望来層の化石

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ページID 1004718  更新日 2025年2月28日

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石狩ファイル0145-01(2015年3月31日)

石狩市厚田区望来(もうらい)には、海岸線に沿って地層が露出しています。ほとんどは泥岩と頁岩(けつがん、うすくはがれるように割れる性質を持つ泥岩の一種)からなる、望来層と呼ばれる地層です。望来層は新生代新第三紀後期中新世(ちゅうしんせい、1162万年前から533万年前)の地層で、堆積年代は910万年前~760万年前と考えられています(小竹ほか2008)。

望来層の中には、ノジュール(直径10センチメートルから3メートルほどの球状の硬い団塊)がたくさん見られ、その中からいろいろな化石が産出します。もっとも多く見られるのが、ワタゾコウリガイ、オウナガイ、トクナガキヌタレガイなどの二枚貝化石です。特にワタゾコウリガイは殻が密集した状態での産出が多く見られます。これらの二枚貝は、いずれも水深が数百メートルから1000メートルくらいの深海に生息し、海底から湧き出すメタンや鉱物分を含んだ湧水をエネルギー源とするバクテリアと共生する「化学合成群集」という特殊な生物群です。

望来層からは、二枚貝化石のほかにも、巻貝、ツノガイなどの貝化石が産出します。また、これまでに鯨類、魚類、甲殻類(カニなど)の化石も見つかっています。そのほか、植物化石や生痕化石(底生動物が這い回った跡など)もよく見られます。

(志賀健司)

※海岸の崖はとても崩れやすいため、観察・採集には細心の注意が必要です。

表:望来層から産出する化石
腹足類(巻貝)

エゾバイ属、キタノモロハバイ、モロハバイ属

ハイイロタマガイ属、ウスイロタマツメタ、エゾボラ属

掘足類(ツノガイ) シンカイフトツノガイ、ヤスリツノガイ
二枚貝類

オオキララガイ、カラフトキララガイ、キララガイ

サザナミソデガイ、ワタゾコウリガイ、オウナガイ

ムカシオオツキガイモドキ、シラトリガイ属、ベッコウキララガイ属

トクナガキヌタレガイ

甲殻類 カニの仲間
硬骨魚類 種不明
哺乳類 ヒゲクジラ類
植物 多数
写真:ワタゾコウリガイ
ワタゾコウリガイ
写真:オウナガイ
オウナガイ
写真:トクナガキヌタレガイ
トクナガキヌタレガイ
写真:望来層のノジュール
望来層のノジュール
約3メートル

参考文献

  • Amano, K., (2003) Predatory gastropod drill holes in UpperMiocene cold seep bivalves, Hokkaido, Japan. Veliger, 46, 90-96.
  • 石村豊穂・井尻暁・阿部恒平・角皆潤(2005)北海道,中新統望来層におけるシロウリガイ属化石をともなう石灰質団塊の特徴.地質学雑誌,111,VII-VIII.
  • 加藤誠・勝井義雄・北川芳男・松井愈 編(1990)日本の地質1/北海道地方.共立出版.
  • 小竹敦子・鈴木徳行・阿波根直一・嵯峨山積(2008)後期中新世北海道望来層珪質堆積物の珪藻化石年代と堆積リズム.日本地質学会第115年学術大会講演要旨.p254.
  • 宮坂省吾・田中実・岡孝雄・岡村聡・中川充 編(2011)札幌の自然を歩く/道央地域の地質案内.北海道大学出版会.
  • 対馬坤六・垣見俊弘・植村武(1956)5万分の1地質図幅説明書「厚田」.地質調査所.

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