石狩のイソコモリグモ
石狩ファイル0142-01(2015年3月31日)

節足動物門(もん)/クモ綱(こう)/クモ目/
コモリグモ科 Lycosa ishikariana
コモリグモ科のクモは、餌を捕るための網を張らず、徘徊して獲物を狩ります。メスは産卵すると、腹部の端に卵のうをつけて歩き回り、孵化(ふか)した数十頭の子グモは母グモの背にしがみついて一緒に移動する時期があります。
イソコモリグモは、北海道から鳥取県までの日本海沿岸と、茨城県までの太平洋沿岸の、良好な自然が維持された砂浜のごく一部に分布します。環境省の絶滅危惧種(II類)に指定されています。大きさは、メスの体長(脚を除く)15から23ミリメートルくらい、オスは10から17ミリメートルくらい、砂に直径2センチメートル、深さ10~20センチメートルくらいの巣穴を掘り、入口付近は砂粒を糸でつづり合わせて崩れないように固め、日中や雨天時には砂を糸でつづったふたをして、ベッコウバチなどの侵入や雨水を防ぎ、その中に潜みます。夜行性で巣穴の付近を通る小さい昆虫や小型甲殻類を捉えて食べます。

約2センチメートル
イソコモリグモが生息するのは、自然の砂浜に限られます。汀線(ていせん)に平行して海浜植物が帯状に分布しているところ、特に地を這う植物の周辺の砂地が適地で、背丈のある草本が茂るところは適さず、満潮時に水没するところにはすめません。また、砂浜の長さが数キロメートルのまとまりがあることも重要です。イソコモリグモの子は分散する時に、他のコモリグモのように草の上から糸を流し、風に乗って飛ぶ「飛行分散」をせずに歩いて散っていくため、分散能力が低く、砂浜が短期間で人為的に分断された場合、そこに生息している個体群は孤立し、存続が危うくなるためであると考えられています。
日本の海浜は、ダムによって砂の供給が止まったことや海岸に人工的な構築物が作られたために幅が狭まったり、砂が移動する等の理由で、自然の砂浜が減少を続けています。
石狩浜は、広大な砂浜が広がっているためにイソコモリグモの分布域となったと推測されていますが、近年は砂浜が縮小する傾向にあり、イソコモリグモの生息適地が狭まってきています。
(林 迪子)
参考文献
- 八幡明彦(2009)自然海浜にすむイソコモリグモ.自然保護,509,40-42.
- 新海栄一・高野伸二(1984)フィールド図鑑/クモ.東海大学出版会.
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