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石狩ファイル0140-01(2014年1月15日)

イシカリクレーター

いしかりくれーたー


NEARシューメーカーが撮影した
マティルド(1997年6月27日)
「イシカリクレーター」という言葉を聞いたことがありますか?

クレーターとは、円形やすり鉢状に凹んだ地形の総称で、火山の噴火や隕石の衝突によって形成されます。
ロシアのチェバルクリ近郊の湖氷上で発見された直径約6mのクレーターは、テレビやインターネット上の動画で目にした人も多いと思いますが、2013(平成25)年2月15日にロシアのチェリャビンスク州などウラル山脈中南部一帯で観測された隕石の落下によって出来たと考えられています。

では、「イシカリクレーター」はどこにあるのでしょうか。
石狩市、あるいは石狩地方でも、私達の住むこの地球上でもありません。それは火星−木星間の小惑星帯に位置する小惑星マティルド(253 Mathilde)にあります。

マティルドは、1885(明治18)年にオーストリアの天文学者ヨハン・パリサによって発見されました。発見からおよそ百年後の1997(平成9)年、探査機ニア(NEAR、後にNEARシューメーカーと改名)によってこの小惑星の探査が行われ、それによりマティルドはC型小惑星であることが分かりました。C型小惑星とは、炭素系の物質を主成分とする小惑星のことで、既に知られている小惑星の75%がこのタイプです。
マティルドの直径は52.8kmと、地球の赤道直径1万2742kmと比べると非常に小さいのですが、奇跡の帰還をしたといわれる探査機はやぶさが探査したイトカワ(25143 Itokawa)の直径は330mでした。ほとんどの小惑星の直径は100km以下です。
マティルドの表面には大きなクレーターがいくつもあることが分かりました。天体のクレーターには名前がつけられることがありますが、このマティルドは炭素化合物に富むC型小惑星であることから、クレーターには世界の有名な炭鉱地帯の名前が付けられています。そして日本からはイシカリ(Ishikari)が選ばれました。これが「イシカリクレーター」の正体です。石狩炭田は、夕張・空知両山地にまたがる炭田で、日本最大の炭田です。
しかも、このイシカリの直径は29.3kmもあり、マティルド上ではアフリカの炭鉱地カルー(Karoo)の名がついた33.4kmのクレーターに次ぐ大きさです。

「イシカリクレーター」は石狩にあるわけではありませんが、「石狩」の名を世界に発信してくれました。

(西本結美)


参考文献


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