石狩ファイル0038-01(2005年9月25日)
湿原とは、湖沼に生育した植物が低温や過湿のために分解されずに残り、更にそれが積み上げられて泥炭として堆積した上に発達する草原です。かつては、釧路湿原、サロベツ原野とともに道内三大湿原のひとつだった広大な石狩湿原ですが、今では、ほとんど原形を留めていません。その理由は、稲作を目的とする開発と石狩川下流部の河道直線化によるものです。
石狩市にわずかに残っている湿原として名を知られているのは、マクンベツ湿原と美登位湿地です。石狩川河口橋に近い左岸に位置するマクンベツ湿原は、ミズバショウの大規模な群落でその名を知られています。ここでは、融雪期から5月中旬までは冠水状態にあり、植物の生育する場としては厳しい条件であるため、それに適応できる植物だけが生育し、湿原特有の景観を構成します。ここに最も多く見られる木はハンノキで、10〜15mに繁って高木層を形成しミズバショウを乾燥から守る働きをしています。ここでは31科83種の植物が確認されていますが(1)、この中には、北海道の希少種とされるミクリ、タヌキモ、ゴキヅル、ヒメガマが含まれています。昆虫の中で注目したいのはヘイケボタルです。近年数が減っているようですが、夏の宵に明滅する光が見られます。
美登位湿地のヒメガマ・オモダカ群落 |
(林 迪子)
参考文献