザメ」と「ミカドチョウザメ」の2種が遡上した記録があります。今回捕れたのは、「ダウリアチョウザメ」のほうだと考えられます。「ダウリア」は、昭和44年、平成5年の2回捕獲されています。この種類は、最大で体長5メートル、体重11トン、寿命も50年を超えるといわれ、中国では「皇帝の魚」などとも呼ばれています。

チョウザメは、映画『ジュラシックパーク』でおなじみの中生代ジュラ紀後半期、約1億5000万年前に現れた古代魚だそうです。現在、世界で27種類ほどいますが、ほとんどが絶滅の危機にひんしています。明治末ごろには、花畔(ばんなぐろ)などでロシア人がキャビアをとるためチョウザメ漁をし、同じころの札幌の市場では、夏の魚として売られていたそうです。しかし、それ以降はほとんど幻の魚となってしまいました。
昭和44年のチョウザメ(昭和44年10月3日北海道新聞夕刊より)
昭和44年のチョウザメ(昭和44年10月3日北海道新聞夕刊より)

『北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001』では、チョウザメはすでに絶滅した魚に分類されています。ですから今回捕れたのは、奇跡的なのです。また、繁殖行動する時期に捕れていますので、繁殖のために遡上していたのかもしれません。今回は仕方がありませんが、絶滅にひんしている貴重な生物ですので、今後は網にかかっても放してあげたいものです。

(石橋孝夫 広報いしかり2004年8月号掲載)